電磁気学・アンテナから考える EMC(月刊EMC)

2017.12.25 更新
電磁気学・アンテナから考える EMC(月刊EMC)

       【ヘルツの実験】

EMC は、1920 年クリスマスの夜のラジオ放送に入った自動車のイグニッションノイズから始まったと言われている。それから 100 年近く経ち科学技術の進展は目覚しいが、どうもノイズ問題は解決したようにも見えず、ノイズ対策は相変わらずもぐら叩きの様相を呈している。

「電気が専門でないのに、EMC をやることになった」、「大学では電気が専門だったけれど、EMC は誰も教えてくれなかった」と、どこから手をつけていいか分からず、戸惑っている EMC 技術者も多い。EMC の専門書を開けば、数学、電磁気、電気回路、電子回路などの基礎科目の知識が当然の前提として話が進められている。これでは電気をやったことのない EMC 技術者には地獄の責め苦であろう。何が悪かったのか? どこから解きほぐしていけばいいのか?

これから EMC をやろうとしている人、あるいは、長年 EMC をやってきたが後輩にはどうやって伝えればいいのか、その勘所がいまひとつ掴めないという人のために、ここでは従来とちょっと異なるアプローチをしてみたい。つまり、『回路・線路から考える EMC』ではなく、『電磁気学・アンテナから考える EMC』である。 線路屋から見ればアンテナは単なる『抵抗』であり、アンテナ屋から見れば回路・線路はまとめて小さな『電源』である。厄介なことに EMC において大事な『グランド』も、アンテナでは全く違う意味で使われている。長らく線路屋とアンテナ屋がEMC を共存環境として歩み寄ろうとする気配はなかった。

近年の情報通信の発展は目覚しく、携帯端末に代表されるアンテナ装置は、高周波化と小型化が加速している。その理由は、通信速度の増大と、軽さ、操作性の向上である。従って、アンテナは回路基板のごく近傍に設置されることになる。いきおい携帯の外枠にアンテナが配置され、「握って受信できないのは技術的な設計ミスである」と訴訟にまでになったことがある。

また、自動車も携帯と同様に、いつでもどこでもという利便性を特徴とする。その狭い内部空間では、電源とセンサと制御の回線が犇めいている。もし不要なノイズを拾って誤動作を起こせば、大事故に繋がる危険性を孕んでいる。

続きは『月刊EMC No.319』にて

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