EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

電波環境協議会(EMCC)会長
首都大学東京 名誉教授
福地 一

新年明けましておめでとうございます。日頃の皆様からの電波環境協議会 (以下 「EMCC」 という。) へのご支援、ご協力に対しまして厚く御礼申し上げます。

過去を振り返りますと、50年前の1969年は、人類史上初の月面着陸がなされた年です。ライト兄弟による動力飛行が1903年であることを思い起こすと、きわめて短期間に我々は月に歩を進めたことに驚きを感じます。この背景には、宇宙開発での米ソの熾烈な競争が原動力となっていたことはよく知られており、大きな原動力やニーズが技術の進展に加速度を付与する好例と言えます。同様に、近年の急速な電波利用の高性能化や多様化は、人類が、どのような状況においても、高速・大容量の情報を伝送したい、またエネルギーまでも無線で伝送したいという大きなニーズが原動力となっています。このような電波利用の隆盛に際しては、それぞれの電波利用システムが十分にその性能を発揮するよう電磁環境 (EMC) への配慮が不可欠であり、ますますEMCの重要性が増しています。

時代を今にもどしますと、2019年はWRC-19 (2019年世界無線通信会議) がエジプトで開催されます。WRCでは周波数利用方法等に関する国際的な取決めを規定する無線通信規則について審議がなされます。ここでも5G移動通信、電力無線伝送 (WPT) をはじめとする新たな周波数ルールが議論され、これらの結果をもとにさらなる電波利用の展開が予想されます。

さて、EMCCの2019年度の主要な取り組みのうち、2点について紹介いたします。

第1点目は、妨害波及びイミュニティに関する調査研究の実施です。

EMCCでは、毎年度社会的に必要性の高いテーマを選定し、関係機関の協力を得つつ調査研究を行っています。現在は、「CISPR32 1GHz超放射エミッション代替測定法として提案中のAPD測定許容値算出データ充実のための調査研究」、「照明器具におけるEMCでの相加性の評価方法の調査」 及び 「サージ発生器の適用規格 (IEC 61000-4-5 Ed.2とEd.3)、およびPoE機能付き通信ポートのサージイミュニティ試験への同発生器の規格版数の影響に関する調査研究」 を実施しています。いずれも、国内だけではなく国際的なCISPR規格策定において、重要な課題の調査研究になっております。

第2点目は、ここ数年積極的に取り組んできた 「医療機関における電波の安心・安全な利用の推進」 に関するものです。

ここ数年、EMCCでは、「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」、「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き」、「医療機関における「電波の安全利用規程 (例)」」 及び 「周知啓発用資料」 の作成及び公開を矢継ぎ早に進めてきました。

2019年度は、次の取組を積極的に推進していきます。

① 病院・一般診療所への電波の利用状況に関するアンケート調査

②LEDの医用テレメータへの影響調査の実施

③ 電波管理の観点からの病院建築時の建築ガイドラインの作成検討

④人材育成のためのe-learning教材の改善

⑤グッドプラクティスに係る表彰制度の創設検討

医療機関における電波利用の推進に関する取組については、全国11か所の総合通信局等が事務局を務める「医療機関における電波利用推進地域協議会」と密接に連携し、各地域の医療機関への電波の安心・安全な利用推進の周知・啓発活動を行ってまいります。

最後に、EMCCは、電子機器利用が進歩・発展すれば付随して生じてくる電波干渉等の問題の解決にこれからも積極的に取り組み、社会問題解決に貢献してまいります。また、EMCCの活動成果をCISPRなど国際標準化組織へ貢献してまいりますので、今後とも皆様のご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。