EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-
新しい年を迎えましたが、今年も電気関連分野での各種の激変が予測されます。そして、この激変が「EMC分野」にとって更なる使命の重大化を伴う時代の幕開けとなります。
すなわち、「EMC分野」 が 「メジャー」 としての重い役割を担うことへの転換の節目となることが要求される年でもあります。
これは、単なるカラ騒ぎではなく、あらゆる社会インフラの自動化の便宜性の裏面において、同時に安全・安心に対するリスクが増大していることに対する対処が要求されることにあります。
ところで、このリスクに対応して、電気学会の 「電気システムセキュリティ特別技術委員会 (栗原委員長:電力中研)」 の下部組織として、本年度から (3箇年期限で) 「自律走行システムにおける電磁波セキュリティ特別調査専門委員会 (以下 「この委員会」という。)」 が活動を開始することになりました。
この委員会は、社会インフラのうちでも特に近年において注目されております 「自律走行システム」 における障害となる意図的な電磁的要素をテーマとするものであります。
以下に、この委員会の 「設立趣意書」 にもとづき、設立の背景・趣旨の概略を記します。
1.背景・目的
(1) 交通・運輸等における省エネ化、省力化、事故防止を目的とする自律走行 (自動運転) システムの研究が進められており、実用化のための各種実験が行われている。
車両・航空機・船舶等の各種交通・運輸等の手段における自律走行については、省力化や運転者における負担軽減、さらには事故防止に効果があるなど重要な社会的要請でもある。
(2) 車両等における自律走行を支援する技術項目は、「コネクテッド (無線通信による地上からのデータ供与)」、「音波による測距」、「レーダによる測距」、「CCDカメラによる画像の取り込みと解析・認識」、「GPS等による位置検出」 などである。
これらの機能は、いずれも電磁波・音波等を使用するためスタンドオフ攻撃 (離れた位置からの攻撃) を受けやすい要素であるが、現下の研究においては意図的な妨害の想定が欠落している。
自律走行の実現においては、安全性における担保がなければ根源的に成立しないことから、意図的妨害に対する対処策は最重要であり、かつ喫緊の課題でもある。
(3) この委員会は、自律走行システムに対する 「意図的な電磁妨害の想定と、その対策」 に関する技術調査を実施するもので、不可欠な社会インフラである各種交通・運輸等の手段における安心安全な自律走行システムの構築に寄与することを目的とする。
備考:
1. 「自律走行」 の当面の対象は、「自動車」、「産業用ロボット」 や、「鉄道」、「航空 (ドローンなどを含む)」、「船舶」 などの交通等手段も含めるものとし、その範囲は委員会において協議する。
2.妨害手段の要素としての 「音波的」 も含める。
2.国外の状況
各国において 「自動車の自動運転」 についての研究活動や技術競争が熾烈に行われている報道は多数見られるが、各種の報道を見るかぎりでは「意図的な電磁妨害に対する対策」についての記述はないようである。
しかしながら、運転や航行の自動化については、何よりも安全性が優先されることは必定であるため、他国においては意図的な妨害 (特に 「電子戦 (Electronic Warfare)」 技術をも意識した意図的な電磁妨害)対策に関する各種研究が行われていることは推定に難くない。
備考: 研究内容等についての発表 (報道) がなされない理由として、次が考えられる。
1. 知的財産権等の権利が確立したあと、表面化するものと思われる。
2. ICに組み込まれた 「非公開の対策 (ファームウェアなど)」 として運用されることが想定される。
3.調査項目
この委員会の調査項目は次に示す項目とする。
(1) 想定される電磁的セキュリティ脅威…
①実態調査、②文献等調査、③脅威分析
(2) 必要とされる電磁的セキュリティ要求…
①実態調査、②規格調査
(3) 電磁的セキュリティ対処…
①実態調査、②文献等調査、③対処方法
4.調査期間
平成30年からの 「3箇年」 を目標とするが、可能な限り調査の促進に努める。
5.活動報告
「委員会報告書」 を公表することが妥当であるかどうかについては、この委員会での決定による。