有機半導体における電子相関の発達を初めて観測~電子相関発現のメカニズム解明と量子エレクトロニクスの発展に貢献~(JST)

2025.4.14更新

ポイント

  • 有機半導体に高密度に電荷を注入していくと、絶縁体から金属に転移し、さらに電子相関効果が発達していく様子を初めて観測しました。
  • これまで電子相関の影響は導体(銅酸化物や有機導体など)を中心に調べられてきましたが、今回、有機半導体でも電荷注入によって電子相関効果が発現することを見いだしました。
  • 現代物理学の中心的課題であり続ける電子相関発現のメカニズム解明に大きく貢献し、量子エレクトロニクス応用にも役立つことが期待されます。
  • <概要>

    東京大学 大学院新領域創成科学研究科の竹谷 純一 教授、筑波大学 数理物質系の石井 宏幸 教授、東京科学大学 物質理工学院の岡本 敏宏 教授らの共同研究グループは、有機半導体に電荷キャリアを高密度に注入していくと、金属転移後、さらに電子相関効果が発達していく様子を世界で初めて明らかにしました。
    電子相関効果の理解は、現代物性物理学の中心課題の1つです。これまで電子相関効果は、分子1個あたり電荷キャリアが1個存在する有機導体などを中心に調べられてきました。本研究では元々電荷キャリアを持たない単結晶有機半導体に、今までにない高密度な電荷キャリア(4分子あたり1個の電荷キャリア)を注入(ドーピング)することに成功しました。そして金属転移後、電子相関効果が発達していく様子を世界で初めて観測しました。本成果は今後、電子相関発現のメカニズム解明に大きく貢献し、量子エレクトロニクスや高温超伝導への応用にも役立つことが期待されます。
    本研究成果は、2025年4月10日付(英国夏時間)で「Nature Communications」に掲載されます。

    本研究は、JST CREST「電子閉じ込め分子の二次元結晶と汎用量子デバイスの開発(課題番号:JPMJCR21O3)」、科研費「有機半導体二次元電子ガスの電子相制御と量子エレクトロニクス(課題番号:22H04959)」、「階層的準粒子の先端計測による可知化と分子材料研究の変革(課題番号:23H05461)」、「材料・理論・物性研究の融合による有機半導体の学理開拓(課題番号:24H00472)」の支援により実施されました。


    <プレスリリース資料>

    本文PDF(593KB)


    <論文タイトル>

    “Evolution of electronic correlation in highly doped organic two-dimensional hole gas”
    DOI:10.1038/s41467-025-58215-5


    最新のEMC関連規格動向は『月刊EMC』にて随時掲載しています。


    Copyright(C) Kagakujyoho shuppan Co., Ltd. All rights reserved.
    ※記事の無断転用を禁じます。