光電界センサ/光電圧プローブによるESD 波形の測定(月刊EMC)

2018.7.18 更新
光電界センサ/光電圧プローブによるESD 波形の測定(月刊EMC)

【ダイポールアンテナ・光電界センサアンテナ感度の周波数特性】

 人体または近接物体から発生する静電気放電(以下、ESD)に対する、電子機器イミュニティ耐性試験方法は IEC61000-4-2 で規定されており、静電気による障害の有無を効率良く試験する方法として理解されている。しかしながら、ESD 試験器から発生した放電電波(電圧・電流)が障害を発生させるまでに起こる現象を定量的に再現性良く解析することは難しく、出荷検査において障害が発見された場合、対策者の経験則や試行錯誤によって対応が進められている。この対策を困難にしている原因は、ESD 現象およびパルス波形が複雑であり、測定用のアンテナ・プローブが、それらを設置するだけで電磁環境を変えてしまう、いわゆる侵襲性を持っていることによって真実の現象が観測出来ていないことが大きな要因と考えられる。

 本報告では、ESD 試験器から発生させた放電電波を正確に計測するための方法として光電界センサを紹介し、正確な ESD 電界測定のための条件の検証と、測定例として空間放電試験時の電界測定結果を示す。更に、現在、詳細実験の途中であるものの、一例として間接放電試験の際に垂直結合板上の電界について測定ポイントによる違いを評価した計測結果を示す。

 次に、ESD 試験中に如何なるノイズ電圧波形が伝送されているかを測定するための光電圧プローブを2 種類提案する。一つは ESD 試験器に近い数 kV レベルの高電圧を測定するための高電圧側のみコンタクトするオープンタイプ、もう一つは誤動作の瞬間の電圧変動となる数 V を測定するために、信号側とグランド側の両方を接触させ、差動測定を行うクローズドタイプを若干の測定例によって報告する。


ESD 電波の計測

 ESD 電波の特長としては、高電圧単パルスであることが挙げられ、それによって発生する電界強度は非常大きく、かつ広い周波数成分を持つ。 一方、従来のアンテナに接続されている同軸ケーブル(メタルケーブル)は意図しない電波が混入されることによって測定結果の再現性・信頼性を損なうことになる。これら従来の測定方法に関わる問題点を下記に説明する。

各種アンテナと周波数帯域

 一般に、電波を計測するために使用されるアンテナは、共振条件での使用が一般的である。つまり測定対象の周波数(または波長)に見合ったアンテナを選択して使用している。このため、ひとつのアンテナで受信できる周波数範囲は限られており、周波数によってアンテナを取り換えて測定している。一方、ESD 電波の波形は低周波数から数 GHz までの非常に広い周波数成分を持つことが知られており、すべての周波数に渡って受信できるアンテナは無く、特定帯域の周波数について測定され、議論されていた。


続きは『月刊EMC No.344』にて

【月刊EMC No.344 目次情報】

<特集>
◇0(ゼロ)からのEMC対策と設計
・はじめてのEMC 対策─解決に至るアプローチとは─
 (パナソニック株式会社 大住秀夫)
・はじめてのEMC 設計─現象を整理して捉えるには─
 (住友電気工業株式会社 大森寛康)

<Technology>
・差動ケーブルのEMC モデリング技術─基礎的な事例から応用的な事例まで─
 (富士ゼロックス(株) 奈良茂夫)
・光電界センサ/光電圧プローブによるESD波形の測定
 ((株)精工技研 大沢隆二)

<Information>
・多様化する電源の評価事例ノイズ試験におけるスイッチング電源の活用
 (月刊EMC編集部)

<規格・規制情報>
・マルチメディア機器のエミッション規格の解説と今後の動向
(情報通信審議会情報通信技術分科会 電波利用環境委員会 I 作業班主任 雨宮不二雄)

<実践講座>
・製品の信頼性を高めるLSI のEMC 設計 ②
 半導体集積回路動作と電磁両立性特性
 (ローム(株) 稲垣亮介)
・規制の法的枠組みと動向 ②
 電波法とEMC
 (京都大学研究員/東北大学名誉教授 杉浦行)
・新・回路レベルのEMC 設計 ⑲
 車車間・路車間通信
 (名古屋大学教養教育院 山里敬也)

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