誘導雷サージ対策に用いられる電源用SPD(サージプロテクトデバイス)

1.SPDとは何か

SPDとは雷によって障害が起こることを防ぐ避雷器のことで、サージプロテクトデバイス(Surge protective device)の略です。電源のサージ対策に幅広く使用されているバリスタは仕様を大幅にこえる雷サージ電流や、最大許容回路電圧を超える過電圧・過電流が通電されると短絡故障モードに移行し、発煙発火の恐れがある潜在的リスクを抱えている。

これに対して、IEC/EN61643-11(JIS C 5381-11)規格認証取得の雷サージ対策製品(以下、SPDとする)は、大幅に超える雷サージ電流や過電圧過電流によってSPDが短絡故障に至る前に主幹システムから安全に切り離してSPDの故障状態を明確に伝達できる仕組み(分離機能)を持つことが必項となり、SPD故障時の安全性の仕様が強化されている。

2-1.電源用SPDの種類

電源用SPDは、以下クラスⅠ、Ⅱ、Ⅲに分類されている。

  • 電力引き込み口に設置でき、直撃雷の雷電流に対応できるクラスI試験対応品
  • 分電盤・制御盤に設置でき、誘導雷の雷電流に対応できるクラスII試験対応品
  • 機器内蔵ができ、印加電圧波形(1.2/50μs)と短絡電流波形(8/20μs)が同時に規定されるコンビネーション波形によるクラスIII試験対応品

また、SPD故障時の性能である分離機能の種類としては、故障した時にSPD表示窓から確認できる分離表示機能と、SPDの警報接点信号線で保護装置の警報と組み合わせることでSPD故障時に警報を通知させる分離接点機能とがある。

2-2.電源用SPDの使い方

工作機械、レーザ加工機、ロボット、半導体製造装置、実装機、サーボアンプ等の産業用機器には、クラスIIまたはクラスIII対応の電源用SPDを外付けで、図.1のように接続することで対策ができる。

図.1 電源用SPDの外付け使用事例
図.1 電源用SPDの外付け使用事例

海外向けにはUL/cUL,、IEC/EN等を取得した海外安全規格適合品を選定する必要がある。さらに米国向け産業用機器に関しては、米国産業機器の電気規格NFPA79 2018年度版が更新されたことで安全制御回路を持つ産業機器にはSPDの設置が義務化された。とくに産業機器に内蔵されない制御盤に関しては、UL1449(SPD部品規格)のなかで定義されたType2(UL-Listed)、またはType2CA(UL-Recognized)を認証したSPDの使用が必要条件となってきている。

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3-1.基板実装によるAC電源用SPDの種類

基板実装での電源用SPDはバリスタ(MOV)が主である。対接地間にはガス入り放電管(GDT)をMOVと組み合わせて使用されることが多い。

3-2.基板実装によるAC電源用SPDの使い方

エアコン、冷蔵庫、洗濯機や屋外LED照明のように接地を含む電子機器におけるAC電源の雷サージ対策は対地間(L-G)にMOVとGDTを直列接続することで対地間15kVのような高いサージ電圧にも防護が可能となる。(図.2)

GDTは漏れ電流が小さいのでAC耐電圧試験対応GDTを使用することにより、電源機器のAC耐電圧試験を行う際にサージ対策部品を外さずに対応することができるというメリットもある。(表.1)

しかしながらその反面、GDT+MOVの雷サージ抑制電圧が高くなるため、後段の回路に影響がないことを雷サージ試験検証にて確認することが必要である。

AC電源機器にCE認証や他の海外安全規格認証が必要な場合には、MOV、GDTともにIEC/EN規格認証品を使用することが必要である。

基板設計の際には電源線の入り口に配置し、接地線(FG)までのパターン経路長をできうる限り短くすることが望ましく、SPDの周辺には半導体部品や制御回路を近接させずに距離を置くことが必要である。雷サージ電流が流れるパターン経路長の長い場合や、周辺に半導体部品や制御回路が近接するような場合には、瞬間的に大電流が通電するため強い電磁波を発し、半導体部品の破壊や誤動作につながる要因になるので注意が必要である。

図.2 AC電源における雷サージ対策回路
図.2 AC電源における雷サージ対策回路
表1.GDTとMOVの選定
電源電圧 AC耐電圧試験 バリスタ電圧 直流放電開始電圧
class="w-20"MOV(L-L) MOV(L-G) GDT(L-G)
125VAC AC1,000V 220~270V 220~270V 2,400V / 2,700V
250VAC AC1,500V 470~680V 470V 3,000V
AC1,800V 3,600V
AC2,000V 4,000V

