空間電磁界測定技術(月刊EMC)

2018.1.17 更新
空間電磁界測定技術(月刊EMC)

【放射性エミッション試験イメージ】

 EMC(Electro Magnetic Compatibility) は、装置自身が発生する電磁波により他の装置を誤動作させない特性と、他の装置が発生する電磁波により装置自身が誤動作しない特性を合わせ持つ電磁両立性を意味する。
 EMC 分野の国際規格は、IEC(国際電気標準化委員会)規格と その特別委員会である CISPR(国際無線障害特別委員会)規格が 基本となっており、装置自身が発生する電磁波により他の装置を誤動作させる EMI(Electro Magnetic Interference)対策として行う“電磁妨害波を出さない”ことを確認するためのエミッション試験 (Emission Test)、は、IEC/CISPR の国際規格をもとに制定された各国の規格によって定められた試験方法や規格値により行われる。
 この試験の結果、装置から規定値を上回る電磁波が発生している事が判明して対策が必要になった場合、近傍界測定を行い電磁波の発生状況を分析する必要がある。分析が確実で有効性が高い空間電磁界測定技術を紹介する。

近傍電磁界測定と遠方電磁界測定

 オープンサイトまたは電波暗室内で実施する放射性エミッション試験は、被測定装置と測定アンテナの距離によって 3m 法・10m 法・30m 法などの種類があり、何れも遠方界電磁波測定である。この遠方電磁界測定の結果が規格値から外れて不合格だった場合、近傍界電磁波測定を 行い、ノイズの可視化により発生源を特定して EMI対策を行う。

空間電磁界測定

 近傍電磁界測定のツールとして、電装基板の EMI測定を行うスキャナーがある。この装置により電装基板の部品表面からの高さに応じて、磁界プローブ/電界プローブをスキャンする事により、近傍界ノイズを可視化して、EMI 対策の前後の定量評価を行うことができる。近傍界ノイズスキャナーは、電装基板単体の評価には有効であるが、電装基板にケーブルが接続されて筐体に収納されると測定が難しくなる。このため、電装基板にケーブルが接続された状態、電装基板が筐体に収納された状態等の近傍電磁界評価を行うための有効な手段が空間電磁界測定である。

空間電磁界測定装置

 空間電磁界測定装置のステレオカメラは、モーションキャプチャーカメラ 2 台を搭載しており、電磁界センサーに取り付けられた光学マーカーの三次元空間座標を記録する。電磁界センサーは空間電磁界を測定する。測定結果は解析ソフトウエアーにより、PC 画面上に三次元空間可視化画像として表示される。

続きは『月刊EMC No.330』にて

【月刊EMC No.330 目次情報】

<特集>
◇人工材料が広げる電磁波吸収・遮蔽材の設計法
・電磁波吸収・遮蔽の基礎理論
 (日本大学 三枝健二)
・電磁波吸収・遮蔽用材料の物性と電磁メタマテリアル
 (広島大学 蔦岡孝則)
・電磁波吸収・遮蔽材における人工材料の応用
 (兵庫県立大学 畠山賢一)

<Technology>
・空間電磁界測定技術
 (森田テック㈱ 上條憲一)
・車載向けマイコンのEMC設計と対策事例
 (スパンション 砂田賢一、布川秀男、阿部裕之、荒川豊文)
  ※本記事は2015年2月に執筆されたものです。スパンション社は2015年3月にサイプレス社と合併しております。
・英国Ofcomによるテレビホワイトスペース運用制度の試行プログラムとその実施結果
 (国立研究開発法人 情報通信研究機構 石津健太郎)
・高周波スイッチングSiCインバータの損失特性
 (芝浦工業大学 斎藤真)

<規格・規制情報>
・機能安全遂行機器のEMC基本規格/IEC61000-6-7
 (東芝ITコントロールシステム㈱ 深田彰男)
・スマートメータPLC通信に関するEMC国際規格動向解説
 (IEC SC77A WG8、国際委員 中部電力㈱ 中地芳紀、
  IEC SC77A 国内委員会 幹事、(一社)日本電機工業会 井上博史)

<実践講座>
・欧州市場参入を計画する場合には、CEマーキングの新しい枠組み(NLF)の中での対応が必要となってきている
 (グローバル・テクノマネジメント 平戸昌利)
・地震予知研究の歴史と阪神大震災の衝撃
 (東海大学海洋研究所 地震予知研究センター長 長尾年恭)
・電力変換装置のEMI対策技術
 ソフトスイッチングの基礎
 (国立舞鶴工業高等専門学校 平地克也)

インフォメーション
・EMCによる自動車リコール再発
・IoT時代のEMC
・製品価値におけるEMC性能

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