スイッチングアシストによる次世代 MOSFET 電力変換器の高効率化(月刊EMC)

2018.1.22 更新
スイッチングアシストによる次世代 MOSFET 電力変換器の高効率化(月刊EMC)

【MOSFET の各種寄生容量】

 今後、パワーエレクトロニクス分野では、既存デバイスの性能限界を超えるためにワイドバンドギャップ半導体素子の実用化がさらに進み、SiC(Silicon Carbide)-MOSFET のような電力用超高速スイッチング素子が広く普及していくと考えられる。従来の Si(Silicon)を主材料とするスイッチング素子と比べて SiC-MOSFET には高耐圧、高速スイッチング、低損失駆動、高温動作など、従来の素子を遥かに凌駕する動作特性が期待されている。物性値で比較した場合でも、絶縁破壊電圧は 10 倍、動作上限温度は 400 ℃、そして損失は数百分の一といわれている。

 SiC-MOSFET が電力用半導体素子の主流となり実用化されれば、電力変換器の更なる高周波化と低損失化が進むことは確実である。さらに、SiC-MOSFET が実用化されれば電力変換器に不可欠なヒートシンクやコンデンサ、リアクトルなどの周辺部品も小型軽量化でき、装置全体のパワー密度向上に大変革をもたらす。電力変換器のパワー密度はパワーエレクトロニクスの発展を示す歴史そのものであり、重要な性能指標の一つである。2020 年頃には故高橋 勲氏(長岡技術科学大学名誉教授)が予想された 50 W/cm 3 のパワー密度を有する 1 MW マトリックスコンバータ(AC/AC 直接変換器)の実現も視野に入ってくる。

 しかし、一般に MOSFET では低オン抵抗や大電流化に伴って各種寄生容量が増加する傾向にあり、SiC 素子ではその固有物性も相伴ってさらに寄生容量が増大すると考えられる。これら寄生容量の増大により SiC-MOSFET が本来有している高速スイッチング特性を十分に発揮することが困難になると予想される。

 高速スイッチングを実現するためには、ターンオン時間およびターンオフ時間を短縮することが求められる。ターンオン時間は寄生入力容量を高速に充電することにより短縮することができる。従来採用されている手法としては、ゲート抵抗を小さくすることやゲート抵抗と並列にスピードアップコンデンサを用いることが挙げられる。

続きは『月刊EMC No.333』にて

【月刊EMC No.333 目次情報】

<特集>
◇これからのEMC~省庁・工業会・学会EMCの動向が視える~
・総務省 総合通信基盤局 電波部 電波環境課長
 杉野勲 氏
・経済産業省 商務流通保安グループ 製品安全課 電気用品専門職
 長澤英里 氏
・国土交通省 道路局 道路交通管理課 ITS推進室 課長補佐
 中尾吉宏 氏
・一般社団法人 電波産業会・電磁環境委員会 委員長
 北海道大学名誉教授
 野島俊雄 氏
・公益財団法人 鉄道総合技術研究所 会長
 一般社団法人 国際標準化協議会 会長
 正田英介 氏
・スマートグリッドとEMC 調査専門委員会委員長
 電磁環境工学情報EMC 編集顧問
 東京都市大学名誉教授
 徳田正満 氏

※本記事は2016年1月のものです。所属等変更がある場合もございます。

<Technology>
・コグニティブ無線・ホワイトスペース通信の有効利用
 (京都大学大学院 原田博司)
・三次元積層SiPとパワーインテグリティ設計
 (芝浦工業大学 須藤俊夫)
・スイッチングアシストによる次世代MOSFET電力変換器の高効率化
 (静岡大学 野口季彦)

<規格・規制情報>
・IEC61000-4-31 CDV 概要解説
 (㈱東陽テクニカ 中村哲也)

<実践講座>
・NLFを含めたCEマーキング対応(EMC指令以外に必要となる他の指令)の展開および手続きを進めるには
 (グローバル・テクノマネジメント 平戸昌利)

<インフォメーション>
・英国情報通信長 無線LANの電波 干渉原因を調査 日本国内はどうなる
・アメリカ放射線監視システム 電磁波障害で一部機能せず
・これからの電波規制 IoTで変わる
・高度化するEMC要求
・ロボットの電波利用拡大へ向け 共用検討進む

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