4.製品写真

写真.1写真.1 電源用SPD
写真.2写真.2 基板実装によるAC電源用SPD(GDT)
誘導雷サージ対策に用いられる通信・信号回線用SPD(サージプロテクトデバイス)

1.通信・信号回線用SPDとは

通信・信号回線には様々な種類が存在し、接続する形態、通信回線数、ならびに通信回線電圧と通信速度に適合した雷サージ対策製品(以下、SPDとする)を選定する必要がある。

2.通信・信号用SPDの種類と監視カメラを例とした使い方

(1)LAN用SPD

LAN回線の雷サージ対策に対してはLAN用SPDを選定する。LAN用SPDには接地が必要な放流型LAN用SPDと、接地が不要な絶縁型LAN用SPDの2種類が存在する。

セキュリティ目的でネットワークカメラによる監視カメラの設置が増加し、PoE(Power over Ethernet)あるいはPoE Plusによる電力給電が可能なLAN回線の使用頻度が高まるなか、PoE/PoE PLUSでは原則、放流型LAN用SPDを選定する。絶縁型LAN用SPDは、PoE/PoE Plusでは電気を絶縁するために使用はできない。

PCに接続するPoE非対応のLAN回線の場合には、絶縁型LAN用SPDにて使用することが効果的である。いずれも10BASE-T、100BASE-T、1000BASE-Tに対応可能である。

図.1はネットワークカメラにおけるLAN用SPDの使用事例である。ネットワークカメラと監視センター間を繋ぐLAN回線の距離が長い場合は、その両側の被保護機器の直近にLAN用SPDを接続して対策するのが効果的である。

図.1
図.1 ネットワークカメラにおけるLAN用SPDの使用事例

(2)RS-485通信用SPD、接点信号用SPD、LED調光信号用SPD

2線式RS-485通信線には、485通信用SPDを選定する。接点信号線やLED調光信号線に関しては、それぞれ回線電圧に対応した信号用SPDを選定する。

(3)同軸用SPD

高精細な画質と暗い環境下でも監視可能なHD-SDIカメラやHD-TVIなどのアナログHDカメラの場合には映像同軸線、接点信号線、電源線とケーブルが屋外配線されるため誘導雷サージの被害をうけやすい。

その場合にはカメラ側と監視センター側の両方でそれぞれ同軸用SPD、信号用SPD、電源用SPDを接続して雷サージの対策をする。監視カメラの同軸線に使用する同軸用SPDはBNCコネクタでインピーダンス75Ωの特性を持ち、なおかつHD-SDI方式高画質信号に影響を及ぼさないよう広い周波数帯域が求められる。(図.2)また、同軸用SPDにはアンテナに接続するものも存在する。

図.2
図.2 アナログHDカメラにおけるSPDの使用事例

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3.基板実装による通信・信号回線用SPDの種類と使い方

通信・信号回線では通信用ICが雷サージで壊れることが多いので、サージを可能な限り低い電圧に抑制する性能と、通信伝送に影響を及ぼさないよう低静電容量性能が求められる。

それら両方の性能を満足、実現できる1つの部品は存在しないために静電容量が低いガス入り放電管(GDT)と、制限電圧が低い半導体サージアブソーバーとを組み合わせて使用することが有効となる。

半導体サージアブソーバーには、アバランシブレークダウンダイオード(ABD)やサイリスタサージ防護部品(TSS)がある。ABD、TSSは大きなサージ電流に弱いため、GDTと組合せて対策する方法が望ましく、パイ型回路と称される方法があるので、ここではGDTとABDを用いてGDTとABDの間に抵抗器またはコイルを図.3のように接続することで大きなサージ電流に対しても対応可能な対策を紹介する。

図.3
図.3 通信・信号回線における雷サージ対策回路

この回路の動作原理は、雷サージが侵入すると最初に低電圧で応答するABDが動作する。この時サージ電流が抵抗に流れることで電圧降下が発生してその電圧によってGDTが放電しサージ電流を大地に放流する。

ここでABDのインパルス電流耐量がツェナーダイオードのように小さいとGDTが動作する前にABDがサージ電流で壊れてしまうことがあるため、ABDのインパルス電流耐量の選定と、抵抗器の定格電力と抵抗値の選定が重要となる。

4.製品写真

(1)通信・信号用SPD

写真.1写真.1 LAN用SPD
写真.2写真.2 通信用 SPD、信号用SPD
写真.3写真3 同軸用SPD(BNCコネクタ)

(2)基板実装による通信・信号回線用

写真.4写真.4 GDT
写真.5写真.5 ABD

(著)岡谷電機産業株式会社

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