1. 放熱フィンとは何か?

放熱フィンとはヒートシンクにおいて, 魚のヒレ(Fin)のような形状で表面積を増やすことにより,放熱効果を高める構造の部分<図1>を指す. 本稿では主に具体的な放熱フィン有無による温度上昇特性の比較実験例や, 放熱フィン構造が実際に利用されている電子部品などの紹介を行うことで, 放熱フィンについての理解を深める事を目的とする.

尚, 一般的に放熱フィンとヒートシンクはほぼ同義となっているが, 本稿ではヒートシンクの形状としてのフィン構造という位置づけで解説を進める事とする.

図1 放熱フィンの構造
図1

2. ヒートシンクとはどんなもの?

様々な電子機器に使用されている半導体や抵抗器などを主とする電子部品は負荷によって大きな発熱を伴う場合がある. このような熱源となる部品から熱を気中に放熱させる事を目的としたものがヒートシンクである.

ヒートシンクは主にアルミニウムや銅などの加工がしやすく熱伝導性が良い金属素材や, ステンレスやセラミックのような耐久性の高い素材が使われており, 一般的なフィン構造のものからプレート式のもの, 電子部品自身に組み込まれているもの<図2>など, 様々な形状のものが存在する.

その中でも昨今は更に高い放熱効果のある銅製の水冷式ヒートシンクや水冷プレート<図3>などが採用される場面が非常に増えている.

図2 プレート型ヒートシンクが埋め込まれた抵抗器
図3 大きな放熱効果のある水冷式のヒートシンク/プレート

3. 何故放熱する必要があるのか? (ディレーティングの考慮)

ここまでヒートシンクは電子部品などの負荷による発熱を放熱する役割がある事を述べたが, では何故放熱が必要なのだろうか.

それはこのような電子部品を用いて回路の設計を行う際, ディレーティングを考慮して設計を行う必要があるためである.

ディレーティングとは各部品のデータシートなどに記載されている定格電力や定格温度に対して余裕を持って使用する事で, 負荷による熱ストレスを軽減させるという考え方である. ヒートシンクの放熱効果によってはこの熱によるストレスを大幅に軽減可能であるため, 結果的に部品の故障率の軽減や寿命アップなどの効果を見込む事ができる.これは特に高信頼性の確保が必要な場合において非常に重要な考え方である. 尚, このディレーティングにおける軽減率については一般的に40%~60%程度が用いられる事が多い. 例として<図4>にパワー抵抗器のカタログ値を示す. この抵抗器のカタログ上の定格電力は500Wではあるが, 前述のようにディレーティングを考慮して200W~300W程度の範囲での使用が推奨される.

図4 定格電力からディレーティングを考慮する

4. 放熱フィンの効果を確かめる

①抵抗器を使用した熱上昇特性比較実験

はじめに述べた通り, 放熱フィンは放熱効果を高める効果がある. 例としてフィン有無による温度上昇特性比較を行ってみる. <図5>は薄型の大電力用抵抗器で, 左側がフィンなしの構造のもの, 右側がフィンありの構造のものである.

抵抗器は印加する電力に応じて発熱を伴う電子部品だが, このフィン構造の有無によってどの程度発熱に差が生じるかを比較したデータを<グラフ1>に示す. この結果を見ると, わずか1mm高のフィン<図6>でも, およそ15%~17%程度の放熱効果アップが見込まれる事が見て取れる.これは高負荷の領域で電力にして数十ワット分にも及ぶ. 抵抗器の定格電力は発熱から決まっている場合が多く, このようなフィン構造を用い放熱性を上げる事で, 定格電力のアップを実現している.

図5 薄型メタルラッド巻線抵抗器
図6 フィンの構造

②ヒートシンクによる熱上昇特性比較実験

次に①の実験で使用したフィンなしの抵抗器に, <図7>のようにヒートシンクのフィンの高さを変えたものを用いた場合の温度上昇の特性を比較したものが<グラフ2>である. これを見ると, まずヒートシンクの有無による放熱効果の差は歴然である事が分かる. 更に本実験ではフィン高12mmよりも40mmの方が放熱効果が見込めるという結果が得られている. これはフィンが高い構造によってヒートシンク全体の表面積が12mmのものより40mmの方が広く取れるため, 結果的に放熱効果が得られるという事を示している.

図7 ヒートシンクによる熱上昇特性比較実験

注意点として, フィンのピッチが狭いヒートシンクは強制空冷を前提としたものもあるため使用時はデータシート等を確認されたい.

5. 必要なヒートシンクの熱抵抗計算

熱抵抗の計算はヒートシンクを含めた熱設計を行う上で欠かせない要素である. 今回は例として抵抗器におけるヒートシンク選定の計算方法を以下に示す.

基本計算式 Tj - Ta = ( R thi + R thd + R tha ) × W ・・・・・・・①

 Tj:素体のジャンクション温度[℃]
 Ta:周囲温度[℃]
 R thi:抵抗器の内部熱抵抗[℃/W]
 R thd:抵抗器からヒートシンクへの伝達熱抵抗 (使用グリスや密着度などによる)[℃/W]
 R tha:ヒートシンクの熱抵抗[℃/W]
 W:負荷電力[W]

例として5W印加時に素体のジャンクション温度を75℃に抑えたい場合を考えてみる.
各条件は以下のとおりとする.

 Tj = 75℃
 Ta = 25℃
 R thi = 3℃/W
 R thd = 0.5℃/W
 W  = 5W

これを①に式に適用して

 75 - 25 = ( 3 + 0.5 + R tha ) × 5
 R tha = 6.5℃/W

となる.

これを絵のイメージで表すと<図8>のようになり, この抵抗器を5Wで使用する場合, 6.5℃/Wの熱抵抗をもつヒートシンクを設置すると素体は75℃になるという結果を示している. 更に素体温度を低くしたい場合は6.5℃/Wよりも熱抵抗の低い(放熱性の良い)ヒートシンクを使用すればそれだけディレーティングを取る事ができる.

今回は抵抗器を計算例としたが, パワーデバイスなどの基本的にヒートシンクを必要とする半導体の場合においても考え方は同じである.

ただしこれらはあくまで机上の計算であり, 実際の装置や機器内ではいわゆる熱の籠りや, 配線の回り込みの熱上昇などの影響を受けたり, ヒートシンクの設置方向などの要因によって, 計算通りにならないケースが考えられる. そのため机上計算よりもマージンをもった設計を行う事, そして実際に温度をモニタしてみるといった事を心掛けたい.

6. 更に冷却効果を高めるには?

ここまではヒートシンクを用いた自然空冷をベースに述べてきたが, 更に冷却効果を高める場合に使われているものとして,

ファンによる空冷式やラジエータを利用した水冷式が挙げられる.<参考1>,<参考2>

これらは身近な所ではパソコン内部のCPUやGPUなどの発熱を伴うデバイスの冷却や, IGBTやSiCなどのパワー半導体の冷却, その他には車のエンジンの冷却などを中心に使われている.

また,昨今では様々な開発の現場においても冷熱実験用として空冷式だけでなく, ペルチェ素子を利用した水冷式のユニットも積極的に採用されており, ひと昔前と比べて高性能化も相まりニーズの幅が大きく広がっている.<参考3>

(著)株式会社ピーシーエヌ

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