EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

CISPRJ電波雑音委員会委員長
電磁環境工学情報EMC編集顧問
東京都市大学名誉教授
徳田 正満

CISPR国際規格の総務省情報通信審議会答申に基づく国内の整合規格を検討するCISPRJ電波雑音委員会に関しては、CISPR 15 (照明機器からのエミッション規格) に対する整合規格CISPRJ 15:2017 (電気照明及び類似機器の無線妨害波特性の許容値及び測定法) とCISPR 32 (マルチメディア機器のエミッション規格) に対する整合規格CISPRJ 32:2017 (マルチメディア機器の電磁両立性―エミッション要求事項) の2件の原案を作成し、電気用品調査委員会の承認、産業構造審議会保安・消費生活用製品安全分科会製品安全小委員会電気用品整合規格WGの承認を経て、平成29年 (2017年) 12月に、電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈が一部改正され、上記2つの規格が正式に整合規格として採用された。CISPRJ電波雑音委員会では、今後も、整合規格に関係したCISPR規格の改定に迅速に対応すべく、総務省情報通信審議会より答申され次第、新たな整合規格の作成に取り組んでいく予定である。

電気学会の基礎・材料・共通部門 (A部門) に所属する電磁環境技術委員会の中に平成26年 (2014年) 10月に設置された「スマートグリッド・コミュニティのEMC問題調査専門委員会」 (委員長:筆者) に関しては、(1) スマートメータ用電力線通信のEMC 問題に関するCENELEC (欧州におけるIEC関連標準化組織) 報告書、(2) 2kHz~150kHzのEMC問題、(3) V2H (自動車からホーム) におけるEMC問題、(4) 自動車におけるWPT (ワイヤレス電力伝送) 問題、(5) 家電情報機器のWPT問題、(6) 雷障害/雷保護問題、(7) スマートEMC (欧州の高速電力線通信で用いられているコグニティブ無線等)、を検討するWGを設置して推進した結果、当初の目標を達成したため、平成29年9月に解散した。その調査報告書を電気学会の技術報告書 「スマートグリッドにおけるEMC課題」 として作成し、昨年 (2018年) 10月末に電気学会に提出したので、新年早々には発行されるのではないかと考える。後継の調査専門委員会としては、都築伸二愛媛大学准教授を委員長とする 「IoT時代のシステムとEMC調査専門委員会」 が昨年4月に設立されたが、その詳細については、都築先生の 「これからのEMC」 に記述されている。

仁田周一東京農工大学名誉教授が昨年5月30日にご病気により享年80歳にて永眠された。仁田先生は、数々の委員会の委員長や主査を務められていたが、EMC試験所の適合性評価に関連して、JAB (公益財団法人日本適合性認定協会) の試験所技術委員会の下に存在するEMC・通信技術分科会の主査を務められていた。筆者は平成20年 (2008年) からEMC・通信技術分科会の委員になり、仁田先生のご指導を受けてきたが、仁田先生のご逝去に伴って昨年10月から後任の主査を務めている。一方、試験所の適合性評価を行うには、試験所の技能を評価する技能試験が重要であり、以前はJABがEMCの技能試験を実施していた。しかし、試験所の適合性評価を行うJABでは、国際的なルールの変更により技能試験が実施できなくなったため、平成28年 (2016年) 頃EMC・通信技術分科会で今後の対応を検討した結果、EMC技能試験を技術的にサポートしてきたKEC (一般社団法人KEC関西電子工業振興センター) に依頼することになった。その結果、平成29年1月にKEC技能試験技術委員会が設立されたが、仁田先生は初代の主査を務められた。仁田先生のご逝去に伴って、筆者は昨年7月から後任の主査を務めている。