落雷を発生させない高度情報化社会の雷対策dinnteco避雷針の効果と特徴

1.IT時代に求められる雷対策

近年、IT機器やデータが重要になってきており、雷対策も建物から電子機器へと変わってきた。
しかし従来型雷対策である雷電流をひきつけ安全に大地に流すやり方では、建物は守れても電子機器や重要なデータを守ることはできない。
IT時代の雷対策は落雷を発生させないことが望ましい。
ここで説明する落雷を発生させない本避雷針は、避雷針がコンデンサのような形になっており、電荷の移動により避雷針内部が充電され放電を繰り返す事で、電荷が中和されステップトリーダーの進展がずれやすくなり、落雷現象が起こりづらくなる。
従来型避雷針では、建物の避雷針に落雷があると建物の躯体全体に一瞬にして数万アンペアという電流が流れ建物内に磁界ができる。そして電磁誘導によってその線に起電力が生じ大きな電流が流れることとなり、建物内にあるIT機器を破壊する。IOT、AI、ロボット、ビックデータ、在宅勤務、遠隔操作、無人化などIT機器は現代の社会に必要不可欠になってきている。しかし(図1)に示すようにIT機器が小型化し重要性を増すとともに、雷サージなどの耐電圧に弱くなってきている。

[図1] IT機器の発達と小型化と雷被害の増大
[図1] IT機器の発達と小型化と雷被害の増大

2.高電圧放電試験による従来型避雷針と本避雷針の違い

(図2)は従来型避雷針であるフランクリンロッドをフランスの雷規格であるNFC17-102による高電圧放電試験である。

[図2]従来型避雷針の高電圧放電試験
[図2]従来型避雷針の高電圧放電試験

(図3)は従来型避雷針の高電圧放電試験において雷雲プレートにインパルス発生器で高電圧をかけた波形である。

[図3]雷雲プレートの電圧波形(従来型避雷針)
[図3]雷雲プレートの電圧波形(従来型避雷針)

A時点は落雷直前の電圧分布である。(図4)に示すように雷雲プレートを中心して電圧が高くなっている。
絶縁破壊寸前の状態である。

[図4]A時点での電位分布(従来型避雷針)
[図4]A時点での電位分布(従来型避雷針)

(図5)が示すように従来型の先端に電荷が集中している。

[図5]A時点での電荷の存在によって生じるベクトルの場分布(従来型避雷針)
[図5]A時点での電荷の存在によって生じるベクトルの場分布(従来型避雷針)

絶縁破壊し落雷(放電)し大電流が流れるとともに電圧がなくなるのを示したものがB時点はである。
(図6)はB時点における落雷(放電)した瞬間の画像である。

[図6]B時点での落雷(放電)現象
[図6]B時点での落雷(放電)現象

一方(図7)は本避雷針の高電圧放電試験である。

[図7]本避雷針の高電圧放電試験
[図7]本避雷針の高電圧放電試験

(図8) は本避雷針の高電圧放電試験において雷雲プレートにインパルス発生器で高電圧をかけた波形である。
電圧が雷雲プレートと本避雷針の絶縁破壊電圧に達していないが、新型避雷針内部で放電が始まるのがC時点である。

[図8]雷雲プレートの電圧波形(本避雷針)
[図8]雷雲プレートの電圧波形(本避雷針)

(図9)に示すようにC時点で雷雲プレートの電圧が高くなっていない。

[図9] C時点での電位
[図9] C時点での電位

図10が示すように電荷の移動により避雷針内部が充電された状態である。

[図10]電荷の移動により避雷針内部が充電された状態
[図10]電荷の移動により避雷針内部が充電された状態

その結果新型避雷針内部で放電がおこり、電荷が中和される。その結果雷雲プレートと本避雷針で電位差がなくなり放電がおきない、これが落雷を発生させない避雷針の原理であると仮説を立てている。

本避雷針内部で放電がおこり、電荷が中和されることにより漏れ電流が発生する。
漏れ電流が発生することを検証することが、本避雷針が機能していると仮説を立て実証実験を行っている。

3.実証実験による漏れ電流計測

冬季雷多発地帯である白山市後高山の山頂に本避雷針を設置した。(図11)

