EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-
2019年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会 (CIAJ) は、情報通信技術 (ICT) 活用の一層の促進により、情報通信ネットワークに関わる産業の健全な発展を図るとともに、情報利用の拡大・高度化に寄与することによって、社会的、経済的、文化的に豊かな国民生活の実現および国際社会の実現に貢献することを目的として活動しております。
近年のAV機器、IT機器、放送受信機器の融合化、多様なマルチメディア機器の普及に対応するため、EMCに関する国際規格の策定作業が進められてきました。AV機器およびIT機器を統合したマルチメディア機器のエミッションおよびイミュニティの規格であるCISPR 32とCISPR 35が発行され、今後、これら規格の改訂状況、さらには各国の規制動向も注目されます。
その中で、当電磁妨害対策技術委員会は、EMCの立場から通信機器に関する技術的事項の調査研究および関連規格の審議を行い、国際標準化動向に合致した適正な規格提言によって、健全なEMC環境実現を目標に活動を推進しております。
今年の当委員会の代表的な取り組みを以下に紹介します。
1.国際間の政策課題に対する取り組み
CISPR (国際無線障害特別委員会)・ITU-T (国際電気通信連合電気通信標準化部門) におけるEMCに関する国際規格 (CISPR/I、ITUーT/SG5) の策定に参画し、マルチメディア機器のエミッション規格 (CISPR 32) およびイミュニティ規格 (CISPR 35) の規格審議、意見提案活動に継続的に取り組みます。特にCISPR/Iグループに対しては、当委員会からエキスパートを派遣し、規格の改訂や修正案の審議に積極的に参加しております。本年も昨年同様、CIAJの専門分野である通信端末機能、通信ネットワーク機能に関する新たな課題について、積極的な提案活動に取り組んでゆきます。
さらに、EMC規格全般に関わる国際規格 (CISPR、IEC61000シリーズ) の最新動向を把握し、製品実態に整合した規格制定に向け、各関連国内委員会に委員を派遣し意見具申に取り組んでゆきます。
2.公共的課題ならびに市場動向変化への取り組み
電波環境協議会 (EMCC) より、調査研究事業として「サージ発生器の適用規格 (IEC 61000-4-5 Ed.2 とEd.3)、および PoE 機能付き通信ポートのサージイミュニティ試験への同発生器の規格版数の影響に関する調査研究」を受託し検証試験を行い、その結果をまとめ年度末に提出を予定しています。CISPR 35で課題となっている雷サージイニュニティ試験の判定基準について、現在判定基準C (電源オンオフ操作のようなユーザの介入で復旧する機能損失も許容される) となっている信号ポート、通信ポートに判定基準B (一時的な性能劣化がユーザの介入なしで復旧するのは許容される) を適用すべきとの意見があり、通信ポートに対し判定基準Bとした場合の既存通信端末機器への影響を検証するため、昨年度に続き検証試験を行っております。また、IEC 61000-4-5においては、 Ed.2に適合したサージ発生器をそのまま使用した場合に試験波形が Ed.3規格に適合できないという課題が提起されており、今回はEd.2とEd.3に適合したサージ発生器とPoE通信ポート用のCDNの組み合わせて、サージ波形比較と上記性能判定結果の差分の検証を行っております。その結果をベースとした提案や問題提起を国際規格の審議で行うとともに、同実験結果について講演会などを通じて国内関連業界に向け情報発信してゆきます。
3.イミュニティガイドライン
当委員会が担当する 「通信装置におけるイミュニティ試験ガイドライン」 については、継続的にCISPR 24の改訂状況の把握に努め、同ガイドラインの改訂を進めておりましたが、今後はCISPR35にも対応した試験ガイドライン作成のための準備を進めてゆきます。また新たな規格であるIEC 61000-4-31 (AC 電源ポートの広帯域伝導妨害イミュニティ) やIEC 61000-4-39 (近接放射イミュニティ) の取り込みについても検討を進めてゆきます。
今年度も引き続きCIAJ会員各社の意見を代表し、適切なEMC規格制定を目指し継続的な活動をしてゆきたいと考えております。
本年も昨年同様に、情報通信ネットワーク産業協会をよろしくお願い致します。
最後に、皆様のご健勝と更なるご活躍を祈念いたしまして、新年のご挨拶といたします。