EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

IEC/TC77(電磁両立性委員会)国内委員長
拓殖大学名誉教授
澁谷 昇

新年、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。本稿では、2018年度にTC77で議論された項目、および、今後のTC77委員会について簡単に紹介します。

1.TC77の動向

TC77国内委員会は、TC77の委員長及び幹事、また、幹事としてSC77A、SC77B、SC77Cの各委員長、さらに各工業会の代表等の委員で構成されています。

国内委員会は年度内に4回の会議が開催されています。昨年度は5月に第141回を、8月に第142回を、11月に第143回委員会を開催しました。本年1月に第144回を開催する予定です。

委員会は各回とも議事次第に沿って進行し、以下に示す事項を審議・決定しました。

1 イミュニテイの共通規格IEC61000-6-1 Ed.3及びIEC61000-6-2 Ed.3の発行に伴い、JISの原案作成委員会が設立され、2つのJISの原案作成が完了しました。

2 77/540/INF: IEC 61000-6-5 (発変電所環境におけるイミュニティ共通規格) Ed.1 (77/530/DC) の正誤表意見聴取結果が公表・承認され、“common mode“,“differential mode“等の用語の使い方については、次回改正時に検討することが決定されました。

3 SC77Aでは、9 kHzから150 kHzまでの伝導妨害限度値を審議しています。その限度値をエミッション共通規格IEC 61000-6-3に規定するためのJWG6がCISPRに組織され、第1回目の会議が開催されました。IEC 61000-6-3の改正方法については意見の対立があるようです。

4 SC77Cのスコープ変更の件に関しては、従来のHEMPおよびIEMIを対象とするスコープに、磁気嵐による誘導電流 (GIC) が追加されることが承認されました。

2.JISC61000-6-7原案作成委員会

IEC 61000-6-7 (共通規格) のJIS化について申請書を作成し、提出しました。

IECトーマスエジソン賞の受賞

TC77国際議長の大崎東京大学教授が、2018年のIECトーマスエジソン賞を受賞されました。大崎先生は、現在まで8年間国際議長およびACEC委員として活動され、その間IEC61000-6-1,2、IEC TR61000-2-5等8つの規格の発行に貢献され、また、昨年のTC77総会 (柏の葉国際会議) のホストを務められました。

その他

1 徳田委員からIEC SyC Smart Energy (スマートエネルギーシステム委員会) の活動について、スマートグリッド標準化ロードマップでは多数のEMC 規格が引用されている旨の報告がありました。

2 工業標準化法が産業標準化法に改正されて来年7 月から施行されることに伴い、JIS 規格の名称が 「日本工業規格 (JIS)」 から 「日本産業規格 (JIS)」 に変更されることになる。

以上、本稿では、昨年度のIEC/TC77国内委員会の動向を述べました。今後、本委員会の活動はますます重要になってくると思われます。