EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

国土交通省 航空局 航空機安全課長
甲田 俊博

新年あけましておめでとうございます。念頭にあたりご挨拶申し上げます。

航空局航空機安全課では、航空機及び同装備品の安全性審査等を担当しております。

航空機は、その装備品を含め、強度、構造及び性能が所要の安全性基準に適合することが必要で、その中にはEMC に関する適合性も含まれます。

現在では技術の発展により様々な搭載システムがコンピューター化・小型化され、航空機設計において安全性、経済性及び快適性を一段と向上させることが可能になりました。しかしながら、設計製造者の異なる多種多様の装備品を航空機の限られた空間内に搭載することは、EMC の観点で非常に多くの課題が発生します。

航空機は飛行中に不具合が発生した場合も飛行を停止することができない特殊性から、航空機の搭載システムは予想されるあらゆる運用条件下において所要の機能を発揮することが求められます。

従来の航空機は、パイロットによる操縦桿やペダルの操作が物理的に対象物へ伝わって機体を制御していましたが、現在の航空機は、フライバイワイヤ、エレクトロニックエンジンコントロールといったように、飛行機の動翼舵面制御、エンジン推力の制御などは電気信号のやり取りで行われています。摩耗等による物理的故障の削減、人間の操縦能力を超える細かな機体制御といった観点から飛行の安全性、経済性、快適性は格段に向上していますが、一方で、予測が難しい電磁気妨害( EMI) や雷撃、高強度放射電磁界( HIRF) が飛行の安全にどのような悪影響を及ぼすのか、あらゆる運用条件下でシステムが所要の機能を発揮するのかについての検証が非常に難しくなってきています。

このような問題は、EMC のみならず、ソフトウェアやASIC、PLD、FPGA といった集積回路による複雑な航空機システム設計が一般的となったことも大きな要因です。

更に最近では、乗客の皆様が機内Wifi を使用したり、パイロットがコックピット内で汎用品のタブレット端末を使用して必要な手順を実施することも一般的となってきており、益々状況は複雑化しています。

このような無数にある条件及び状況の中を飛行する航空機に対して安全性を証明するためには、その審査の方法も時代と共に変化させていく必要があり、今現在も世界の航空当局並びに航空機及び装備品メーカーがその安全性確認手法の確立について課題として取り組んでいます。

航空局としては、今後も予想されるこのような変化に対して、柔軟性を持った安全性審査や制度設計を実施していく重要性を認識しており、日々の安全性審査を通して知見や経験を蓄積することで、より一層の航空の安全及び利用者利便の向上に努めていく所存です。