1.自動定電圧装置とは

自動定電圧装置とは、定電圧出力のものと定電流出力のものからなる安定化電源の一つで、電圧を自動的に一定に保つ自動電圧調整器(Automatic Voltage Regulator)(自動定電圧装置[Automatic Constant Voltage Regulator]・回路安定器[Circuit Stabilizer]等とも呼ばれる)であり、これらを総称して通常、AVRと略称されることが多い。また、安定化電源電源は入出力間の電力変換の形式によって交流-交流、交流-直流、直流-交流、直流-直流に分類されるが、ここでは主に交流-交流の形式の自動定電圧装置について述べる。
自動定電圧装置の目的は、電力の供給源とその負荷となる機器の間に接続し、供給源からの電圧を一定に自動調整することで安定した電力を機器に供給すると同時に、機器を他の電気的外乱による電源トラブルから守り、安全かつ最良な状態で動作させることである。自動定電圧装置は、医療施設、工場、情報通信機器や研究施設など、幅広い分野で使用されている。

2.自動定電圧装置の種類

自動定電圧装置にはいくつかの種類がある。以下に主な種類の特徴を述べる。

2-1.スライドトランス方式

出力電圧の変化を検出して基準電圧と比較し、誤差を増幅してサーボモータへ送り、スライドトランスの摺動子を動かすことで出力電圧を一定に保つ方式である。
この方式は効率が良いのが特徴である。デメリットとしては機械的な動作を伴うがゆえに、応答速度が遅い、摺動子の寿命が短く信頼性が低い等が挙げられる。また、波形ひずみの補正はできない。

2-2.タップ切換方式

出力電圧の変化を検出して基準電圧と比較し、誤差を増幅してトランスのタップを半導体スイッチ(サイリスタやトライアック等)で切り換えることで出力電圧を定格に近い状態に保つ方式である。
この方式は効率がよく、スライドトランス方式と比較して機械的動作がないため、壊れにくく信頼性が高いのが特徴である。デメリットは、段階的な電圧調整となるため精度を高めるにはタップ数が多くなる、波形ひずみは補正できない等が挙げられる。

2-3.並列共振方式

可飽和リアクトル(またはサイリスタ)とコンデンサで並列共振回路を形成し、出力電圧の変化を検出してその偏差を可飽和リアクトルに送って変化させることで出力電圧を一定に保つ方式である。
この方式は効率が良い、ノイズが発生しない、機械的動作がないので壊れにくく信頼性が高いことが特徴である。デメリットは大きく、重いことが挙げられる。

2-4.リニアアンプ方式

入力電圧を直流に変換してリニアアンプに供給後、基準正弦波に対し不要な部分を消費させて必要な正弦波を出力する方式である。
この方式は応答が早い、波形ひずみがない、ノイズが発生しない、比較的小さく、軽く製作できるのが特徴である。また、周波数も可変可能である。デメリットは、効率が悪いことが挙げられる。

2-5.インバータ方式

入力電圧を直流に変換してスイッチング素子と制御回路で正弦波を作り出し、それを出力する方式である。
この方式は効率が良い、応答が早い、波形ひずみがない、比較的小さく、軽く製作できるのが特徴である。また、周波数も可変可能である。デメリットは、ノイズが発生することが挙げられる。

これらの特徴を理解し、適切なものを選定するのであるが、同時に電源トラブルを引き起こす電気的外乱についてもよく知っておく必要がある。次項に主な電気的外乱の種類について述べる。

3.電気的外乱の種類

電源系統に存在する電気的外乱は、おおよそ以下の4つに分類される。

3-1.高周波ノイズ

高い周波数(10kHz以上の周波数を呼ぶことが多い)の不要・有害な成分(図1)。

図1 高周波ノイズ
図1 高周波ノイズ

発生源例:スイッチング電源内にある半導体素子、リレー

機器の誤動作や故障等のノイズ障害は、機器にとって非常に怖い電源トラブルの一つである。特に、放射しやすい数十MHzを超える成分を含む高周波ノイズは、電源線等から筐体内に侵入すると拡散して様々な障害を引き起こす。

3-2.高調波

基本波の整数倍の周波数成分(一般的に40次までの周波数)で、基本波に重畳し、波形を歪ませる原因となるもの(図2)。

図2 高調波
図2 高調波

発生源例:コンデンサインプット型整流回路、サイリスタ位相制御

例えば高調波電圧が重畳することで、実効値は同じでもピーク値が突出したり低下したりして、機器が正常に動作するための電圧値に対し、過電圧もしくは不足電圧となり、機器の誤動作や故障を招く。

3-3.電圧変動

基本波そのものの揺れ動き(図3、図4)。

図3 緩やかな変動
図3 緩やかな変動
図4 急変(サージ・サグ)
図4 急変(サージ・サグ)

発生源例:大きな電力を要する設備の起動・停止

一つの電力系統において、複数の機器を動作させる場合、瞬間的に大きな電力を取り込む機器の起動・停止時に伴い、一時的な電圧低下(サグ)、電圧上昇(サージ)が発生し、他の機器の誤動作、故障を起こす場合がある。

3-4.停電

電力の供給が途絶えること(図5、図6)。

図5 停電
図5 停電
図6 瞬時電圧低下(瞬低)
図6 瞬時電圧低下(瞬低)

