もつれ合うプラズマの渦と流れを『情報』で読み解く~量子情報理論にヒントを得た乱流構造の解析手法~(JST)
<概要>
私たちの身の回りから宇宙に至るまで、流れや渦が複雑にもつれ合う「乱流」は、自然界のさまざまな現象に関わっています。中でも超高温の核融合プラズマでは、密度や温度、磁場のような複数の物理量の揺らぎが入り混じって連動し、非常に複雑な乱流が発生します。
自然科学研究機構 核融合科学研究所の彌冨 豪 特任研究員(論文投稿時は総合研究大学院大学 大学院生)、駒澤大学の仲田 資季 准教授(兼、理化学研究所 数理創造研究センター 数理基礎部門 客員研究員)の研究チームは、量子力学の理論で活用される情報量(情報エントロピー)やその数学的記述法に着想を得て、「情報量の視点」で乱流の状態遷移や相互作用を読み解く新しい解析手法を考案しました。これにより、従来のエネルギー解析では見逃されていたプラズマ中の新たな乱流状態の発見や、大小さまざまな渦や流れの間の重要な相互作用の検出などが可能になりました。また、乱流や揺らぎを観測する実験計測への応用も提案しています。
今後はプラズマ乱流のみならず、大気・海洋・社会システムなど、さまざまな“複雑な流れ”や“多数の物理量が連動する揺らぎ”が存在する研究対象への応用展開も期待されます。
本研究成果をまとめた論文が米国の科学雑誌「Physical Review Research」に採択され、2025年6月2日(現地時間)にオープンアクセス論文として公開されます。本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業(学術変革領域研究(A)「タンパク質機能のポテンシャルを解放する生成的デザイン学」における「ロドプシンの機能発現メカニズムの統合的理解と機能向上(研究代表者:井上 圭一、課題番号:JP24H02268)」)、学術変革領域研究(A)「分子サイバネティクス―化学の力によるミニマル人工脳の構築」における「微生物ロドプシンを用いた光による人工細胞への高速刺激入力法の開発(研究代表者:井上 圭一、課題番号:JP23H04404)」、特別推進研究「光遺伝学を支えるロドプシンの作動メカニズムの解明(研究代表者:神取 秀樹、課題番号: JP21H04969)」、および科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「データ駆動・AI駆動を中心としたデジタルトランスフォーメーションによる生命科学研究の革新(研究総括:岡田 康志)」における「AIが先導するオートメーションタンパク質工学の創出(研究代表者:井上 圭一、課題番号:JPMJCR22N2)」、CREST「光の特性を活用した生命機能の時空間制御技術の開発と応用(研究総括:影山 龍一郎)」における「細胞内二次メッセンジャーの光操作開発と応用(研究代表者:神取 秀樹、課題番号:JPMJCR1753)」、文部科学省・学際領域展開ハブ形成プログラム・マルチスケール量子-古典インターフェース研究コンソーシアム(課題番号:JPMXP1323015482)、AMED「創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業」および「革新的先端研究開発支援事業インキュベートタイプ」の一環として、放射光施設などの大型施設の外部開放を行うことで優れたライフサイエンス研究の成果を医薬品等の実用化につなげることを目的とした「創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)(研究代表者:濡木 理、課題番号:JP22ama121012)」による支援を受けて行われました。
本研究は、科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「複雑な流動・輸送現象の解明・予測・制御に向けた新しい流体科学」における研究課題「数理融合で拓く乱流場中の自発的秩序構造形成の活性化と輸送制御(研究代表者:仲田 資季 No.JPMJPR21O7)」、SOKENDAI特別研究員制度(彌冨 豪 No.JPMJFS2136)および核融合科学研究所一般共同研究(No.NIFS23KIST039、No.NIFS23KIST044)による支援を受けました。
<プレスリリース資料>
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