バイオフィルムを数秒で透明化する新技術「iCBiofilm」を開発 ~内部の微細構造や生きたままの微生物を深部まで観察することが可能に~(JST)

2023.1.30更新

<ポイント>

バイオフィルムを数秒で透明化する新技術「iCBiofilm」を開発
~内部の微細構造や生きたままの微生物を深部まで観察することが可能に~(JST)
  • バイオフィルムを生きたままの状態で瞬時(数秒以内)に透明にできるiCBiofilm法を開発し、製品化しました。

  • iCBiofilm法はさまざまな微生物(細菌および真菌)のバイオフィルムに使用でき、その構成成分(微生物細胞、たんぱく質、多糖類、DNAなど)の分布を、空間配置を壊さず可視化できます。

  • iCBiofilm法は、従来の組織透明化法では不可能であった透明化3Dライブセルイメージングを実施することも可能であり、バイオフィルムの形成過程や抗菌物質の作用を解析できます。


 東京慈恵会医科大学 細菌学講座の杉本 真也 准教授と金城 雄樹 教授は、難治性感染症の発症や水浄化システムの機能低下などの原因となる微生物の集合体であるバイオフィルムを、内部の微生物が生きたままの状態で瞬時に透明にして顕微鏡で観察する世界初の新技術iCBiofilm(アイ・シー・バイオフィルム)法を開発しました。

 従来の光学顕微鏡法では、光の散乱や屈折によりバイオフィルムの表面から20マイクロメートル程度の深さまでしか観察できず、その全体像や内部の微細な構造を観察することは極めて困難でした。iCBiofilm法は、500マイクロメートルを超えるような分厚いバイオフィルムでも観察することが可能であり、世界最高性能の深部イメージングを実現しました。また、iCBiofilm法を応用することで、微生物が生きたままの状態で透明にすることが可能になり、その形成過程や抗菌物質の殺菌作用を詳しく解析できるようになりました。それらにより構造や機能に対する理解が飛躍的に高まり、これまで困難とされてきた難治性バイオフィルム感染症治療法の開発や水浄化システムの高効率化など、さまざまな分野での社会実装につながると期待されます。

 本研究の成果は2023年1月23日(日本時間)、「Communications Biology」誌に掲載されます。


本研究は、戦略的創造研究推進事業(ERATO)「野村集団微生物制御プロジェクト」(JPMJER1502)、文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(B)(20H02904)、同 新学術領域研究「超地球生命体を解き明かすポストコッホ機能生態学」(22H04889)、東京慈恵会医科大学 戦略的重点配分研究費、および住友科学財団 研究助成金などの助成を受けて行われました。



<プレスリリース資料>

本文 PDF(1.25MB)

<論文タイトル>

“Instantaneous Clearing of Biofilm (iCBiofilm): an optical approach to revisit bacterial and fungal biofilm imaging”
DOI:10.1038/s42003-022-04396-4


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