[図11]白山市後高山の山頂に設置した本避雷針実験
[図11]白山市後高山の山頂に設置した本避雷針実験

本避雷針に専用のμA電流測定装置を取り付け、避雷針内部で放電し、電荷が中和するときに発生する漏れ電流の計測を行うとともにカメラの設置も行うことで実際に落雷が発生するかどうかを監視した。(図12)

[図12]新型避雷針による漏れ電流計測仕様
[図12]新型避雷針による漏れ電流計測仕様

気象衛星データと落雷カウンターのデータも活用し、詳細に分析を行ったところ、雷雲発生時には漏れ電流が記録されており、本避雷針内部で放電し電荷が中和されていることが証明された。
(図13)は2022/7/26 24時間の50km圏内への落雷と漏れ電流の関係である。

[図13]後高山雷雲発生時漏れ電流計測(計測範囲:50km 計測時間:24時間)
[図13]後高山雷雲発生時漏れ電流計測(計測範囲:50km 計測時間:24時間)
[図14]後高山雷雲発生時漏れ電流計測(計測範囲:5km 計測時間:2時間)
[図14]後高山雷雲発生時漏れ電流計測(計測範囲:5km 計測時間:2時間)

(図14)はさらに細かく2022/7/26 13:00~15:00までの5km圏内への落雷である。

4.本避雷針取付前と後の比較

本避雷針取付前は山梨県某大型スポーツ公園の1km圏内にも落雷が多発しており、広大な敷地内に多数のスポーツ施設が建ち並び過去に直撃雷被害が発生している。(図15)

公園に本避雷針30基を設置した。(図16)

[図15] 山梨県某大型スポーツ公園における本避雷針取付前の落雷状況
[図15] 山梨県某大型スポーツ公園における本避雷針取付前の落雷状況
[図16]照明塔に取り付けた本避雷針
[図16]照明塔に取り付けた本避雷針
[図17] 山梨県某大型スポーツ公園における本避雷針取付後の落雷状況
[図17] 山梨県某大型スポーツ公園における本避雷針取付後の落雷状況
[図18] 雷活動度と落雷データ
[図18] 雷活動度と落雷データ
[図19]本避雷針設置前後の平均値グラフ
[図19]本避雷針設置前後の平均値グラフ

気象衛星データや落雷カウンターにより公園内の落雷発生頻度を測定し、避雷針設置前後での比較を行った。
(図17,図18,図19)
① 本避雷針30基分の設置座標を抽出
② 設置前後6年間分の気象データを入手
③ 本避雷針を中心とした5km以内での落雷をマーキング(これを30基分行う)
④ 本避雷針からの距離に応じた落雷数を年ごとに比較このデータ分析の結果、本避雷針から100m以内において顕著な違いが見られ、面積当たりの正規化落雷数の平均値は、設置後の方が少ないことがわかった。(図19)また本避雷針設置後の3年間の間に直撃雷被害は発生していない。

5.まとめ

冬季雷多発地域や実際に直撃雷被害が発生した地域で実証実験を行った結果、本避雷針が直撃雷の発生頻度を減少させ、被害を軽減することが確認された。しかし、落雷被害の中には、直撃雷ではなく誘導雷が原因であるものも多数ある。誘導雷とは付近への落雷が原因で通信線や電線などにつながれている電子機器を故障させる恐れがある。誘導雷は避雷針で防ぐことができず、SPDが必要だ。そのため避雷針とSPDを併用することで、より効果的な落雷対策可能となる。このような対策は建物内部の電子機器やシステムを保護するために非常に重要であり、落雷による被害を最小限に抑えることができる。
本研究では本避雷針による直撃雷被害の低減効果について詳細に検証を行った。今後も本避雷針による直撃雷対策研究を進め、国土強靭化に向けた取り組みを継続的に推進していく。

参考文献

  1. TESTS PERFORMED USING THE EXPERIMENTAL APPARATUS OF THE STANDARD NF C 17-100
  2. TEST REPORT 2017 05 3D 0207 / A
  3. METEORAGE REMOTE COUNTER GLD
  4. 金沢 ⚡️フランクリン・ジャパン 
  5. フランクリンジャパン 落雷解析データ
  6. 気象庁 雷活動度(雷ナウキャスト)
  7. CMSOL Multiphysics 6.1 AC/DC モジュール プラズマモジュール
  8. Google Earth Pro
  9. 三菱電機株式会社 系統変電システム製作所 設備画像
  10. (株)イメージワン カタログ
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