AIによる渋滞予測を活用した信号制御の実証実験に成功
―全国の交通管制システムへのAI導入に向けた検討へ―(NEDO)

2022.05.16更新

 NEDOが取り組む「人工知能技術適用によるスマート社会の実現」の一環として、(一社)UTMS協会と住友電気工業(株)は人工知能(AI)を活用した信号制御システムの開発を進めています。

 このほど岡山県警察本部の協力のもと、岡山市内2カ所の交差点でAIによる渋滞予測を活用して信号を制御する実証実験に成功しました。

 今後、この成果を全国の交通管制システムへのAI導入に向けて活かしてもらうべく、検討を進め、より少ない車両検知センサーによって、より低コストとなる信号制御を実用化し、交通渋滞の解消と低炭素社会の実現に貢献することを目指します。

図1 AIによる渋滞状況の予測

図1 AIによる渋滞状況の予測

概要

 現在日本国内に設置されている多くの信号機では、道路上の車両検知センサーが計測した交通量と渋滞長に基づいて各交通管制センターから最適な青信号の時間を制御しています。特に渋滞長を計測するためには交差点流入路に沿って数百メートルごとに渋滞計測用車両検知センサーを設置することが必要であり、その高い運用コストが課題となっています。一方、車両検知センサーに代わる新しい交通情報源として車両から直接収集される走行軌跡情報(プローブ情報)が注目されていますが、対象車両が限定されているためにデータが収集できない時間帯があるほか、車両からの情報送信周期や収集センターでの集計処理にかかる時間などにより、交通管制センターにプローブ情報が収集されるまでに遅れが生じるという課題があります。

 これらを解決するためNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と一般社団法人UTMS協会、住友電気工業株式会社は「人工知能技術適用によるスマート社会の実現※1」で、人工知能(AI)技術を活用して融合させたプローブ情報とセンサー情報に基づいて、信号制御の高度化を図る研究開発に取り組んでおり、このたびAIによる渋滞予測を活用した信号制御の実証実験に成功しました。

 本実証実験は岡山県警察本部の協力のもと、岡山県警察本部交通管制センターに導入したAIで推定した渋滞長を活用して信号制御を行い、従来の渋滞計測用車両検知センサーの計測結果を活用する信号制御と同等の性能を有することを実証しました。

今後の予定

 NEDOが取り組む事業の一環としてUTMS協会と住友電気工業(株)は、全国の交通管制システムへのAI技術導入に貢献するため、今回の研究成果に基づき標準仕様案の検討を進めていきます。

 また、本事業でNEDOは次世代の交通管制システムの技術確立を目指した「AIを組み込んだ適応型の自律・分散交通信号機※2」の研究開発にも取り組んでいます。UTMS協会と住友電気工業(株)は、今回のAIによる渋滞長の推定を自律・分散交通信号機の入力情報として活用する検討を進めていきます。

【注釈】

※1 人工知能技術適用によるスマート社会の実現
事業名:人工知能技術適用によるスマート社会の実現/人工知能技術の社会実装に関する研究開発/人工知能を活用した交通信号制御の高度化に関する研究開発
事業期間:2018年度~2022年度
委託先:国立大学法人東京大学、学校法人慶應義塾、国立大学法人千葉大学、国立大学法人東北大学、国立大学法人北海道大学、日本無線株式会社、日本電気株式会社、住友電気工業株式会社、一般社団法人UTMS協会
事業概要:人工知能技術適用によるスマート社会の実現
紹介動画:NEDO Channel「人工知能を活用した交通信号制御の高度化に関する研究開発」
※2 AIを組み込んだ適応型の自律・分散交通信号機
(参考)NEDOリリース(2022年3月14日)「自律・分散型AI信号制御による「軽やかな交通管制システム」の実証実験を開始」

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