発生源例:落雷による系統切替、短絡事故

発電・変電設備の品質が向上した現在でも、落雷による停電が大半を占める。落雷発生時に瞬間的な電圧低下を招く瞬低でも、機器の異常停止や誤動作を起こすこともある。

4.電気的外乱の防止に必要な機能

3.で述べた4つの電気的外乱を防止するために、自動定電圧装置に必要な機能は次のとおりである。

4-1.ノイズ遮断能力を備えていること

近年、高周波ノイズによるトラブルは確実に増えており、これを防止する性能は特に強く求められてきている。インバータのように交流を一度直流に変換し、新たに交流を発生させる方式の電源でも、それ自身で外来の高周波ノイズを防ぐことはできない。
機器をノイズから守る電源として必ず備えなければならない条件を以下に挙げる。

① 1次(入力)側と2次(出力)側とが互いに分離絶縁されていて高周波ノイズが遮断できるものであること

② 機器のグランドと確実に接続できるグランドが設けてあること

③ 電源自身もよいシールド構造を持ち、出力側をシールドしたまま機器に接続できる構造であること

④ 電源自身がノイズを出さないこと、ノイズの影響を受けないこと

4-2.過渡特性がよく、瞬時の電圧変動を抑制できること

できる限り過渡応答が速く、入力側に起こった急変を出力側で速やかに整定できるものがよい。

4-3.波形を整え、正弦波を出力できること

高調波によって歪んだ波形や半導体素子のスイッチングによって欠けた電圧波形を正弦波に整え、非線形負荷においても波形が歪まないものがよい。

4-4.ごく短時間の瞬停ならば途切れずに給電できること

長時間の停電の場合はバッテリと組み合わせたUPS等でなければ電力を供給し続けることはできないが、ごく短時間の、例えば1/4サイクル以下であればバッテリがなくとも対応できる方がよい。

4-5.力率、効率がよいこと

自動定電圧装置の選定においてはイニシャルコストに注目しがちだが、長期の運用を考えれば、ランニングコストも重要である。効率の良い省エネルギー型で、負荷の力率が変化してもそれに対応して自身の力率を1に近い値に自動調整できるものがよい。

4-6.メンテナンスの手間が少ないこと

ランニングコストを考えた場合、故障が少なく、メンテナンスの手間ができるだけ少ない方がよい。長期間出力電圧精度が安定していることも重要である。

(著)株式会社電研精機研究所

ノイズ対策部品・EMC対策部品一覧自動定電圧装置

自動定電圧装置の製品一覧ページです。
自動定電圧装置をお探しの方は、下記の一覧よりご選定ください。
各製品の見積もり・問合せも各製品ページより行って頂けます。
尚、サービスと致しまして各EMC関連製品の見積もり・お問合せを行って頂くことで月刊EMCを無料購読できます。

<ノイズ対策部品・EMC対策部品 検索ページ>

EMC関連製品検索ページはこちらになります。

<『自動定電圧装置』の項目一覧>

『自動定電圧装置』に関して下記の項目で比較検討が可能です。

メーカ名/取扱店/型名/シリーズ/商品名・通称/方式/定格入力電圧 V/入力変動許容範囲 %/定格入力周波数 Hz/入力周波数変動許容範囲 Hz/定格出力電圧 V/出力容量 kVA/出力電圧安定精度 %/出力電圧微調整範囲 %/出力周波数 Hz/出力電圧波形歪率 %/負荷変動許容範囲 % START/負荷変動許容範囲 % END/効率 %/力率/過渡応答速度 秒 START/過渡応答速度 秒 END/サージ・サグ抑制/高調波抑制/ラインノイズ減衰率 dB/絶縁耐電圧 V/絶縁抵抗 MΩ/動作周囲温度 ℃ START/動作周囲温度 ℃ END/動作周囲湿度 % START/動作周囲湿度 % END

CENDではノイズ対策部品・EMC対策部品を含めた各EMC関連製品毎の仕様フォーマットを統一することにより、比較・選定を簡単に行うことができます。
「メーカー名」はもちろん、「取扱い企業」や「型名」、「シリーズ」、「用途」、「サイズ」、「適応規格」、「種別」、などの細かい製品仕様情報を掲載しています。
また、見積もりや問い合わせなどもCENDからダイレクトに行えますので、個別に各企業HPを訪問し個別に見積もりを取る手間も省くことが可能です。
尚、CENDの掲載製品情報は日々更新されておりますので定期的な閲覧を推奨致します。
ノイズ対策部品・EMC対策部品の検索・選定はぜひCENDをご利用下さい。

<EMC関連製品に関してユーザー様へCENDが提供する主なサービス>

  • 各EMC製品をカテゴリ毎(製品種別毎)に検索可能なデータベースのご提供
  • 各EMC製品の詳細な仕様を統一フォーマットでご提供
  • 各EMC製品の見積もりをCENDから依頼可能
  • 各EMC製品に関する問い合わせを送信可能
  • EMC製品に関わる規格情報のご提供
  • EMCに関しての質問を知恵袋で解決可能

※製品掲載をご希望の企業様はこちらよりご連絡下さい。