EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

文部科学省 科学技術・学術政策研究所 科学技術予測センター
名古屋大学 岐阜大学 岩手大学 客員教授
浦島 邦子

新年を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

科学技術・学術政策研究所 (NISTEP) は、科学技術や学術振興の政策立案プロセスに関与する、いわゆるシンクタンクで、データ・情報基盤の構築に取り組んでいる。その中で、科学技術とその成果がもたらす将来を見通すため、1971年から約5年ごとに大規模な科学技術予測調査を実施している。今後30年間という中長期の未来展望を、理・工学系専門家だけでなく、ニーズ側の視点と人文・社会科学の専門家の視点も取り入れた広範な議論を行い、調査している。これまで実施した全10回のデルファイ調査結果は、データベースとして公開されている1)。この約50年分のデータを 「電磁波」 で検索すると、20トピックが挙げられた。表は、その中から調査回 (年)、トピックとその技術/社会実現時期を抜粋したものである。当時の研究環境や技術レベルなどが垣間見られ、特に最近はあまり取り上げられるとのない夢がある課題も見られ大変興味深い。本調査は、予測した技術や社会実装の実現度を評価することが可能な調査として、特に国際的に高く評価されている。2010年に実施した評価では、一部実現を含め全体的に70%近くのトピックが実現している結果となった。2)

2050年の我が国は人口の1/3が高齢者となり、今とは違う社会が創造されていることが予想されている。現在、お年寄りの多くはパソコンには不慣れであるが、20年後のお年寄りたちは全員簡単に使いこなしているであろう。IoTもあらゆる物に導入され、例えば冷蔵庫の中に不足している、健康を維持するために必要な要素を含んだ食料が自動的にオーダーされ、ドローンによってベランダにいつでも配達されるような便利な世の中になっているかもしれない。隣にいるのにeメールを利用して会話している現代とは違い、未来は案外、人と人との付き合いが今よりも心地よく、重視される世の中になっているかもしれない。いずれにせよ、便利な機器は意識することなく社会に普及し、身の回りはネットワークで固められ、極めて端的な思考ではあるが、EMCは今以上に研究テーマが増加しているかもしれない。

そんな未来を考えるのも、新たな気分で時間が穏やかに流れている新年の過ごし方ではないだろうか。

〔参考文献〕

1)デルファイ検索

2)過去のデルファイ調査に見る研究開発のこれまでの方向性、DISCUSSION PAPER No. 86