EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

経済産業省 産業技術環境局 国際電気標準課長
中野 宏和

新年を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。

1.EMC分野に関する標準化の動向

従来、標準化は製品の仕様や性能を対象としていましたが、IoTの到来によりあらゆる産業において、近年はスマートグリッド、スマートシティなど、機器とサービスを共に含む大規模な社会システムに関する規格づくりが必要となっています。

このような中で、インターネットに代表される通信インフラは、さらなる高速化が要求される一方でその耐性 (サステナビリティ) が益々重要になっており、とりわけ、EMC は極めて重要な課題となっております。EMCに関した標準化は、IEC (国際電気標準会議)、ISO (国際標準化機構)、ITU-T (国際電気通信連合-電気通信標準化部門) などで盛んに議論されてきました。とりわけ、IECの役割は大きく、これまでTC77 (電磁両立性に関する専門委員会)、CISPR (国際無線障害特別委員会) が主導的役割を担い、電磁波障害の許容限度やその測定法の国際標準化の取り組みを進めてきました。一方で、EMCが影響する技術分野は広範にわたるため、TC77やCISPRをはじめとしてその他の関連する専門委員会間の更なる連携や協業を促進するため、ACEC (電磁両立性諮問委員会) を設立し、各専門員会連携の下でEMCに対する課題に取り組まれております。

2.工業標準化法 (JIS法) 改正

また、このような標準化を巡る環境の変化を受けて、工業標準化法 (JIS法) の一部改正がされました。本改正法は、2018年11月29日の準備行為 (認定機関の申請と認定等) が施行され、本年7月1日に本施行されます。本JIS法改正は、標準化の対象範囲や制定プロセスそのものを変える大きな改正となっており、その主な内容は以下の4点です。なお、本改正により「日本工業規格 (JIS)」が 「日本産業規格 (JIS)」に、法律名が「産業標準化法」となります。

1点目、国際標準の対象範囲と整合するため、標準化の対象にデータ、サービス、マネジメントを追加しました。これにより、例えばスマート工場向けのビッグデータの仕様等のJISを制定したり、それらの国際標準化を進めたりすることで、第四次産業革命に伴う新たな技術の社会実装が期待されます。

2点目、「認定産業標準作成機関」 制度を導入し、標準化に関する十分な知識及び能力、適切なJIS案作成のための業務の実施方法及び実施体制を有すると主務大臣が認定した民間機関からのJIS案について、日本工業標準調査会 (JISC) の審議を経ずに迅速に制定するスキームを追加しました。これにより、国際標準の改訂から間を置かずにJISも改正する、あるいは日本が優位な新技術についてJISを迅速に制定し、その実績を基に国際標準化を迅速に進める、等の効果が期待されます。

3点目、罰則を強化しました。認証を取得していない事業者がJISマークを表示した場合などにおいて、現行法では法人の罰金を100万円以下としていたところ上限1億円まで引き上げました。これにより、JISマークを用いた企業間取引の一層の信頼性確保が期待されます。

4点目、法目的に国際標準化の促進を追加し、国、国立研究開発法人、大学、事業者等の関係者に対して、国内の標準化及び国際標準化に資する活動に主体的に取り組むことなどの努力義務規定を整備しました。

今後益々産業のグローバル化が進むにしたがい、国際標準化を見据えた取り組みが益々重要になっており、官民を上げた取組が求められております。今後とも皆様のご理解とご協力をよろしくお願いいたしますとともに、皆様のご健勝を祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。