EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-
新年おめでとうございます。
スマホなどの電子機器や自動車の新製品開発が活発化していることを背景にして環境・エネルギー分野でも磁性材料を用いたノイズ対策技術の重要性が一段と高まってきています。
コイル、コンデンサを基にしたLCフィルタは、そのサイズが0402まで小型化しています。さらに薄膜技術の進展によって複数ラインのノイズ対策を施すことができるアレイタイプが用いられてきています。また、太陽光および風力発電、自動車などのエネルギー、パワーエレクトロニクス分野でのインバーターなどの電源ノイズ対策が不可欠になっています。
国際電気標準会議 (International Electrotechnical Commission, IEC) のTC51 (磁性部品、フェライト及び圧粉磁性材料専門委員会) は、これらのノイズ対策技術動向を踏まえて世界のノイズ規制に適合した国際規格を策定しています。
WG10 (高周波EMC対策磁性材料及び部品) 〔主査:齋藤章彦 (大同特殊鋼)〕 は、主にノイズ抑制シート (NSS: Noise Suppression Sheet) のIEC規格化を進めております。IEC 62333 (Noise Suppression Sheet for digital devices and equipment) では、①基本的な用語の定義、②実際のNSSの使用状況を模擬したノイズ抑制効果の測定方法、③NSSの電磁気的特性に関する内容を規格化しています。2015年は、アプリケーションを模擬した、できるだけ実際のNSSの使用に対応した新しい測定手法を提案して国際規格として発行しました。また、NSSを用いたノイズ抑制のために、設計段階から事前にシミュレーションを行って使用効果を予測したいという強いニーズが従来からありました。そこで、シミュレーションに必要なNSSの電磁気特性、特に、複素比透磁率および複素比誘電率の測定について新たな検討を2016年に開始しました。日本がプロジェクトリーダーとなり、2019年12月を目標にテクニカルレポートを作成することが承認され、次回2019年3月にアメリカで開催される国際会議において活発な審議が出来るよう準備を進めております。
WG9 (インダクティブ部品) 〔主査:東貴博 (村田製作所)〕は、インダクタに関する規格の開発、審議を行っております。2017年12月にIEC 62024-1 (高周波誘導部品-電気的特性及び測定方法-第1部:ナノヘンリー範囲の表面実装インダクタ) 第3版を発行しました。IEC 61007 (トランスとインダクタの測定方法) /IEEE 389 (Dual Logo IEC/IEEE) について,中国をプロジェクトリーダーとしてIEC 61007の改正作業を開始しました。また、日本提案のIEC 62025-2 (高周波インダクタの非電気的特性の試験方法) の改正の委員会原案を発行し、議論を進めています。各メーカのインダクタの定格電流値が正確に比較できることを目指してIEC 62024-2 (DC-DCコンバータ用インダクタの定格電流測定方法) の改正を日本がプロジェクトリーダーとなって計画しています。以上3件の規格について次回2019年3月の国際会議において活発な審議が出来るよう準備しています。
WG1 (フェライト及び圧粉磁心) 〔主査:平塚信之 (埼玉大学)、幹事:安倍健 (TDK)〕 は、主にソフトフェライトに関する規格の開発、審議を行っております。2018年は、ユーザーの利便性を考慮してフェライト磁心の寸法及び外観限度を統合した規格を、6形状 (E、EER、ETD、EC、EP、PQ) について発行しました。その他の形状 (EFD、RM、Pot、Ring、Planar) についても2020年の規格発行に向けて改正作業を進めております。今後はフェライト磁心に関する既存規格の改正を中心に行ないます。さらに、フェライト磁心に次ぐ新しい規格体系として金属圧粉磁心の規格シリーズの開発に積極的に取組んでいきます。金属圧粉磁心の通則及びRing形状の規格の2件については、2020年発行に向けて開発作業に着手しており、次回2019年3月の国際会議において活発な審議が出来るよう準備を進めております。