高温融体の熱伝導率の短時間測定技術を実用化
-溶融アルミニウム合金などの高熱伝導率材料を含む測定サービスを開始-(産総研)
2022.09.09更新

ポイント
- 熱伝導率測定法として高精度な測定が可能なホットディスク法を使用
- 高温融体測定用センサーと高速測定技術の組み合わせによる1秒未満の測定を達成
- 100 W/m・Kを超える高熱伝導率融体の測定が可能
概要
株式会社コベルコ科研(以下、コベルコ科研)は国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)と共同で、「ホットディスク法(H/D法)*1による高温で液体になったアルミニウム(溶融Al)の熱伝導率*2評価技術の開発および実用化」に取り組み、産総研で開発した高温融体測定用センサーを使用し、測定装置や周辺機器、測定方法に独自の工夫を加えることで、従来は困難であった溶融Alの熱伝導率の測定を可能にしました。本成果は、これまで測定できなかった材料の熱伝導率や比熱などの物性値を産業界に提供し、シミュレーションの精度向上などを通じて各産業分野の発展に貢献します。
なお、この技術の詳細は、「公益社団法人日本鋳造工学会、第180回全国講演大会」(2022年9月27-30日)にて発表します。
今後の予定
現在の対応可能な温度は900℃程度までであり、さまざまな溶融Al合金*3の熱伝導率を測定するには十分と考えています。しかし、鋳鉄や銅合金、スラグ*4といった、より高融点のニーズに対応するため、より高い温度での測定を可能とするよう装置の改良を計画しています。
本成果を熱伝導率が未知の溶融Al合金に適用すると同時に、対象材料を拡大していくことで、さまざまな分野に熱伝導率などの物性値を提供し、各分野のシミュレーション精度の向上などを通じて、さらなる技術の発展に貢献していきます。
用語の説明
- ※1 ホットディスク法(H/D法)
- 物質の熱伝導率を測定する方法。「ホットディスク」と呼ばれる面状のセンサーで測定対象の熱の伝わりやすさを計測する。
- ※2 熱伝導率
- 物質内の熱の流れやすさを示す物性値。一般的に金属は大きく、プラスチックは小さい値を示す。
- ※3 Al合金
- 軽い金属であるアルミニウムに他の元素を加えて特性を改善した金属。自動車や航空機の部品、スマートフォンの筐体など、軽くて強度が必要な用途に適している。
- ※4 スラグ
- 鉱石から金属を還元・精錬する際などに、溶融した金属から分離して浮かぶ不純物成分。固化したものは路盤材やコンクリート用骨材などとして利用されている。
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