電源ラインのノイズ対策(DC・AC)

ここではDCやACの電源ラインにおけるノイズ除去や対策、測定に関して掲載します。

1.電源ライン(DC・AC)のノイズ対策概要

DC電源用EMIフィルタでは、信号用フィルタのように急峻な周波数減衰特性は必要とされてないが、低周波からノイズを除去する必要があるので、L、C、の定数が大きいことが要求される。また、DC電源では、電源電圧が比較的低いことが多く、このため必要な電力を得るためには、大電流に対応する必要がある。

一般にフィルタの素子として使用されるL、Cの特性は、大きな定数を得ようとすると高周波での特性が悪くなる。これは大きな定数の素子は形状的に大型となり、高周波特性を劣化させる残留インダクタンスや浮遊容量が発生しやすくするためである。

輻射ノイズ対策用のDC電源用EMIフィルタとしては、低周波から効果を得るために大きなインダクタンス、静電容量を持ち、しかも輻射ノイズが問題となる高周波で有効な、広帯域で特性の良いフィルタであることが求められる。

2.DC電源ライン

DC電源ラインの輻射ノイズ対策に使用されるEMI除去フィルタを紹介する。フィルタが使用される実装方法、ノイズのモードによっていくつか種類がある。

① 広帯域に有効なブロックタイプEMIフィルタ
1MHz~1GHzの広帯域で大きな効果がある。電流容量も10Aと大きく、大きなノイズ除去が必要な回路の対策に使用される。
② サージ抑制機能付きEMIフィルタ
大容量三端子コンデンサにバリスタ機能を付加、輻射ノイズ対策と共に、ノイズ耐性の向上にも効果がある。
③ DC電源ライン用コモンモードチョークコイル
通常のL、Cを組み合わせたローパスフィルタでは、効果の少ないコモンモードノイズに対して効果がある。安定したグランドのとれない回路の対策に向いている。
④ DC電源ライン用チップEMIフィルタ
SMT対応基板のノイズ対策に使用される。チップ部品でありながら、大電流に対応できる。
DC電源のノイズを広帯域で除去できるように、大容量の積層セラミックコンデンサと、高周波特性の良い貫通コンデンサを使用し、インダクタンス素子としてフェライトビーズを組み合わせたL、C複合のノイズフィルタである。1MHz~1GHzの広帯域で40dB以上の大きな効果があり、FCCで規制されるノイズの帯域はほとんどカバーできる。また電流容量も10Aと大きく、大型のセットにも使用できる。
図1.DCライン用のEMI除去フィルタ例 図1.DCライン用のEMI除去フィルタ例

樹脂ケースの中に素子をコンパクトに組み込んであるため、単体の部品をプリント基板上で組み合わせるよりも小型で、高周波特性が良い。基本的にはノイズ成分をグランドにバイパスするバイパスコンデンサであるが、ノイズの伝導モード、周辺の回路の状況に幅広く対応できるよう、インダクタを組込み、回路的な工夫がされている。

3.AC電源ライン

AC電源ラインは外部のノイズが電子機器へ侵入したり、電子機器の内部で発生したノイズが流出する経路となる。またノイズを放射したり受診してしまうアンテナとしても働くため、輻射ノイズが問題になることもある。

一方電源回路は、小型・軽量化に伴いスイッチング方式が大勢を占めるようになり、さらに共振型に代表されるような高周波化によって小型・軽量化が推し進められている。このため、AC電源ライン用EMIフィルタには、小型で高性能のものがますます必要になってきている。

図2.ACライン用のEMI除去フィルタ例 図2.ACライン用のEMI除去フィルタ例

AC電源ラインのノイズには、ライン間に生じるノーマルモードノイズとグランドに対して両ラインに生じるコモンモードノイズがある。ノーマルモードノイズは低域で、コモンモードノイズは高域で問題になる傾向がある。AC電源ラインでは、この2種類のノイズを除去できる回路網が必要である。

通常AC電源ライン用EMIフィルタの回路は、3種類の素子から構成されるのが一般的である。各素子はノイズのモードと周波数に応じて、コモンモードチョークコイルが低域のコモンモードノイズの除去、アクロスザラインコンデンサが低域のノーマルモードノイズの除去、ラインバイパスコンデンサが高域のコモンモードとノーマルモードと両方のノイズの除去、といった役割をもっている。

低域のノーマルモードノイズが強い場合にはこの3種類の素子に加えてノーマルモードチョークコイルを用いると良い。またAC電源ラインにおいては安全規格による制約もあるので、耐電圧、絶縁距離、漏えい電流、難燃グレード等の項目を満足するよう注意が必要である。

Chapter.18