生活環境における携帯電話基地局等の電波強度を明らかに ~我が国で初めて電波ばく露レベルの大規模・長期測定を実施~(NICT)

2021.12.21更新

ポイント

  • 最近10年間の市街地、郊外及び地下街の携帯電話基地局等からの電波強度の変動傾向が明らかに
  • 我が国で初めて、生活環境における電波ばく露レベルの大規模・長期測定を2019年度から実施
  • 本格導入が進む5Gによる電波ばく露も対象に、長期的に測定を継続・公表していく予定

概要

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、市街地、郊外及び地下街の携帯電話基地局等からの電波強度の変動傾向を調査しました。これまでに、携帯電話基地局等からの電波ばく露レベル変動を市街地・郊外・地下街における500地点以上で調査し、同一地域における過去(約10年前)の測定結果と比較したところ、電波ばく露※1レベルが上昇傾向にあるものの電波防護指針※2より十分に低いレベルであることを明らかにしました。NICTは、2019年度から我が国で初めてとなる電波ばく露レベルの大規模・長期測定を実施しており、電界プローブ※3による定点測定※4、携帯型測定器を個人が持つことによる測定※5、電測車(測定器を搭載した自動車)による広域測定※6等を組み合わせて、生活環境における電波ばく露レベルのデータを取得しています。

今後、電測車を用いた広域測定等を通じて、5Gが本格導入される我が国の電波ばく露レベルの大規模測定を進めていきます。

図 測定風景と電波ばく露レベル(中央値)の測定結果"

図 測定風景と電波ばく露レベル(中央値)の測定結果

今後の展望

今回の成果は、5Gが測定地域に導入される前の結果であり、今後5Gにより電波ばく露レベルがどのように変動するかを明らかにするための参照データとなるものです。そのため、今後本格導入が進む5Gによる電波ばく露も対象として、長期的に(少なくとも2040年まで)測定を継続し、結果を公表していきます。また、海外における電波ばく露レベルの調査活動とも連携し、国際的に相互比較可能な電波ばく露レベル測定データの取得・蓄積・活用の実現に取り組みます。

【注釈】

※1 電波ばく露
電波利用において人体が電波(3 THz以下の周波数)にさらされること。
※2 電波防護指針
電波ばく露においてその電波が人体に好ましくないと考えられる生体作用を及ぼさない安全な状況であるために推奨される指針(周波数の範囲は10 kHzから300 GHz までに限る。)のことをいう。我が国では総務省情報通信審議会の答申として策定されている。
※3 電界プローブ
空間中の電波は様々な方向から到来し、電波の偏波(電界の向き)も様々な方向であるため、通常のアンテナでは正確な電波のレベルを測定することが困難である。そのため、専用の測定装置として、空間中の電波ばく露レベルを高精度に測定するために、任意の電波の入射方向・偏波方向に対して正確に測定可能なアンテナを直交3軸に配置したプローブのこと。
※4 定点測定
静止状態で電波ばく露レベルの測定を行うことであり、短時間(例えばバッテリー駆動測定器を使った数分から数時間)に行う測定と長期間にわたり行う測定(例えばIoTセンサを使った数年間)行う測定がある。今回行ったのは、短時間に行う測定である。
※5 携帯型測定器による測定
小型の測定器(300 g程度)をカバンなどに入れて携帯し、個人の電波ばく露レベルを測定するもの
※6 電測車による測定
電波ばく露レベル測定用に改造した自動車に測定器を搭載し、走行中又は駐車時に広範囲な測定を行うもの

最新のEMC関連規格動向は『月刊EMC』にて随時掲載しています。


Copyright(C) Kagakujyoho shuppan Co., Ltd. All rights reserved.
※記事の無断転用を禁じます。