1.スマートグリッドが進められた背景

先進諸国の人口増などによる明確な需要増への対応として建設されてきた電力インフラなどの社会的なインフラ設備は、建設から多くの時間が過ぎ、老朽化が進み、メンテナンス及び更新の必要性が課題とされていた。

一方で、ICT(Information and Communication Technology)は固定通信から無線通信へと移り変わり、欲しい情報が個々人一人一人の端末に行き届くまでにインフラが整備され、コンピュータを結ぶ通信技術は身近な技術として進展してきた。

また、地球温暖化などの課題に対して、環境負荷低減の意識が世界的に広がりをみせ、国レベルから個人レベルまでエネルギーの効率的な利用を目指す動きが広がり、新しい地球のあり方として、IBM 等がSmarter Planetなど、ICT を利用して、よりエネルギー効率の高い、より便利な社会の概念が提唱され、ICT をさまざまな社会インフラへ適用する動きが進んできている。
欧米などで、ICT 利用が進んでいなく、相互に接続する必要性が高く、エネルギー効率の改善効果が高いと予想された電力インフラへのICT 利用を社会的インフラの中で先行して、スマートグリッドとして検討が進められたと考えられる。

2.スマートグリッドの概要

2008 年に発表されたNIST のスマートグリッドのコンセプトモデルを図1 に示す。

NISTのスマートグリッドのコンセプトモデル

これまでの電力事業者の発電(Generation)、送電(Transmission)、配電(Distribution)、顧客(Customer) への電力のつながりが、点線で示されており、それらのステークホルダへ相互に電気通信サービス(Service Communication flows) が結ばれている。
また新たに、市場(Market)、運用者(Operators)、サービス提供者(Service Provider)を設け、それらとも相互に情報を結び、需給対応や効率化などを進めるコンセプトになっていることがわかる。

このような多くのステークホルダや、機器を相互につなぐには、2008 年以降、相互運用性(interoperability) が必要とされ、共通する技術として、セキュリティや、EMC等の検討が進められてきた。

当初のコンセプトモデルでは、例えば、発電システム、配電システムそれぞれに運用性が存在し、全体としての運用性があり、コンポーネントレベルから、ビジネスレベルまで、運用に対する概念も違うことから、検討を進めるにあたり、相互の関係性を捉えることが難しいという問題があったが、現在では、CEN-CENELEC-ETSI の合同標準化団体が規定したスマートグリッド標準化のためのモデルフレームワークを用いてより細かく理解が可能な概念となっている。
NIST も、現在では、このモデルフレームワークを利用している。たとえば、スマートグリッドを代表する機器であるスマートメータ(AMI :advanced metering infrastructure) のセンサ間の通信など機器を結ぶM2M技術などもこのフレームワークに当てはめることができ、通信プロトコルや、データモデルなどの検討が進んできた。

またNIST のフレームワーク3.0が完成したころから、GE 等のインダストリアルインターネットや、ドイツ政府が進める、Industry 4.0 等、工場生産やサービスでの通信利用や IoT(Internet of Things、CPS(Cyber Physical System)など、社会インフラをはじめとするあらゆるものの通信利用の一部として、スマートグリッドが捉えられるようになってきている。