1.熱と放熱材料(コンパウンド/放熱シート/放熱塗料など)

放熱材料は熱の流れ易さを調整し、温度制御が必要な部品などの温度を調整するために使用される商材である。ここでは熱を逃がす、いわゆる熱対策を中心に、各現象と部材の役割に関して記述する。熱対策を理解するためには、まず熱の性質の理解が必要となる。

熱とはエネルギーの一つで、外からの作用や化学反応等の内部反応によらずに自動的に生まれたり、消えたりしない。このため高エネルギー状態にある物体を低エネルギー状態に変化させるためには、エネルギーを移動させなければならない。そして、熱に限定して考えるならば、熱は高温側から低温側にのみ流れる。

つまり高温の物体が空気に触れて温度が低下する現象は、エネルギーが熱という形態で移動した結果である。このため、発熱部品の熱対策は、発熱部品で発生する熱を外界へ効率よく移動させることである。例えば代表的な放熱機器であるヒートシンクは外界と接する表面積を大きくして、外界にエネルギーが効率的に移動する形状をもつ。

理論を中心に製品を組み立てていくと、発熱源に対してヒートシンクを使えば熱対策ができそうに見える。多くの場合、発熱源と放熱機器は個別の部品であるため、発熱源とヒートシンクの間には接合面が存在する。部品と部品の組み合わせで形成された構造では、一体部品と異なり空気を含む境界面(隙間)が存在する。一般的に気体の熱伝導率は固体(部品)よりも低い。

そのため部品の接合部分の空気の層は、熱伝導率の低い層である。このため、部品と部品の境界面は『熱的な境界面(TI:Thermal Interface)』となる。そのような境界面の空気を置き換える用途で使用される材料がTIM(Thermal Interface Material)である。

図1 TIMの役割

2.TIMとは

TIMを日本語に直訳すれば『熱的境界面材料』で、『熱の境界用途の材料』である。その役割は、部品と部品の接合面の空気層(図1(A))を熱伝導率の高い材料に置き換える(図1(B))ことである。熱を通しやすい設計を行うために、熱抵抗の原理が有効である。平滑面における理論的な熱抵抗は

(S:TIM接触面積、l :TIMの厚み、λ:熱伝導率)

であらわされる。熱抵抗の値は熱伝導率とTIM層の構造によって決まり、熱源との接触面積Sを大きくし、熱伝導率λが高く、厚みlが薄ければ熱抵抗が低下する。このため、TIMは部品との接触面積をできるだけ大きくし、適度な厚みのものを選択することが重要である。

多くのTIMは、柔軟性を持たせるため柔らかさという有機化学的性質を担う樹脂成分やグリスと無機化学的性質の熱伝導性を担うフィラーにより構成される。TIMの樹脂成分はバインダーとしても作用し粉末状のフィラーなどを結着する役割も果たしている。バインダーの性質によってTIMの種類は放熱シート、ギャップフィラー、グリス、接着剤、PCM、両面テープなど多岐にわたる。

様々な種類のTIMの中から用途、要求特性、既存の設備での使用の可否、ハンドリング性などを総合して最適なものが選択して利用される。一般的にグリスやギャップフィラーは塗布可能なタイプが多く、ディスペンサーなどを用いて塗布・圧着を行う。ギャップフィラーには、塗布時はグリス状で、塗布後に境界面で硬化して柔軟性を持つTIM層を形成するものが多く、一般的に2液混合型である。

放熱シートは事前に目的の境界面の大きさに加工したシートを載せて圧着を行うため、ディスペンサー設備がない場合でも利用可能で広く利用されているTIMである。樹脂成分として主にシリコーン、アクリルなどで、それぞれシリコーン系TIMなどに分類される。フィラーは金属、金属酸化物等の無機物や繊維が用いられるが、絶縁が求められる用途では絶縁性のフィラーが使用される。

TIMには用途に応じて熱伝導性+αの特性が求められる。例えば、TIM圧縮による基板素子への応力負荷が懸念される用途では柔軟性を有するTIMが選択される。近年、複雑な部品形状に対応可能なTIMの要求が増加しており、そのニーズに応える超柔軟性TIMの商品化が進んでいる。例えば、図2のように、超柔軟TIM熱ゴム®では優れた段差追従性を低い圧縮力で発現。

非常に高い柔軟性により、比較的小さな圧力で圧縮され、また、応力緩和率も高く、基板上の部品への応力負荷を低減することが可能である。部品同士の強い接合が求められる場合は接着性も付与される。低分子シロキサンによる接点障害が懸念される場合は、低分子シロキサン低減グレードや非シリコーン系TIMを用いる。

長期信頼性が求められる場合には、安定性の高いシリコーン樹脂で形成されるシリコーン系TIMが求められる傾向にある。このように、TIMにはさまざまな性状のものがあり、用途・要求特性に適したものを選択し、熱対策+αの課題の解決に貢献する材料である。

図2 超柔軟TIM熱ゴム(R)の段差追従性

※熱ゴム®は薩摩総研株式会社の登録商標です。

(著)株式会社 佐藤製作所/千代田インテグレ株式会社