EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)
井上 博史

一般社団法人日本電機工業会 (JEMA) では、IEC及び国内でのEMC/EMFの議論に迅速に対応するため、家電分野、産業分野、新エネルギー分野の各分野に対応する委員会で審議を行っている。主な取組を紹介する。

○家電分野

家電分野では、CISPR/Fで検討しているCISPR 14-1 (家電及び類似機器のエミッション) において、電気製品の高度化・高周波化の波及を受けて、同規格の第5.0版で1GHzまでの許容値が導入された。しかし、これでも十分ではないという指摘があり、現在第6版修正1の審議で、6GHzまでの許容値の導入について審議が進められている。

IEC/SC77A (低周波EMC) においては、高調波のエミッション限度値規格を検討しているWG1、フリッカ・電圧変動のエミッション限度値規格を検討しているWG2に参加し、製品固有の定義・試験条件などについて、日本意見の反映に努めている。

○産業分野・新エネルギー分野

TC22 (パワエレ) では、IEC/SC22G/MT7において、CISPR・TC77などのEMC委員会の動向把握・情報共有に努めると同時に、独自に試験・調査を行い、日欧米のパワエレメーカが連携してCISPR・TC77への意見発信を行っている。また、欧州において、工作機械の欧州EMC規格が長年改正されていないことから、インバータ・サーボなどの可変速駆動システム (PDS) の製品規格であるIEC 61800-3との規定の乖離が問題となり、IEC 61800-3の適用範囲を拡張し、PDSを用いた工作機械も対象に加える方向で検討を開始した。国際的には、工作機械を所管しているISO/TC39 (工作機械) の関係者がIEC/SC22G/MT7に参加し、国内においても日本工作機械工業会とJEMAとが連携して、工作機械・PDS両業界共同で取り組んでいる。

新エネルギー分野では、2017年7月に制定されたIEC 62920 (PV用パワコンのEMC) の改正作業を開始している。IEC 62920は、日本をリーダーとして制定した規格であり、今回の改正作業も、引き続き日本がリーダーを務めている。

CISPR/B (工業、科学及び医療用装置) では、CISPR 11の改正作業として、日本をリーダーとして取り組んだPVに用いるDC/DCコンバータと、日本が技術的優位にあるパワコンの蓄電池用直流ポートに限定した部分改正案のFDISが回付され、承認された。その他の直流ポートへの適用拡大に向けて、引き続き日本をリーダーとしてAHGで継続検討することが合意された。

CISPR/B/AHG6では、CISPR規格に基づいた試験サイトでの試験が困難な大容量装置などを事前評価するための、代替試験方法の検討が開始された。一定の条件を満足した環境であれば、規格に基づいた事前評価ができるようにするためのものであり、大型パワコンでニーズがあるIEC 62920の改正作業と並行して議論している。

○全般

IEC/SC77A/WG8 (電磁環境) で議論されていた公共低圧系統の2~150kHzの周波数帯域の両立性レベルは、日本からの技術的見地に基づいた提案によって、パワエレ業界が提案するレベルに近い値が、2018年5月に発行されたIEC 61000-2-2のAmendment 2で規定された。IEC/SC77A/WG8では、引き続き工業低圧系統の両立性レベルの議論が開始されている。

IEC 61000-2-2で両立性レベルが規定されたことに伴い、SC77A/WG1で2~9kHzの限度値の議論が活発化している。IEC TS 61000-3-10として、2kHz~9kHzの測定方法、限度値の考え方、基本周波数による測定除外条件などが議論されている。これを受けて、JEMAでは、日本電気計測器工業会の協力を得て、複数の測定器・EUTを用いた実証試験を行った。この結果を踏まえて、WGドラフトに提案・反映していく予定である。

9~150kHzについては、CISPR/H/JWG6として、CISPR/HとSC77AとのJWGを設立し、限度値の議論が開始された。2018年に開催された2度の会議では、IEC/SC77A/WG8で議論済みの事項が再提案されるなど、進展が見られなかった。IEC/SC77A/WG8で議論した内容を丁寧に説明し、IEC 61000-2-2で規定された両立性レベルに基づいた限度値が規定されるように、取り組む必要がある。

CISPR/Hでは、高周波エミッションの共通規格において、150kHz~30MHzの放射エミッション限度値、多数台のノイズ重畳の影響などが検討されている。共通規格は、製品規格作成時に基礎とする位置付けとなっており、共通規格で取り込まれた規定は、製品規格でも取り込まれる傾向にあるため、機器業界としても議論を注視し、業界意見の反映に努める必要がある。

<まとめ>

IECでは、EMC基本規格・製品規格の制定・改正作業が活発に行われており、ますます重要性が高まっている。JEMAでは、実証試験等によって、機器の実態調査だけではなく、障害要因を含めた原因分析・対策方法を検討している。このような検討結果を基に、直接関連する製品規格はもちろん、間接的に影響を受ける基本規格の審議にも積極的に参加し、業界の意見を反映するとともに、完成度の高い規格作成に寄与している。

JEMAとしては、関連業界と協調を図りながら、引き続き国内外のEMC/EMFの標準化活動に取り組む所存である。

※IECの審議状況は2017年11月30日現在の内容