EMC最新動向2019-業界の主要機関がEMCの最新動向を語る特別企画-

電子情報通信学会環境電磁工学研究専門委員会(EMCJ) 委員長
KEC関西電子工業振興センター EMC専門委員会 委員長
京都大学 教授
和田 修己

謹んで新春のお慶びを申し上げます。日頃のEMC関係者の皆様のご協力ご鞭撻に、心より感謝いたします。

昨年3月、おかげさまでEMCJは設立40周年の記念行事を開催し多くの皆様にご参加をいただきました。なお、今年3月には電気学会の電磁環境技術委員会が設立20周年を迎えられます。誠におめでとうございます。EMCJは今年5月に委員長を王建青教授 (名工大) に交代いたします。KEC-EMC専門委員会では引き続き委員長を務めさせていただきます。両スタッフともども、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、新春に当たり、「これからのEMC規格」 につき、私見ながらお願いをさせていただきたく存じます。

【これからの協調的・戦略的EMC規格】

従来のEMC規格は、電磁環境・無線放送通信を守るエミッション規格 (EMI規格) と、電子機器・システムの正常動作を担保するイミュニティ規格として、ある意味、別個に維持されてきました。EMIは、かつてはRFI (Radio Frequency Interference)、TVI (Television Interference) などと呼ばれ、ものつくり現場ではヤッカイモノ扱いで、問題発生後の対策技術の対象でした。

しかし、今やディジタル通信とIoTの時代を迎え、Society5.0インフラの品質としての電気・電磁安全とシステム信頼性 (ハードウェア・システムインテグリティ) の意味での、本来のEMC技術の重要性が増しています。自動運転、ロボット、センサネットワークなどを考えたとき、ワイヤレス給電と無線データ通信・計測制御、電波・高周波応用と生体、情報セキュリティ、データ・インテグリティまで含め、広範なシステムのEMCを実現するために、通信規格やソフトウェアからデバイス評価まで含めた、広い範囲での規格戦略、専門人材の育成が欠かせません。

今までの枠組みを超え、専門分野や省庁も超え、産官学連携、ソフト・ハード協調、異分野融合の日本らしい協調的EMC実現と、戦略的EMC規格対応が望まれると感じています。学会や産業界でのご協力を、よろしくお願い申し上げます。

以下、EMCJとKECの活動報告をいたします。

【EMCJ研究専門委員会・ご報告】

EMCJ研究専門委員会では、ここ数年、若手・中堅グループの活性化を目標にすえ、月例研究会では年1回の 「若手研究者発表会優秀賞」 に加え、年間表彰としての 「若手優秀賞」 表彰を実施しています。また学生・若手エンジニア・研究者の国際発表・交流力の強化を目的としたアジア地区海外開催の 「EMCジョイントワークショップ (EMCJ-WS)」、EMC設計・解析・計測の基礎技術向上を目的する 「EMC基礎ワークショップ」、「電気・電子機器のEMCワークショップ (通称:湯沢WS)」 などを通じて、ベテランから若手への技術伝承と若手応援を進めております。EMCJ-WSは第4回を迎え、11月に韓国KAISTで開催しました。本年は国際会議EMC Sapporo & APEMC 2019 (組織委員長:曽根秀昭教授) をAPEMC国際シンポジウムとのJoint開催として6月3日 (月)-7日 (金) に札幌コンベンションセンターで開催いたしますので、EMCJ-WSは休会とさせていただきます。

【KEC-EMC専門委員会・ご報告】

KEC関西電子工業振興センターEMC専門委員会では、年度ごとにワーキンググループ (WG) テーマ起案と会員各社からの委員募集を行い、現在は以下の6WGで延べ100名以上の委員が活動しています。 (1) EMCラウンドロビンテストWG、(2) EMC車載機器測定技術開発WG、(3) 新規EMC規格対応WG、(4) パワエレEMC試験法対応WG、(5) 欧米規格調査・出版WG、(6) アジア規格調査・出版WG。WGごとの技術検討会や共同実験を行うとともに、年2回の全体会議での情報共有、学会研究会や国際会議などでの技術報告や、検討結果のCISPR等規格審議への貢献を行っています。本年開催のEMC Sapporo & APEMC 2019でもセッションを企画いたします。また第23回を迎えたEMC関西でも情報発信を行っています。今後とも、積極的ご参加、ご協力よろしくお願いいたします。