差動ケーブルのEMCモデリング技術
― 基礎的な事例から応用的な事例まで ―(月刊EMC)

2017.12.05 更新
差動ケーブルのEMCモデリング技術<br>
― 基礎的な事例から応用的な事例まで ―(月刊EMC)

EMCモデリングに携わる入門者が差動ケーブルのモデリングに関して基礎から応用について理解を深めるために、ツイストペアの差動ケーブルを簡易化したツイストペア導体をモデリングし、放射特性や近傍電界を解析した基礎的な事例を紹介する。

また、ツイストペアケーブルなどを高周波領域で用いる際に、特定の周波数で急激に通過特性が減衰するサックアウト現象について説明する。

更に、応用的な事例として、差動ケーブルのイミュニティ評価を検討する事例を紹介する。
差動ケーブルのイミュニティ評価で必要となる5ポートSパラメータに関して紹介する 差動ケーブルのサックアウトやESDのような難しい問題にチャレンジした事例を通じて、EMCモデリングの最新技術を理解する。


1.はじめに

エレクトロニクス実装学会のEMCモデリング研究会や超高速高周波エレクトロニクス実装研究会において、高速・高周波、EMCの問題や課題に関して、様々なモデルを検討してきた1),2),3),4)。

近年、高速・高周波数化に伴いノイズに強いと言われる差動信号がよく用いられるようになってきた。しかしながら、差動ケーブルで良く用いられる低価格なツイストペアケーブルが、どのくらいの周波数まで使えるのか、どのくらいの長さまで使えるのかといった解を出すのは容易ではない。

そこで、ツイストペアの差動ケーブルを簡易化したツイストペア導体モデルを検討した。また、差動ケーブルであっても、ケーブルから結合するESDノイズの影響で電子機器が誤動作する可能性が大きくなってきた。

ここでは、差動ケーブルのイミュニティ評価を検討するモデルを検討した。第2章では、1GHz以下を想定した放射特性や近傍電界をシミュレーションした事例を紹介する。第3章では、1GHz以上を想定したサックアウトを検討するためにシミュレーションした事例を紹介する。第4章では、実際の設計現場で問題となった差動ケーブルのイミュニティ評価にシミュレーションを活用した事例を紹介する。第5章では、差動ケーブルのイミュニティ評価で必要となる5ポートSパラメータに関して紹介する。

ツイストペアケーブルは古くからEMC対応設計として多くのエンジニアに利用されているが、ツイストペアケーブルの放射特性やサックアウト現象のメカニズムを十分に理解していることは少ないと思う。また、昨今の高周波数化や低電圧化によって、ESD(静電気放電)の問題も増えている。差動ケーブルの評価にモデリング技術を活用した事例も余り知られていない。

ツイストペアケーブルやスパイラルのシールド付ケーブルを正確にシミュレーションすることは、難易度が高いため、ケーブルの専門家や研究者に任せる。ここでは、差動ケーブルのEMCモデリングの基礎から応用までの放射特性や近傍電界、イミュニティ評価のモデリング事例を体感し、メカニズムの理解や自身の問題課題の解決の参考にして欲しい。

続きは『月刊EMC No.344 』にて

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