EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

IEC/TC77国際議長
東京大学教授
大崎 博之

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

昨年を振り返りますと、韓国・釜山でのIEC総会に合わせて、10月22日に開催されました標準管理評議会 (SMB会議) において、SMB議長 (IEC副会長) のRalph Sporer氏から2018年IEC Thomas A. Edison Awardを授与されましたことは、大変光栄なことで、TC 77国内委員会を始め、関係する方々のご協力、ご支援があってのことと、心より感謝しております。

私がTC 77国際議長に就いたのは2011年6月で、7年半ほどが経過しました。前任は徳田正満先生で、二代続いての日本からのTC 77国際議長でした。議長に就任した年の10月下旬に、IEC総会に合わせて、TC 77会議をオーストラリアのメルボルンで開催したのですが、Secretaryは健康上の理由でTC 77会議に出席できないだけでなく、準備も進められないという事態となりました。そこでその年の9月に急遽、Bernd Jaekel氏がAssistant Secretaryに就任し、10月のTC 77会議の準備を大急ぎでスタートしました。また、Technical Officerも交代となり、TC 77会議を運営する側が全て新任という状況で、なかなか厳しいスタートとなりました。しかし、彼らが万全の準備を進め、傘下のSubcommitteeの議長や幹事の方々にもサポートをしていただいて、結果的にうまく会議を運営することができましたことは、今は懐かしく感ぜられます。

さて、ここ数年様々な議論が行われてきました2~150 kHzの周波数領域の非意図的なエミッション (ディファレンシャルモード) に対する両立性レベルについては、2~30 kHzの両立性レベルが、IEC 61000-2-2第2版 (一般低電圧電源系統における低周波伝導妨害及び信号発生の両立性レベル) のAmendment 1として2017年6月に発行された後、30~150 kHzの両立性レベルについて、IEC 61000-2-2のAmendment 2として、2018年5月に発行され、両立性レベルについては一段落しました。現在は、エミッションレベルの議論がスタートし、特に9-150kHzのエミッションレベルについてはCISPRとの合同作業グループが作られ、そこで議論が始まりました。

話は変わりますが、国内の電気用品調査委員会 (事務局:日本電気協会) は、2018年11月28日付けで 「遠隔操作に関する報告書等の見直しについて中間報告書~技術基準と解釈との関係及び用語の定義等の明確化~」 をまとめ、HP上で公開しています。電気用品調査委員会では、遠隔操作に関する要求事項の考え方やリスク評価の手法の詳細を説明するガイドとして、いくつかの報告書及び試験方法を公表してきました。それらに対して、遠隔操作に関する最新の動向等を反映させるための見直しの必要性があること、さらには、IECにおいても遠隔操作に関する規格が整備されつつあることを踏まえ、2017年から報告書等の見直し、検討を行っていて、その中間報告を取りまとめたものです。この中には、電磁的妨害に対する耐性などについても言及されています。

今年はTC 77会議を開催する年で、2019年10月に中国・上海で、IEC総会に合わせて開催する予定です。また、ACEC会議 (電磁両立性諮問委員会) が、6月10、11日に仙台で開催されることになっています。今後も皆様のご支援をいただけますようによろしくお願い申し上げます。

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