EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

公益財団法人 日本適合性認定協会(JAB)
佐々波 浩一

平成31年の新春を迎え謹んでお慶びを申し上げます。

公益財団法人日本適合性認定協会 (JAB) は日本工業標準調査会の提言を受け、1996年に試験所認定制度を立ち上げました。現在、ISO/IEC 17025に基づくJAB認定基準を公表し、この基準に基づいて審査を行い、適合者を認定・登録し、公表しています。昨年11月末現在で合計333件の試験所・校正機関がJABの認定を受けていて、このうちEMCの試験所としては、28の試験所が認定を受けています。

最近の話題としていくつか述べてさせていただきます。

まず、2017年の11月に発行された2017年版のISO/IEC 17025による試験所認定審査が今年1月より必須となり、認定審査を受ける試験所は全てこの2017年版での審査を受けなければならなくなりました。この2017年版を適用するにあたって、EMC試験所が試験報告書の記載事項で注意すべき点は、顧客から提供されたデータと適合性の表明及び判定ルールです。

まず、顧客から提供されたデータは明確に識別されなければなりません。さらにそれが結果の妥当性に影響する可能性がある場合には免責条項を報告書に記載しなければならなくなりました。例えば試験品目の定格電圧が100Vであると顧客から知らされた場合、それを明確に識別して試験報告書に記載した上で、定格電圧100Vで試験したことについて試験所は責任を負わない旨試験報告書に記載しなければなりません。最近の電源は入力電圧が変化しても出力電圧が一定のものが多くあり、そのような場合は試験結果に影響しないとも考えられますが、もしそうであっても試験所がリスクを負う覚悟がない限り免責条項が必要です。

次に適合性の表明についてはどの結果がどの規格又は仕様に適合しているのかを明示することが必要になりました。従来、試験報告書の第1頁に試験規格番号とCompliedの表記のある例がよくありましたが、今後はCompliedの表記のある頁には試験規格番号のみならず、該当するのはどの結果であるかを明示する必要があります。また、測定データの横にCompliedの表記がある例もよくありますが、この場合もどの規格又は仕様に対して適合であるのかを明示する必要があります。

判定ルールは、適合性の表明の際に、測定不確かさをどのように考慮するかの取り決めですが、試験規格に規定されている場合は新たに定める必要はありません。CISPR 32の場合は、適合性の判定に測定計装の不確かさを加味してはならない、と第11項に規定されているので定める必要がないのですが、CISPR 11の場合は、適合しているかどうかの判断は測定計装の不確かさを考慮して適合性測定の結果に基づかなければならない、と第12項に規定されていますので、どのように不確かさを考慮するのか判定ルールを文書化して試験報告書に記載する必要があります。しかも 「測定計装の不確かさを考慮して」 と規定されていますのでCISPR 32に準じて不確かさを加味しないということは許されません。また判定ルールを定めた場合は、試験前に顧客の同意も得る必要があります。

次に技能試験についてですが、2017年12月より、JABの認定EMC試験所は従来の30MHz~1GHzの放射妨害波の技能試験のみならず、1GHz以上の放射妨害波、電源ポートの伝導妨害波、通信ポートの伝導妨害波、及びCISPR 25の伝導妨害波についても技能試験が必須となりました。この要求事項は、満足な結果を得ることが要求されており、単に技能試験の申し込みをしているだけでは不適合になりますので注意が必要です。また、技能試験提供者がいない場合は自分で比較相手を選んで試験所間比較行う自主技能試験も認められていますが、技能試験提供者ができた場合には自主技能試験に代えて必ずこれに参加申し込みすることが要求されます。今後一般社団法人KEC関西電子工業振興センターがこれらの技能試験を行うことを計画していますので、募集があった場合は必ず参加申し込みするようお願いします。

EMC分野は技術的にまだまだ未解明の部分もあり、今後も測定の技術的条件の改善を進めていく必要があると思います。関係各位のご協力をお願いします。