アンテナ昇降機 比較検索・メーカー一覧

アンテナ昇降機は、主にEMC計測の中でも放射エミッション（放射妨害波）測定において使用されるもので、測定対象物から飛来するノイズ電波を受信するアンテナを昇降させる設備です。

主なEMCの国際規格では、受信アンテナの高さを地上最大4mまで上げて測定を行う必要があるため、アンテナを昇降させる機構が必要となります。さらに昇降機に電子機器を搭載する場合は、そこから発生する電磁ノイズ対策や電磁界への反射影響などを考慮する必要もあります。

アンテナ昇降機には手動と自動があります。手動の場合は手巻きワイヤーリールなどによりアンテナを吊り上げたり下げたりする事で高さ調節を行います。

自動の場合はベルト駆動などを用いて、計測ソフトウェアからのコマンドに従って自動的に昇降するものが一般的です。

いずれの場合も、EMC規格ではアンテナは高さ調節に加えて偏波（polarization）を0°と90°に設定できる必要があります。手動の場合はオペレータが手でアンテナの角度を変更しますが、自動の場合は昇降機構に使用するモーターに加えてもう1台モーター、或いは空気圧（pneumatic）による回転機構を備えている必要があります。

アンテナ昇降機は受信アンテナに最も近い位置に存在する機器のため、アンテナ周辺の電磁界分布に影響するおそれがあります。このため、可能な限り非金属の材料を用いて作られており、FRPやグラスファイバなど強度が高く非金属のものが用いられます。

自動アンテナ昇降機の場合は、制御用コンピュータなどと接続されていますので、その通信線には電磁波を放射する様な金属配線は使わず、光ファイバによる通信などにより電磁的に影響がないものが用いられます。

またアンテナ昇降機にはアンテナ及び同軸ケーブルが取り付いた状態で高さ4mまでの昇降と偏波の切替が行われます。これらの動作の際に、不要にケーブルにテンションがかかったりするとケーブルやアンテナの破損、或いは断線などにつながるため、ケーブルの取り回しには細心の注意が必要となります。一般的には同軸ケーブルはアンテナ昇降機の昇降方向に90°に取り付けられているブームと呼ばれるアンテナ取り付けアームの中を通し、アンテナ後方にまっすぐ配置される事が一般的です。これによりアンテナの近傍には金属製の同軸ケーブルは存在しなくなり、アンテナ特性への影響は極めて小さくなります。また偏波回転の際にもケーブルに不要なテンションがかからなくて済むというメリットもあります。手動の場合はオペレータが配線に配慮しながら設定できますが、自動の場合は十分安全を見たケーブルの取り回しができる様な配慮が必要となります。