静電気対策(ESD対策)

1.静電気の歴史

静電気についての歴史背景から紹介する。静電気に関しての学術的な取り扱いが知られているのは、ギリシャ時代にさかのぼる。ギリシャの哲学者ターレスは、琥珀4 の櫛などが糸くずなどを引きつける現象を冷静に観測し、その性質をある程度把握していた。残念ながら、ターレスの著作は現存していないので、当時の静電気に関する理解についてはこれ以上正確なことはわからない。文章として残されているのは、ローマ時代、プリニウスが表した「 博物誌」( 紀元 77 年) の中で、船のマストの先が青白く光る現象5、槍の先が光る現象などが記載されている。インドや中国でも神秘的なもの、神の使わしものなどとして雷の記述は多い。ギリシャ神話の神、ゼウスの武器でもあった。ところが、ヨーロッパでは、中世暗黒時代を迎えてサイエンスへの探求はなくなり、静電気が脚光を浴びるには、16 世紀、ルネッサンスの登場を待たねばならなかった。英国エリザベス女王の侍医であったギルバート(William Gilbert) は、1600 年ごろ、De Magnete 6 という著作で静電気現象の特徴を紹介している。彼は、検電器( 図1 参照) を発明し、遮蔽効果などを磁力と比較している。

図1.ギルバート発明の検電器 図1. ギルバート発明の検電器

ただし、タイトルからわかるように、本書の大半は磁気について書かれており、静電気は、わずか1 節で語られているに過ぎない。当時は、電気の正体は不明であったが摩擦発電機の発明や、電気電導実験が繰り返され、多くの論文が発表されている。電気という名称もこの頃作られたようである。

2.静電気対策(ESD対策)の実際

静電気帯電は、物体表面が他の物体と接触すると必ず生じる現象である。帯電によって電位が高くなった物体が、接地された物体など、電位が低い物体に接近すると、その電位差によって空気の絶縁破壊が生じ、静電気放電が発生する。このとき、帯電物体に蓄積された電荷(帯電電荷)が急激に移動することによって、瞬間的に大電流が流れることとなる。そのため、たとえば電子デバイスにおいては、過電圧印加による半導体の酸化膜の絶縁破壊、過電流によるIC 内配線の熱的破壊などによるデバイスの故障・劣化や、静電気放電から輻射する電磁波が、電子回路へノイズとして加わり誤動作を引き起こすなどの障害の要因となる。特に近年は、電子デバイスの微細化や高速化、低動作電圧化に伴い、静電気放電への耐久性が低下している。

図2.静電気帯電の3基礎過程 図2. 静電気帯電の3基礎過程

各種製造現場においては静電気帯電によって発生する電圧を、静電気管理電圧として管理・制限しており、電子デバイスの製造工程などにおいては25~100V 以下に、静電気放電への感受性が特に高いハードディスクドライブの磁気ヘッド・スライダー工程においては、1~10V 程度以下に抑えることが求められている。

静電気帯電の防止には、導電性の物体に対しては接地を行い、帯電した電荷を接地へ流出させることが最も簡易的な手法である。
導電性物体は、金属などだけではなく、人体も当てはまる。人体の場合は、接地されたリストストラップの装着や、帯電防止用の靴・服・手袋の着用とともに、作業スペースの床や台の導電性の確保などの作業環境の整備が必要となる。

一方で、絶縁物の場合は、接地導体を絶縁物に接触させるだけでは帯電電荷を除去することはできない。主な絶縁物の帯電防止対策としては、対象の表面抵抗を低下させ、帯電電荷の漏洩を促進する方法が挙げられる。

手法としては、湿度の増加( おおむね50~60%以上) や、帯電防止材の塗布等が用いられる。これらの手法は、規則として取り入れるだけではなく、実際に作業者が効果的に行っているか、また、清掃などによりその効果が保持されているかなど、その効果を管理維持することが必要となる。

3.イオナイザの選定

様々な対策によって、静電気を発生させないことが最も重要であるが、静電気対策技術としてのイオナイザの選定とその使用方法状況によってはこれらを適用できない場合が多い。また、静電気対策をしたとしても、物体が接触することによって帯電は容易に発生してしまう。そのため、静電気が発生することにより、製品または工程に障害を及ぼす可能性がある場合には、帯電した電荷を強制的に中和する手法を、併せて取り入れることが好ましい。この手法として主に、イオナイザ(除電装置) が広く用いられている。

Chapter.17