バイオ由来製品の実用化に向け、産業用物質生産システムの実証6件に着手―バイオ産業の裾野拡大や炭素循環型社会の実現を目指す―(NEDO)

2022.08.10 更新

 NEDOは「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」の中で、産業・社会に有用な物質のバイオ生産システム(産業用物質生産システム)の有効性を実証する取り組みについて、新たに6件の研究開発を採択しました。石油化学原料のバイオ化を目指すテーマや、野生植物に原料を依存する医薬品、ヘルスケア製品、香料などの有効成分について、発酵生産による工業化を目指すテーマなどに着手します。これらの研究開発を推進し、バイオによる高付加価値機能の実現や、化石資源を含む天然資源への依存低減などにつながるバイオ由来製品の実用化を加速させます。

 これにより、バイオ産業の裾野拡大や炭素循環型社会の実現に貢献する製品の創出を目指します。


図 事業イメージ

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概要

 植物や微生物などの生物を用いて物質を生産する技術(バイオものづくり)は、従来の化学プロセスに比べ、省エネルギーであるとともに、原料を化石資源に依存しないバイオマスからの物質生産も可能であるため、炭素循環型社会の実現や持続的経済成長を導くものづくりへの変革が期待できます。一方で、現状の技術ではコストに見合わないため、民間企業での研究開発や投資が促進されにくい状況です。

 そこでNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は2020年度から、「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発※1」を推進しています。本プロジェクトでNEDOは、バイオ資源の活用を促進する各種技術や、従来法にとらわれない次世代生産プロセスの開発に取り組んでいます。これにより、バイオものづくり産業の基盤を創出するとともに、産業・社会に有用な物質のバイオ生産システム(産業用物質生産システム)の実証を通じてバイオ由来製品の創出を加速させることを目的としています。昨年度(2021年度)に引き続き、2022年度も産業用物質生産システムによるバイオ由来製品創出に向けた実生産への橋渡し検証事例を増やすことを目的として、「研究開発項目[3]産業用物質生産システム実証」の研究開発を支援するための2回目の公募を行い、このたび6件のテーマを採択しました。

 例えば、石油化学原料のバイオ化を目指すテーマとして、非可食バイオマスを原料とした酵母による油脂の新規生産方法の開発(出光興産株式会社)に取り組みます。また、野生植物に原料を依存する医薬品や、ヘルスケア製品、香料などの有効成分を発酵生産することで工業化を目指すテーマに着手します。その一つとして天然物中の含有量が少なく、構造が複雑な香料の中間体について、微生物発酵による生産に転換する研究開発(小川香料株式会社)を進めます。このほか、天然香料について、微生物の生育阻害を避けつつ、工業的発酵生産を行う研究開発(高砂香料工業株式会社)などにも取り組みます。

 目的物質の生産性向上を狙うとともに量産化を見据えた生産プロセスの最適化などの研究開発を行い、バイオによる高付加価値機能の実現や、化石資源を含む天然資源への依存低減などにつながるバイオ由来製品の実用化を加速させます。 これらの取り組みにより、バイオ由来製品の社会実装加速や新たな製品・サービスの創出を後押しすることでバイオ産業の裾野拡大や炭素循環型社会の実現を目指します。


注釈

※1 カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
事業概要:カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
今回公募を行ったのは本プロジェクトのうち、研究開発項目[3]の「産業用物質生産システム実証」です。
本研究開発項目の事業期間と事業規模は以下の通りです。
事業期間:助成フェーズ最大3年間。
     助成フェーズ前に委託フェーズを設ける場合は、委託フェーズ最大2年間。
     (最大で委託フェーズ2年間+助成フェーズ3年間の合計5年間)
事業規模:助成フェーズ自己負担を含む事業総額1件当たり20百万円~100百万円/年度
     委託フェーズ1件当たり20百万円未満/年度

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