1. 熱流体解析ソフトとは

熱流体解析ソフトとは、流体力学の伝熱解析に関連する計算流体力学(CFD)の代表的なソフトウェアで、様々な工学分野で利用することができ、TFAともいいます。小型電気機器(チップ、トランシーバー、ヒートシンクなどの熱源を持つもの)の熱流体プロセスの解析から、電気自動車(EV)の電動パワートレインのバッテリー冷却プロセスの解析、従来の内燃機関(ICE)の燃料燃焼プロセスの熱伝達解析、暖房・換気・空調(HVAC)システムの使用による室内の熱流体まで、幅広い分野で熱流体解析が適用可能です。エンジニアは、エネルギーコストの削減や、顧客の特定の好みに基づいた熱プロセスの管理に関して、エンジニアリング製品の設計を最適化するために、熱流体解析ソフトウェアを使用します。

現在では、ハイパフォーマンス コンピューティング(HPC)の最新技術により、熱流体解析およびCFDソフトウェアの利用は、以前よりも効率的かつ便利になっています。大規模なエンジニアリングシステムをPC上でモデル化し、熱流体解析ソフトウェアでその内部の流体による熱伝達プロセスをシミュレートすることができます。このような熱現象を理解するために、エンジニアは高価なテストモデルを構築する必要はありません。本稿では、熱流体解析ソフトウェアの概要と、電気機器および関連する電気分野への応用について解説します。また最後に、エンジニアが製品/システム内の流体熱伝達プロセスを簡単にシミュレートする事ができる効率的な熱流体解析ソフトウェア、Jupiter-CFDについても少し紹介をさせていただきます。

マフラー排ガスの熱流体(Jupiter-CFD、ParaView)
マフラー排ガスの熱流体(Jupiter-CFD、ParaView)
電子機器の構成部品の温度分布(Jupiter-CFD、ParaView)
電子機器の構成部品の温度分布(Jupiter-CFD、ParaView)
ICEエンジンにおける吸気バルブ開弁時の流れ(Jupiter-CFD、ParaView)
ICEエンジンにおける吸気バルブ開弁時の流れ(Jupiter-CFD、ParaView)

2. 熱流体解析ソフトの構造について

通常、熱流体解析ソフトは一般的なCFDソフトと同様に、プリプロセッシング、ソルバー、ポストプロセッシングの3つのセッションで構成されています。

  1. プリプロセッシング: CADモデルのインポート、ジオメトリのクリーンアップとメッシング条件設定、メッシュ生成、流れのプロパティ設定、熱力学モデルの選択、境界条件の設定。
  2. ソルバー:速度、圧力、密度や温度などの流体パラメータを求めPDE 方程式を解くための、数値計算スキームが含まれる。代表的なCFDソフトである熱流体解析ソフトは、連続式(質量保存)、運動量保存式(ニュートン第二法則)、エネルギー保存式(熱力学第一法則)などの保存方程式を構成してナビエ・ストークス方程式を解き、その解を求める。
  3. ポストプロセッシング:ソルバーの計算が終了後、流体場の結果を評価・検討するための機能を含む。計算結果は、PCの画面上に可視化/プロットすることができ、ユーザーはその結果に基づいていくつかの追加パラメータを計算することができる。

3. 電気機器・電気自動車分野での熱流体解析の応用とは

世界的なゼロ・エミッション運動への対応に伴い、自動車産業における電気自動車(EV)の役割は急速に高まっています。AI、デジタルツイン、自動制御などの最先端技術を応用した最新の電気自動車の開発競争においては、バッテリーの省エネ化、電気モーターとバッテリーの熱冷却、車体の空力特性、部品製造コストの最適化などが、重要な課題となっています。

i. 電気自動車におけるバッテリー温度シミュレーション

電動パワートレインのバッテリー冷却は、充電・放電のたびにバッテリーが発熱するため、電気自動車製造の難しい問題となっています。バッテリーは充電・放電のたびに発熱するため、バッテリーの寿命を左右し、バッテリーの維持・管理にとって重要な要素となります。さらに、バッテリーの発熱は、車両システムを過度に暖め、周辺部品の耐久性に悪影響を及ぼす可能性があります。

一方、極端な寒さは電池の効率と寿命を低下させるため、周囲の低温環境も電池性能に影響を与えます。

したがって、電気自動車の航続距離を伸ばし、充電時間を短縮し、バッテリーをより効率良く利用するためには、バッテリー温度をシミュレーションすることを検討する必要があります。そのためには、熱流体解析ソフトウェアの使用が、低コスト、包括的、便利という点で効果的となります。エンジニアは、それに基づいて、電気自動車のエネルギーシステム設計を改善するアイデアやソリューションを得ることができます。

