EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

IEC/TC65国内委員会 委員長
横河電機株式会社
松本 高治

新年を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

IEC (国際電気標準会議) TC65 [工業用プロセス計測制御] の分野においては、昨年も、Industry 4.0/Smart Manufacturingや安全/セキュリティに関する多くの出来事があった年であった。

昨年5月には、独ベルリンで開催された国際カンファレンスにおいて、日独連携の枠組みの下で進めてきた製造業におけるサイバーセキュリティ分野に関する協力について、両国専門家による検討の成果と今後の方針等が共同文書として発表された。

IECにおける国際標準化分野においては、スマートマニュファクチャリング領域における複数の技術領域を総括するSystems Committee Smart Manufacturing (SyC SM) の設立が1月に正式に承認され、11月に最初の会合が開催された。IECにおけるIndustry 4.0/Smart Manufacturingの活動は、2013年10月にドイツ国内委員会から 「Industry 4.0の標準化」 の提案がなされたことに始まり5年が経過したが、この間、ISO (国際標準化機構) との連携も含めて活発な議論が行われてきた。その結果としてSyCが設立され、スマートマニュファクチャリングが正式に国際標準化テーマとなったと言える。SyC SMの日本代表は、設立準備段階から引き続いてTC65国内委員会委員が務めている。

また、IEC TC65と協力関係にあるISO TC184 [オートメーションシステムとインテグレーション] と設立した、Smart Manufacturing 参照モデルに関する合同委員会ISO/IEC JWG21においても、複数回の会合を経て技術文書の作成が進められてきており、今年早々には、テクニカルレポートのドラフトが完成する見込みである。

EMC (電磁両立性/環境電磁工学) はIECで取り扱う製品のほぼ全てに関連する水平規格であり、様々なセンサや機器がInternetなどのネットワークを介してつながるスマートマニュファクチャリングの分野においては、EMC規格の重要性がますます高くなってきている。これは,EMC技術が単に電気電子情報機器単体の性能を担保するだけなく,社会基盤やシステム全体を支える重要な要素となっているためであると言える。

TC65国内委員会は、工業プロセスにおける 「安全」・「安心」 に関する規格化を進めているが、EMCは安全確保に関連する重要な規格であり、国内委員会事務局を受託している日本電気計測器工業会 (JEMIMA) の 「製品安全・EMC委員会」 と連携して活動している。この委員会では、毎月開催する委員会及び情報交換会を通じて、EMCに係わる関連規格の情報の収集・分析・提供を行っている、また、定期的にセミナーを開催し、規格解説や入門者向け講義などを行い、TC77 [EMC電磁両立性]、TC66 [製品安全] との連携も含めて、国際標準化活動に協力をいただいている。

IEC/TC65におけるEMC関連の規格開発動向を簡単に紹介すると、SC65A/WG4においてEMC規格 (IEC 61326[計測、制御及び試験室用の電気装置-電磁両立性要求事項]) を取り扱っており、IEC 61326-1[一般要求事項]に関しては、昨年3月にCD (委員会原案) に対するコメント募集が各国国内委員会に対して行われ、収集されたコメントを反映する作業が行われている。今後、改訂原案による再度のコメント募集を経てCDV (投票用委員会原案) を完成させるなど、国際投票に向けての改訂作業が進められる見通しである。IEC 61326-2-X[製品個別要求事項]に関しては、一昨年の各国国内委員会への意見募集を経て、昨年11月に改訂作業を開始することが決定され、CDに対するコメント募集が各国国内委員会に対して行われた。また、TC77においては、SC77B/MT12において、IEC 61326シリーズと密接に関係するIEC 61000-4-2、IEC 61000-4-3などの基本規格の改訂作業が行われている。

最後になりますが、本年も皆様のご指導、ご支援をいただきながら、日本の計測・制御・オートメーション業界の国際的競争力強化と新たな経済発展に貢献し、産業界に資する活動ができますよう、一同、継続して努力いたす所存です。皆様の一層のご活躍とご健康を心から祈念申し上げ、結びといたします。