【TDR測定器の構成とDUTとの接続例】
伝送ケーブルを用いて、多数の通信端末を多点接続するネットワークシステムでは、ケーブル配線構造の複雑化、高密度化に伴って、コネクタ端子接触不良やケーブル劣化などの伝送路不具合に対する原因特定が困難となっている。こうした中、現在のネットワークシステムでは、RAS(信頼性、可用性、保守性)機能の向上が期待されている。
そこで、従来から伝送路の解析手法として、ケーブルの容量成分を測定することによりケーブルを断線することなく異常を調査する方法がある。また、導電線の周囲に生じる静電誘導などを測定することにより断線位置を調べる方法がある。しかし、これらの従来の方法では、解析精度や、診断のための測定に手間がかかるなどの課題がある。
さらに、ケーブルの診断手法の一つに、測定対象物にステップ波を励振し、その反射波を読み取るTDR(Time Domain eflectometry )法がある。しかし、従来の TDR 法は断線程度の簡単な故障しか検出できず、本稿で想定するような差動信号線を用いるケーブル多点接続ネットワークにおいては、接続ミス等の異常に対する測定結果が複雑であり、原因究明までの解決までの時間がかかるという課題があった。
こうした従来の診断手法の課題を解決するために、TDR 法を拡張した故障診断方式である「マルチモードTDR法」を提案する。本提案手法は、差動モードと同相モードおよびシングルエンドモードの各インピーダンス応答(Zdiff、 Zcomm、 Z0)を測定し、測定波形の特徴からフローチャート化して故障を切り分けることにより、複雑だった故障診断を簡易化でき自動的に切り分けられるだけでなく、新たな故障を判別可能とした。本稿では、今回提案する「マルチモード TDR 法」ついて、その測定手法とフローチャートによる故障診断法について記載する。
TDR(Time Domain Reflectometry:時間領域反射測定)法とは、DUT(Device Under Test:被測定物)に向かって高速な立ち上がりのステップ波電圧を励振した後、DUT からの反射波形を測定することによって DUT の伝送路特性(特性インピーダンス)を解析する手法である。特性インピーダンスとは単位は [Ω] であり、電圧降下を引き起こす一般的な抵抗器と単位が同じであるが、これは電流の流れ易さを意味するようなパラメータであることが抵抗器の抵抗値とは若干異なる。
続きは『月刊EMC No.306』にて
<特集>
◇モノづくりとEMC
・情報通信環境の快適性をサポートする建物づくりを目指して
(東急建設(株) 川瀬隆治)
◇電磁波セキュリティサイドチャネル攻撃とEMC
・巻頭言
(東北大学 曽根秀昭)
・サイドチャネル攻撃の概要と最新研究動向
(東北大学 本間尚文、林優一)
・サイドチャネル攻撃評価のための電源ノイズモデル
(神戸大学 藤本大介、三浦典之、永田真)
・EMC 技術者から見たサイドチャネル攻撃とその対策設計
(岡山大学 五百旗頭健吾)
・暗号モジュールを搭載する情報機器上での効率的な情報漏えい可視化手法
(東北大学 林優一、本間尚文)
<Technology>
・携帯端末におけるイントラEMC 評価法
(パナソニック(株) 前川智哉)
・高品質ケーブルネットワークシステムの故障解析法
(三菱電機(株) 桑原崇、明星慶洋)
<規格・規制情報>
・鉄道 電磁両立性 鉄道車両-装置
((独)交通安全環境研究所 長谷川智紀)
・通信ネットワークの進化とマルチメディア化に対応した最新イミュニティ規格動向
(NECアクセステクニカ(株) 青谷嘉久)
・マルチメディア機器CISPR32 第1.0 版の発行ーとその近々の改定
(PFUテクノコンサル(株) 千代島敏夫)
<実践講座>
・サージ対策入門!電子機器のサージ対策と効果⑧
アンテナ部分の静電気対策
(三菱マテリアル(株) 田中芳幸)
・新・回路レベルのEMC 設計②
分布定数回路の基礎
(シグナルインテグリティ コンサルタント 碓井有三)
<インフォメーション>
・機械式立体駐車場の事故調査始まる
・太陽光発電システム施工企業に広まる噂
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