金属3Dプリンターが切り開くモノづくりの新時代純金属混合粉末×金属3Dプリンターでハイエントロピー合金を実現~ワンプロセスで合金製造する新手法~(JST)

2025.3.13更新

ポイント

  • 従来の合金製造方法(鋳造)では難しかった「ハイエントロピー合金」を、金属3Dプリンターで実現。
  • 5種類の純金属粉末を溶融し、金属3Dプリンターの特徴である極めて高い冷却速度を駆使した超急冷凝固を適用することで、構成元素が互いに固溶した均一なハイエントロピー合金を製造することに成功。
  • 「合金化」「組織制御」「形状作製」からなる金属の合金製造工程をワンプロセスで実現可能に。
  • <概要>

    大阪大学 大学院工学研究科の小笹 良輔 助教、Gokcekaya Ozkan(ゴクチェカヤ・オズカン) 助教、中野 貴由 教授らの研究グループは、レーザーを熱源とする金属3Dプリンターが、金属材料の高機能化に必須の合金化と組織制御、さらには形状制御を同時(ワンプロセス)に実現できることを初めて実証しました。
    これまでに金属3Dプリンターは、レーザーによる選択的な金属粉末の溶融凝固を繰り返すことで、任意形状を持つ3次元の構造物を作製できる手法として知られてきました。今回、研究グループは、5種類の純金属粉末を同時に溶融し、金属3Dプリンターの特徴である極めて高い冷却速度(最大107度/毎秒)を駆使した超急冷凝固を適用することで、構成元素が互いに固溶した均一なハイエントロピー合金を作製することに成功しました。同時に、金属が凝固する時の熱流の方向を制御することで、低ヤング率(柔らかい)方位である<100>を優先配向化することにも成功しました。また、金属3Dプリンターで作製されたハイエントロピー合金は、高い降伏応力(高強度)と低いヤング率を示す通常とは反する特性を発現することを見いだしました。
    本成果により、金属3Dプリンターの新たな活用方法として、純金属粉末を出発材料とした「合金化—組織制御—形状作製」による「ワンプロセス」での金属材料の機能性制御指針を提案し、従来の金属材料の製造プロセスを一新することで、生産のリードタイムや製造コストの削減に寄与することが期待されます。
    本研究成果は2025年3月11日(火)(日本時間)、Elsevier発刊の材料学トップジャーナルの「Materials&Design」に公開されました。

    本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST[ナノ力学]革新的力学機能材料の創出に向けたナノスケール動的挙動と力学特性機構の解明(研究総括:伊藤 耕三)での「カスタム力学機能制御学の構築~階層化異方性骨組織に学ぶ~」(研究代表者:中野 貴由)(課題番号:JPMJCR2194)の一環として行われました。


    <プレスリリース資料>

    本文PDF(1.24MB)

    <論文タイトル>

    “In-situ alloying of nonequiatomic TiNbMoTaW refractory bio-high entropy alloy via laser powder bed fusion: Achieving suppressed microsegregation and texture formation”


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