EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-
平成31年の新年を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
一般財団法人 日本自動車研究所 (JARI:Japan Automobile Research Institute) は、来年50周年を迎えます。JARIとしての執筆は初めてですので、簡単にご紹介だけさせていただきます。弊所は、1969年、財団法人自動車高速試験場を、自動車の総合的な研究を行う組織に改め、財団法人日本自動車研究所として設立されました。2003年、日本電動車両協会ならびに自動車走行電子技術協会と統合。2012年4月1日より一般財団法人日本自動車研究所に移行し、中立的、公益的な活動を維持しつつ、21世紀のクルマ社会のさらなる進展に貢献し、研究・試験業務を行っております。
これからのEMCとの題材ですが、自動車研究所ロボット安全試験センターでは自動車関連のEMC試験はあまり行っておらず、主に生活支援ロボットの安全検証を行っております。生活支援ロボットは、生活の質を向上させる新しい技術として期待されています。しかし、産業用ロボットと異なり、自律動作するロボットが一般の人々に接近して使われるため、安全を確保する技術の確立が急務となっておりました。このため、(独) 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) の「生活支援ロボット実用化プロジェクト」において、安全技術の開発とその検証手法の検討が進められて来ました。また、経済産業省の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」でも、安全検証への取り組みが行われ、その後、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED) の事業として、安全検証への取り組みが進められています。
生活支援ロボットの国際規格で有るISO13482は、3タイプにわかれ、移動作業型、身体アシスト、搭乗型に分類されます。人が搭乗するタイプのロボットは、自動車との境界領域にあり、電子制御技術が大幅に導入された今日では、製品毎に用途、形状、危険事象、使用者、使用場所が異なるため、電動車いすのEMC規格のように、試験手順や定量的判定基準を統一させることが出来ません。具体的なEMC評価手順が有りませんので、例えばNEDO事業での生活支援ロボットの評価では、イミュニティ評価の判定基準を、機能安全のイミュニティ評価での性能判定基準FSを用いる事とし、実証実験前の製品評価を行いました。ロボットが正常に動作するか、安全を確保した上での誤作動や破壊を許容する事とし、作動要求から安全状態に至るまでの時間も評価の対象としました。
また、AMED事業では、移乗型のロボット介護機器などのアームのモーターなどのノイズ発生源が、患者さんの直近に来る場合なども想定し、0cmでのペースメーカへのエミッションの影響を研究し一定の基準を策定しました。
現状でのパーソナルケアロボットのEMC評価は、製品のリスク分析を行いEMC試験計画をたて試験を行う必要が有ります。タイプ別の規格が発行される場合でも、EMCは共通規格または、IEC60601-1-2 (介護ロボットはEUでは医療機器のカテゴリ) を参照とするにとどまり、具体的な試験方法は策定されない事が予想されます。
自動車・ロボットを含め、複合的な電子機器が市場に出まわり、通信・放送などの電波が飛び交う現代では、現状の規格に沿ったEMC試験はもとより、電磁波による製品のリスクを理解してEMC試験を行なって行く事が必要です。
これからも自動車分野で培ってきた安全に関する知見・技術を活用し、生活支援ロボットおよび介護ロボットの普及を促進して、国民の生活の質の向上につながることを目指して参ります。また、安全・安心なロボットの開発・普及をめざし、リスクアセスメントを始めロボットの安全検証についての豊富な知識でお客様の開発をサポート致します。第三者試験機関として自動車分野及びロボット分野の安全性を検証して参りますので、本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。