計算科学を活用したファインセラミックス製造の革新的なプロセス開発基盤の構築に着手 ―日本のファインセラミックス産業の競争力強化を目指す―(NEDO)

2022.06.06更新
計算科学を活用したファインセラミックス製造の革新的なプロセス開発基盤の構築に着手

 NEDOはポスト5G・6G通信分野などで、さまざまな電子部品やその製造設備などに使用されるファインセラミックス部材の産業競争力確保のため、革新的なプロセス開発基盤の構築に取り組む「次世代ファインセラミックス製造プロセスの基盤構築・応用開発」事業に着手します。

 本事業では、これまで行われてきた「経験と勘」などに基づくファインセラミックス製造のプロセス開発を変革し、計算科学との融合・連携によってプロセス開発期間を大幅に短縮するプロセス開発基盤を構築します。また構築したプロセス開発基盤を活用する企業が、幅広く製品開発に適用できるよう支援することにより実用化を加速し、2035年におけるファインセラミックス部材の出荷額約1兆円の増加(2019年比)につなげ、日本のファインセラミックス産業の競争力強化を目指します。


1. 概要

 Society 5.0※1の実現に向けて、ポスト5G・6G※2通信分野などでハードウエアの中核となるデジタル機器の小型化や高性能化、高信頼化の要望が高まっています。デジタル機器の安定作動を支えるファインセラミックス※3電子部品や、その製造に関わるエンジニアリングセラミックス※4部品など、幅広い分野で使われている日本のファインセラミックス部品は世界市場の約4割を占めています。今後、市場が拡大するエネルギー・IoT分野や医療・ヘルスケア分野でのデジタル化においても、海外の技術的な追い上げを許さない高い産業競争力と世界シェアを確保していく必要があります。

 ファインセラミックスは、製造プロセスのうち原料粉末の成形・焼成過程で、微構造などの形体や混合状態などの質が変化しますが、それらの情報は製品にほとんど残りません。このため、製品の構造を分析し製造方法を調査する「リバースエンジニアリング」が困難であり、ノウハウをブラックボックス化できることが強みになっています。

 一方で、最適なプロセス条件の設計の多くは「経験と勘」や「製造プロセス間の人的なすり合わせ」に頼ってきたため、プロセス開発期間の長期化が課題でした。今後、ファインセラミックス産業において、他国の技術的な追い上げを許さない高い産業競争力と世界シェアを確保していくためには、従来の方法に代わり、プロセス開発期間を大幅に短縮できる革新的なプロセス技術が不可欠です。

 こうした背景から、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)はファインセラミックス製造の革新的なプロセス開発基盤の構築を目指し、「次世代ファインセラミックス製造プロセスの基盤構築・応用開発」事業に着手します。

【注釈】

※1 Society 5.0
第5期科学技術基本計画(2016年1月22日閣議決定)において、日本が目指すべき未来社会の姿として提唱された概念で、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)です。

※2 ポスト5G・6G
日本で2020年に運用が開始された5Gに対し、超低遅延や多数同時接続などの特徴的な機能が強化されたシステムがポスト5G、2030年ごろに運用開始が見込まれる後継無線通信システムが6Gです。

※3 ファインセラミックス
化学組成、結晶構造、微構造組織・粒界、形状、製造工程を精密に制御して製造され、新しい機能または特性をもつ、主として非金属の無機物質です。

※4 エンジニアリングセラミックス
機械的、熱的および化学的な性質を主に利用し、各種構造部品として使用されるセラミックスです。

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