物体周りの空気の流れ(Jupiter-CFD)
物体周りの空気の流れ(Jupiter-CFD)

ii. 電気自動車における電動機熱冷却について

電気モーターは稼働時に熱を帯びます。そのため、モーターの重量を減らすために小型化するだけでなく、電気自動車を長時間走らせたときに発熱しても壊れないような耐久性を持たせることが必要です。そのため、モーターの製造には課題がありました。しかし、熱流体解析ソフトウェアというシミュレーションツールを使うことで、この作業にかかる時間や労力を削減することができました。

例えば、電気モーターを冷却する最適なシステムを設計するために、熱流体解析ソフトウェアを使用して詳細な三次元熱流体解析向けモデルを作成することもできます。このモデルは、コンパクトなコンポーネントに簡素化され、高速かつ正確な結果を得ることができます。エンジニアは、電気モーターが電気自動車に与える熱影響を評価し、この重要なコンポーネントを最適に設計または設定することができます。

iii. 電気自動車の車体の空力特性

電気自動車を一回の充電で走らせるため、エネルギーを節約するには、車体形状の空力的な最適化と車体の空気抵抗を下げることが常に重要な課題です。この場合も、熱流体解析ソフトウェアがその役割を担います。車体の空気力学的な調査に加えて、エンジニアは複数の周辺環境条件(高温または低温)下での車体表面の温度分布も知ることができます。熱流体解析ソフトウェアは、このような空力解析と走行中の車体表面温度分布の熱解析の両方を行うことができます。

DriVaerカーモデル周りのCFD結果(Jupiter-CFD、ParaView)
DriVaerカーモデル周りのCFD結果(Jupiter-CFD、ParaView)

iv. 電気・電子機器の伝熱プロセス

電気・電子機器では、自然対流、放射伝熱、伝導加熱など、熱流体熱伝熱プロセスが発生することがあります。熱流体解析ソフトウェアを使用することで、実験やエンジニアリングツールでは捉えにくい複雑な熱現象を調査することができます。そのため、CFDモデリングと熱流体ソフトウェアパッケージは、電子機器設計に非常に有効で効率的です。

電子デバイスの温度分布(Jupiter-CFD)
電子デバイスの温度分布(Jupiter-CFD)
ヒートシンクの周りの空気流れ(Jupiter-CFD、ParaView)
ヒートシンクの周りの空気流れ(Jupiter-CFD、ParaView)
3Dモデルとメッシュ(Jupiter-CFD)
3Dモデルとメッシュ(Jupiter-CFD)
電子デバイス周辺の自然対流による共役熱伝達(Jupiter-CFD、ParaView)
電子デバイス周辺の自然対流による共役熱伝達(Jupiter-CFD、ParaView)

4. 熱流体解析ソフトウェア: Jupiter-CFD

Jupiter-CFDは、CFDモデリングや熱流体解析及びポスト処理を扱える熱流体解析ソフトウェアの1つで、強力なオープンソースCFDパッケージである、OpenFOAMをベースにしています。Jupiter-CFDには、OpenFOAMのすべてのメッシュジェネレータ(BlockMesh、SnappyHexMeshなど)、複数のCFD問題を解くための多数のソルバー、各種ポストプロセッシングツールが含まれています。

Jupiter-CFDのGUIは、プリプロセスの設定、Windows OS上で解析を実行するためのソルバーの設定、ポストプロセスの操作などに関する各種機能を、用意されたリボンから実行できる構成になっております。また、Jupiter-CFDはLinux HPCサーバー上でCFDを解析するためのスクリプトもサポートしています。よって、CFDの複数ケースの設定をエクスポートすることによって、Linux HPCサーバー上で、各CFDケースを自動実行することも可能です。

Jupiter-CFDのプラットフォームは汎用CAEソフトのJupiterを継承しているので、Jupiterの機能/ツールをJupiter-CFDで使用することができます。これにより、CFDモデリングを支援する高品質なグラフィックユーザーインターフェースツールを提供しております。

下図は、プリポストプロセスを行うJupiter-CFDのGUIインターフェースです。自動車周りの流れの結果が画面に表示されます。

車体周りの流れの流線とOpenFOAMモニター(Jupiter-CFD)
車体周りの流れの流線とOpenFOAMモニター(Jupiter-CFD)
Jupiter-CFDポストプロセッシングのGUI
Jupiter-CFDポストプロセッシングのGUI
Jupiter-CFDポストプロセッシングのリボンコマンド例
Jupiter-CFDポストプロセッシングのリボンコマンド例

(著)株式会社テクノスター

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