EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

消費者庁 消費者安全課 事故調査室長
菱田 和己

平成31年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

当室が事務局となっております、消費者安全調査委員会 (以下、「調査委員会」) は、昨年10月に設立から6年が経過し、第4期を迎えました。

この調査委員会は、「事故から教訓を得て、繰り返さない」を常に念頭に置き、責任追及を目的としない、科学的、客観的な事故調査により、生命身体被害に係る消費者事故の原因を究明し、再発防止につなげることを目的とし、平成30年末までに13事案についての報告書等を公表し、関係行政機関に対し、事故の再発防止に向けた取組を推進するよう意見を具申してきました。

以下では、昨年公表した調査報告書のうち、「電動シャッター動作時の事故」についてご紹介します。

調査委員会では、車庫の電動シャッターに挟まれて重傷を負った事故の申出を受け、複数の事故事例について詳細情報を調査するとともに、使用実態ににかかるwebアンケート調査も実施しました。

調査委員会では事故事例を、シャッターカーテンの降下中に被災者が挟まれた事故、シャッターカーテンが落下して被災者が挟まれた事故に分類し、それぞれの類型の原因を調査しました。

その結果、前者は被災者がシャッターカーテンの下にいる状態で、障害物を感知する装置が設置されていない、又は設置されていたものの、何らかの理由により作動せず、シャッターカーテンが降下し続けたために発生しており、後者は急降下停止装置が装備されていない電動シャッターにおいて、点検が十分になされておらず、チェーンが切れたことにより発生していることが明らかとなりました。

使用者へのアンケート調査では、閉動作中のシャッターの下をくぐるという危険な行動をすることが頻繁、又はたまにあるとの回答が半数強あり、開閉中の注意事項を知っていると回答した者と知らなかったと回答した者の間で比較したところ、大きな差異はありませんでした。これは、注意事項に関する知識だけでは、危険な行動の回避にはつながらないということを示しているものと考えられました。

調査委員会では、既設のものについては安全装置等の付加と定期点検の実施、及びリモコンで操作するものについては、シャッターカーテンが意図せず降下することを防止するため、ボタン操作 (停止操作を除く) をツーアクション方式にするなど、その安全性の向上を、また、新設のものについては安全装置の装備の徹底を再発防止策に掲げ、関係省庁に意見しました。

調査委員会では、不幸にも起きてしまった事故の原因究明を行い、関係行政機関に対して再発防止に向けた取組をするよう意見していますが、最終的には、幅広い事故に応用できる普遍性のある知見を引き出し、更にその情報を社会で共有することが重要と考えています。調査委員会の審議状況や報告書等については消費者庁のホームページに掲載されておりますので、是非ご覧ください。

末筆となりましたが、読者の皆様のご健勝と今後のご研究の益々のご発展を祈念して、新年のご挨拶とさせていただきます。