テラヘルツ波がスピン流に変換される機構を実証・解明
~通信、メモリー技術を革新する“スピントロニクス”発展に寄与~(JST)

2024.9.19更新

ポイント

  • 反強磁性体磁化ダイナミクスから生じるスピン流の検出に成功
  • スピンポンピング効果によるテラヘルツ波⇒スピン流変換現象の発現機構を解明
  • テラヘルツ波⇔スピン流変換インターフェースの効率向上に期待

  • 名古屋大学 大学院工学研究科の森山 貴広 教授、服部 冬馬 博士前期課程学生、夛田 圭吾 学部生らの研究グループは、福井大学 遠赤外領域開発研究センター 石川 裕也 講師、藤井 裕 教授、山口 裕資 准教授、立松 芳典 教授、東北大学 金属材料研究所 木俣 基 准教授(当時)、木村 尚次郎 准教授、京都大学 化学研究所 菅 大介 准教授、東邦大学 理学部 大江 純一郎 教授らとの共同研究で、反強磁性体磁化ダイナミクスから生じるスピン流の検出に成功し、これまで知られていなかった反強磁性体におけるスピンポンピング効果によるテラヘルツ波⇒スピン流変換現象の微視的機構を明らかにしました。
    テラヘルツ波はbeyond 5Gなどの大容量・高速通信を担う周波数帯の電磁波です。反強磁性体はその磁気共鳴周波数がテラヘルツ領域にあるため、テラヘルツ波に応答する磁性材料として注目されています。
    本研究では、反強磁性体α-Fe2O3(酸化第二鉄/ヘマタイト)の2つの磁化ダイナミクスモードに着目し、それらのダイナミクスから生じるスピン流を検出することで、反強磁性体におけるスピンポンピング効果の発現機構を明らかにしました。本成果は、テラヘルツ技術とスピントロニクス技術を融合した“テラヘルツスピントロニクス”の核心であるテラヘルツ波⇒スピン流変換を実証し、その機構を解明した極めて重要なマイルストーンとなるものです。本成果で得られた反強磁性体スピンポンピング効果の理解を基礎として、応用上重要であるテラヘルツ波⇒スピン流変換効率向上を目指す研究への展開や、反強磁性磁化とスピン流の相互作用物理のさらなる理解につながることが期待できます。 本研究成果は、2024年12月18日(日本時間)付国際学術誌「Physical Review Letters」に掲載されました。


    本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)「創発的研究支援事業 JPMJFR2242」、「戦略的創造研究推進事業 さきがけ JPMJPR20B9」、「同 CREST JPMJCR24R5」、科研費「国際共同研究加速基金(海外連携研究) JP23KK0093」「基盤研究(A) JP21H04562」「若手研究 JP21H01810」、「キヤノン財団 研究助成」、「福井大学 共同利用 R05FIRDG008C」などの助成を受けて行われました。


    <プレスリリース資料>

    本文PDF(987KB)


    <論文タイトル>

    “Inter- and intrasublattice spin mixing conductance of antiferromagnetic spin pumping effect in α-Fe2O3/Pt”

    DOI:10.1103/PhysRevLett.133.256701


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