鉄系超伝導体を用いて強磁場下で超伝導ダイオード効果を観測~ボルテックスに由来する整流効果の仕組みを解明~(JST)
ポイント
<概要>
大阪大学 大学院理学研究科の小林 友祐さん(当時 博士前期課程2年)、塩貝 純一 准教授、松野 丈夫 教授、東北大学 金属材料研究所の野島 勉 准教授らの共同研究グループは、鉄系超伝導体のひとつであるセレン化・テルル化鉄Fe(Se,Te)を用いることで、数~十数テスラの強磁場において、超伝導ダイオード効果を示す超伝導素子を実現しました。
Fe(Se,Te)は、母物質であるFeSeと比較して高い超伝導臨界パラメーターと強いスピン軌道相互作用を示すことが知られていますが、これまで本物質のこれらの特徴を生かした超伝導ダイオード効果の報告例はありませんでした。本素子の実現によって、ダイオード特性の広範囲な磁場・温度依存性を明らかにするとともに、この超伝導ダイオード効果の起源が、スピン軌道相互作用によって非対称化されたボルテックス(超伝導量子化渦)のピン止め効果によることを突き止めました。
これらの研究成果によって、これまでさまざまな超伝導物質で報告されている超伝導ダイオード効果についての理解が進むだけでなく、磁場や温度揺らぎに強い超伝導素子の開発への展開が期待されます。
本研究成果は、英国科学誌「Communications Physics」に、2025年5月12日(月)(日本時間)に公開されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR21A8)の一環として行われました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
“A scaling relation of vortex-induced rectification effects in a superconducting thin-film heterostructure”
DOI:10.1038/s42005-025-02118-w
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