1.湿度センサとは

湿度センサは、気体中の湿度を測定するセンサとして、家電製品だけではなく、製造業や研究開発などさまざまな工業分野で幅広く使用されています。主な用途例を以下に示します。

  • 一般家庭向け製品
    エアコン、加湿器、除湿器、空気清浄機など空調制御用として湿度センサが組み込まれています。
  • OA機器
    プリンター、FAX など乾燥や湿気による紙詰まりや機器の故障防止用として湿度センサまたは湿度センサを用いた回路モジュールが組み込まれています。
  • 工業用途
    半導体製造、医療機器、航空宇宙、食品加工、農業、美術館など幅広い用途で湿度管理が重要な役割を果たしており、湿度センサを用いたさまざまな湿度測定機器が用いられています。

湿度センサの用途は今も拡大しており、さまざまな湿度センサが製品化されていますが、ここでは、現在、湿度センサとして最も一般的に使われているインピーダンス法である高分子電気容量式と高分子電気抵抗式、湿度センサとしては最も高精度として位置づけられている鏡面冷却式の3種類について説明いたします。

2.湿度センサの種類

① 高分子静電容量式

高分子静電容量式湿度センサは、一般的には静電容量式湿度センサと呼ばれています。構造は図1に示すとおり、感湿材となる高分子膜が2枚の電極で挟まれた構造をしており、感湿材がコンデンサーとして機能します。気体中の水蒸気が増加すると感湿材に吸着する水分量も増え、コンデンサーの静電容量が変化することで湿度の変化をとらえることができます。

近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を使った超小型湿度センサの多くで静電容量式が採用されており、スマートフォンなど小型電子機器への組込み用途やIoTセンサとして普及しています。また、出力の直線性にすぐれており、後述する高分子電気抵抗式では測定が難しい低湿度領域の測定もできることから、工業分野では乾燥状態に近いガス中の湿度測定でよく用いられています。一方で、静電容量式の原理上、比誘電率が比較的高く吸着性を有するガスが存在する環境での測定では誤差を生じることから、例えばアルコール成分を含むような用途での湿度測定には適していません。

図1 抵抗式湿度センサ(左)と容量式湿度センサ(右)の模式図
図1 抵抗式湿度センサ(左)と容量式湿度センサ(右)の模式図

② 高分子電気抵抗式

高分子電気抵抗式を採用した湿度センサは、一般的に電気抵抗式湿度センサと呼ばれています。構造は図1に示すとおり、絶縁体の基板上に櫛型電極パターンが配置され、その上に導電性高分子の感湿膜が塗布されています。気体中の水蒸気量が増加し、感湿膜に吸着する水分量が増えると、感湿膜の可動イオンが増えることで櫛型電極間のインピーダンス(交流における電気抵抗値)が下がることで湿度の変化をとらえることができます。

このセンサは使い勝手が良いことや耐環境性に優れていることで、電気抵抗式は多くの家電製品や事務機器、自動車などへ組み込まれており、また、センサ出力をさまざまな形態(電圧、電流など)へ変換する機能を持つ湿度変換器はビル空調(図2)や半導体製造(図3)など、さまざまな工業分野で利用されています。さらには、静電容量式では原理上測定誤差が生じてしまうアルコール成分を含む食品や化粧品の分野でも電気抵抗式が採用されています。一方、電気抵抗式の原理上、10%rh以下では導通がほとんどなくなり実質測定ができないため、乾燥状態に近い気体中の低湿度測定には適していません。

図2 ビル空調用温湿度変換器(室内用、ダクト用)
図2 ビル空調用温湿度変換器(室内用、ダクト用)
図3 セパレート型温湿度変換器
図3 セパレート型温湿度変換器

③鏡面冷却式

鏡面冷却式を用いたセンサは、鏡面冷却式露点計と呼ばれており、湿度測定の標準器としてよく用いられています。露点と温度から相対湿度を算出することができます。

鏡面冷却式露点計のセンサ部の構成例を図4に示します。鏡面(ミラー)上にサンプリングした気体(サンプルガス)を流しながら鏡面を冷却していくと、鏡面温度とサンプルガスの露点とが等しくなった時点で鏡面上に露が発生します。これを光学的に検出し、鏡面上の露の量が一定になるよう鏡面温度を制御し、平衡状態に達したところで鏡面の温度を測定することでサンプルガスの露点を決定します。

湿度の測定としては、現時点で最も信頼性の高い装置である一方で、上述した静電容量式や電気抵抗式に比べるとかなり高額であり、形状も大型で操作にも多少の技術を要することから、産業用途では、高精度で長期間安定した測定を必要とする場合や、インピーダンス法のセンサでは測定が難しい工業ガス中など、特殊な湿度測定で用いられています。

図4 鏡面冷却式の構成図
図4 鏡面冷却式の構成図

3.湿度センサの選定と注意点について

上述のとおり、湿度センサはその種類や方式によって一長一短があります。一般的な室内環境でおおよその湿度を知りたいというような場合を除き、製品や機械の組込みや、工業分野における特殊な環境下での使用において、温度や湿度の急激な変化、電気ノイズ、汚染物質など、さまざまな外的要因が湿度センサへ影響を与える場合もあります。湿度を測定する目的を明確にし、どのような環境で湿度センサを使いたいのか、どの程度までの出力誤差であれば許容できるのかなど、要件定義をまとめたうえで湿度センサメーカへ相談しながら湿度センサを選定されることを推奨します。

また、最も一般的に使用されている高分子静電容量式と高分子電気抵抗式の湿度センサは、静電容量や抵抗を変化させる水以外の汚染物質が高分子膜に吸着した場合は誤差が発生するため、特に食品加工や半導体製造など湿度管理が重要な位置づけとなる用途では、湿度センサを検討する時点で、アフターサービス体制や校正対応についても確認をしておいた方が良いポイントとなります。

参考文献

JEMICサークルニュース No.1 Vol.47(2018年1月発行)
※湿度の測定方法と用語は JIS Z 8806 : 2001 で定義されていますのでご参照ください。

<参考> 湿度測定に関する最近の新しい技術

上述した種類のセンサに加えて、近年、レーザー吸収分光法を用いた吸収分光式のセンサの実用化が進んでおり、さまざまな用途で活用がされています。

吸収分光式は、水分子が特定の波長の光を吸収する特性を利用しており、図5に示すような構成でセンサとして作動します。測定対象の気体(サンプルガス)を流したセンサ部に水の吸収波長のレーザーを照射し、センサ部通過前の光(入射光)の強度(I0)とセンサ部を通過後の光(透過光)の強度(I1)を比較することでサンプルガス中の水分量を算出することができます。

例えば、半導体デバイスの性能や歩留まりに悪影響を与える半導体製造用ガス中の水分量はきわめて微量であることから、上述した①~③の方式による検知は難しく、測定原理としては吸収分光式の一種であるCRDS (Cavity Ring-Down Spectroscopy)をセンサ部として採用した超低湿(微量水分)用測定器により管理が行われています。

また、①~③のセンサ方式では、サンプルガスをセンサ部に接触させて測定をしているため、センサ部へダメージを与えるガス(腐食性など)の測定は困難でしたが、吸収分光式であるTDLAS(Tunable diode laser absorption spectroscopy)を採用した露点計が製品化されたことで、この課題を解決しており、ガス中の水分量変化を瞬時に捉えることもできることから、非接触高速湿度水分計として利用されており、その用途は拡がりつつあります。

図5 吸収分光式の構成図
図5 吸収分光式の構成図

(著)神栄テクノロジー株式会社

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