EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

総務省 総合通信基盤局 電波部 電波環境課長
塩崎 充博

新年明けましておめでとうございます。

平素より総務省の電波行政にご理解を賜り、厚く御礼申し上げます。

本年も引き続き、無線設備から発射される電波の安全性や電子機器からの不要電波の対策等、電波利用環境の整備に取り組んでまいる所存です。本稿では、それらの取組の主なものについてご紹介したいと思います。

1.EMCの取組について

国際無線障害特別委員会 (CISPR) の活動では、関係者の皆様のご尽力により、ISM機器分野やマルチメディア機器分野で日本が幹事国を務めるなど大きな貢献をしております。特に、電気自動車用ワイヤレス電力伝送では、我が国が世界に先行して国内制度化したEMC規格と調和する形で、現在、規格の改定作業が進んでおります。併せて、我が国で割り当てている79-90kHzの周波数帯が世界共通で特定されるよう、本年開催される世界無線通信会議 (WRC-19) に向けて取り組んでいるところです。また、昨年12月には、情報通信審議会からマルチメディア機器のイミュニティ規格 (CISPR 35) の国内規格化について答申をいただきました。今後、関係業界での業界基準として反映されることが期待されます。

2. 空間伝送型ワイヤレス電力伝送 (WPT) システムへの取組について

空間伝送型WPTシステムは、電波の送受信により電力を伝送するシステムで、今後、工場内で利用されるセンサー機器等への給電、オフィスにおけるマルチメディア機器等の充電等、幅広い分野での利用が期待されています。総務省では当該システムの導入にあたり、昨年12月に情報通信審議会に諮問を行いました。空間伝送型WPTは、既に実用化されているコイルを介した磁界結合型WPTや電極を介した電界結合型WPTと異なり、空中線を用いて空間へ意図的に電波を発射するという性格を有すること等から、基本的に無線設備として規律し、既存の無線システムとの周波数共用条件等について検討していくこととしております。

3.人体への電波防護の在り方の検討について

今後、第5世代移動通信システム (5G) 等において6GHz以上の周波数帯を利用する無線機器を人体の近傍で使用することが想定されていることから、情報通信審議会でそのための電波防護指針や適合性評価方法の検討を行ってまいりました。そして、昨年9月に 「高周波領域における電波防護指針の在り方」、12月に「携帯電話端末等の電力密度の測定方法等」について一部答申をいただきました。今春に向けて、これらの答申を踏まえて電波法令の整備を進めてまいります。

4. 医療機関における安心・安全な電波利用の推進について

近年、医療の高度化や利便性向上等の観点から、医療機関での電波利用機器の利用が増加していますが、それに伴い電波利用に起因するトラブルも増加傾向にあります。総務省では医療機関で電波を安全に利用いただくため、厚生労働省や電波環境協議会等と連携して対策に努めています。具体的には、電波を安全に利用するための医療機関向けの手引きの配布、医療機関での電波利用のグッドプラクティス事例等の共有、トラブル事例やその対応策を紹介した医療従事者向けのe-learning教材の作成等に取り組んでおります。また、本年2月にはシンポジウムを開催する予定ですので、プログラム等が決まり次第、総務省のHP等でご案内いたします。

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紙面の関係で施策の簡単な説明となりましたが、総務省では、引き続き皆様のご理解を賜りながら、電波利用環境の整備に努めてまいりますので、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。