世界初、4コア光ファイバで毎秒1ペタビット伝送に成功
~広帯域波長多重技術により伝送容量を大幅に拡大~(NICT)
ポイント
- 世界で初めて、標準外径の4コア光ファイバで毎秒1ペタビットを超える大容量伝送実験に成功
- 利用する波長帯域を大幅に拡大し、合計801波長による広帯域波長多重技術を実現
- 既存送受信技術をベースに大容量化、情報通信サービスの進化を支える基幹系通信システム実現に向け前進
概要
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICTエヌアイシーティー、理事長: 徳田 英幸)ネットワーク研究所のベンジャミン パットナム主任研究員らのグループは、研究開発用の標準外径※1(0.125 mm)4コア光ファイバにおいて広帯域波長多重技術※2を駆使し、世界で初めて同ファイバでの毎秒1ペタビット※3を超える大容量伝送実験に成功しました。
今回の実験では、一般的に商用化されていない波長帯域※4(S帯)をほぼ完全に活用し、商用の帯域(C帯、L帯)と合わせて20テラHzの周波数帯域で801波長を使用し、大容量を実現しました。今回、早期実用化が期待できる4コア光ファイバを用い、かつ、複雑な受信処理の使用を避けることで、大規模専用回路の開発に依存することなく大容量化を達成し、Beyond 5G以降の情報通信サービスの進化を支える基幹系通信システムの実現に向けて大きく前進しました。
なお、本実験結果の論文は、レーザー・エレクトロオプティクスに関する国際会議(CLEO2022)にて非常に高い評価を得て、最優秀ホットトピック論文(Postdeadline Paper)として採択され、現地時間2022年5月19日(木)に発表します。

図1 今回の伝送システム(NICT)
今後の展望
今後も引き続き、継続的な光通信システムの向上を実現すべく、早期、長期両面で実用可能な標準外径光ファイバの研究開発を推進し、更なる性能向上の可能性を探求していきます。
なお、本実験の結果の論文は、光デバイス関係最大の国際会議の一つであるレーザー・エレクトロオプティクスに関する国際会議(CLEO2022、5月15日(日)~5月20日(金))で非常に高い評価を得て、最優秀ホットトピック論文(Postdeadline Paper)として採択され、現地時間5月19日(木)に発表します。
【注釈】
- ※1 標準外径光ファイバ
- 国際規格で、光ファイバのガラス(クラッド)の外径は0.125±0.0007 mm、被覆層の外径が0.235〜0.265 mmと定められている。現在の光通信で広く使用されている光ファイバは、外径0.125 mmのシングルコア・シングルモードファイバで、毎秒250テラビットが伝送容量の限界と考えられており、新型光ファイバの研究開発が盛んに行われている。
- ※2 波長多重技術
- 異なる波長の光信号を1本の光ファイバで伝送する方式で、波長数に比例し伝送容量を上げることが可能であるが、光伝送に適した波長帯域は限られており、現在の光伝送システムで利用されている波長数は90程度である。
- ※3 ペタビット、テラビット
- 1ペタビットは1,000兆ビット、1テラビットは1兆ビット、1ギガビットは10億ビット。毎秒1ペタビットは、1秒間に8K放送の1,000万チャンネル相当である。
- ※4 波長多重技術
- 通信用途で主として用いられている、C帯(波長1,530〜1,565 nm)とL帯(1,565〜1,625 nm)、その他に、O帯(1,260〜1,360 nm)、E帯(1,360〜1,460 nm)、S帯(1,460〜1,530 nm)、U帯(1,625〜1,675 nm)がある。今回は、S帯の中でも短い波長(1,460〜1,490 nm)も加えて使用した。

図2 広く利用されている標準外径光ファイバのイメージ図(NICT)

図3 光通信波長帯域(NICT)
最新のEMC関連規格動向は『月刊EMC』にて随時掲載しています。
Copyright(C) Kagakujyoho shuppan Co., Ltd. All rights reserved.
※記事の無断転用を禁じます。