EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

一般社団法人 エレクトロニクス実装学会 電磁特性技術委員会委員長
池田 浩昭

近年の電子機器は、小型、高性能、低価格であるにも関わらず、開発期間は大変短くなっています。その背景には設計ツールの進歩があります。従来は、一部の専門家しか利用しなかった電磁界シミュレータや回路シミュレータが、一般の設計者にも利用さるようなり、試作回数を大幅に減らすことが可能となりました。一方で、シミュレータは、入力された設計データに対して、物理現象に基づく計算を行い、その結果を返すだけですので、問題があった場合、その対策までは教えてくれません。また、最近の電子回路は、扱う周波数が桁違いに高くなっており、以前はマイクロ波の技術者でないと扱わなかったSパラメータによる評価も必要になってきました。このように、設計ツールの進歩が著しいのに対して、ツールを使う側のレベルが追いついていないのが現状です。

このような状況下において、EMC (ElectroMagnetic Compatibility) 問題や、高速デジタル回路設計技術、無線技術などの電磁特性に関わる技術を、企業間の垣根を取り除いて議論し、研究者や設計者のレベルを上げるために、エレクトニクス実装学会電磁特性技術委員会では、「EMCモデリング研究会」、「超高速・高周波エレクトロニクス実装研究会」、「低ノイズ実装研究会」 の3つの研究会を統括しています。さらに、毎年8月下旬に設計者の育成や最新の電磁特性に関する研究、技術を解説する 「サマーセミナー」 の開催も行っています。

これからのEMC問題を担う研究者や設計者の議論や情報収集の場として役立つ事を願い、各研究会の活動内容について簡単に紹介します。

「EMCモデリング研究会」では、電子機器におけるEMC (ElectroMagnetic Compatibility) 問題を解決するために、電磁界シミュレータを用いて、プリント基板やシールド構造の解析・検討を行なっています。その成果は論文や本誌の記事、講演という形で公開しています。

「超高速・高周波エレクトロニクス実装研究会」 は、最新の情報通信機器における伝送路解析と実装構造の調査・研究、加えて高速高周波を扱う半導体、部品・材料、物作りのプロセスなど幅広い分野を対象とし、年3-4回の公開研究会を開催しています。

「低ノイズ実装研究会」 では、「EMC設計技術実践講座」 を開催しており、電子機器の設計者を対象に、EMC対策の基本を理解し、体得してもらうことを目的に、CADやシミュレータを使いプリント基板の設計、製造、測定、EMC対策を行っています。

サマーセミナーは電気・電子業界に関わる設計者、研究者向けに毎年8月下旬に開催しています。講演テーマは、EMC対策や電磁界シミュレーション、伝送線路の基礎理論など、初学者向けの内容から最新の話題や研究成果について幅広く取り扱っています。

電子機器の高性能化、低価格化、短納期開発はこの先も続き、これらに対応するには、様々な技術の習得や設計ツールの使いこなしがさらに必要になります。会社によっては、設計者の教育が行き届いている所もありますが、そうでない会社もあると思います。そのような場合、ぜひ、ここで紹介した研究会やサマーセミナーに参加して頂いて、ノウハウや技術を持ち帰って欲しいと思います。学会活動や研究会というと堅苦しいというイメージがあると思いますが、実際にはそのような事もなく、会社の垣根無しにいろいろ相談できる場になっています。

最後に、ここで紹介した本技術委員会の活動が、少しでも技術的な課題解決の糸口となることを願って新年の挨拶とさせて頂きます。