スマートグリッドにおける電力品質(月刊EMC)

2018.1.31 更新
スマートグリッドにおける電力品質(月刊EMC)

【逆潮流による配電線電圧上昇(低圧換算)の様相】

 低炭素化社会やエネルギーセキュリティの確保に向けて、わが国では、太陽光発電(PV)を中心に分散形の再生可能エネルギー電源の大量導入が見込まれている。 一方、これにより、配電線や送電線といった電力系統の電力品質、事故時の安全性、および安定性が低下する可能性があり、将来に渡って、電力系統と調和の取れた導入と有効利用を図るためには、電力系統側、分散形電源側ともに、新たな対策が必要となっている。

 この中で電力品質問題に関しては、配電系統レベルでは、分散形電源からの逆潮流に伴って発生する配電線電圧の上昇問題、インバータ電源から発生する高調波問題、等が挙げられる。また、電力系統全体への大量導入時には、瞬時電圧低下(瞬低)等の過渡的なじょう乱による分散形電源の一斉脱落や、余剰電力の発生により系統全体の需給バランスが崩れ、周波数や電圧の変動を招く可能性もある。本稿では、PV を中心とした 分散形電源大量導入時に想定される系統電力品質に与える影響について示すとともに、喫緊の課題となっている配電系統レベルの電圧上昇問題ならびに将来想定される余剰電力問題を中心に、スマートグリッド技術の一環で開発が進められている電力品質維持・改善技術について述べる。

分散形電源導入の系統への影響

 電力系統では、天気予報や季節・曜日などの情報をもとに翌日の需給計画を立て、当日運用においては需要と供給のバランスを常に保ち、電圧や周波数が適正値になるように各発電設備の運転を行っている。また、送電線や配電線からなる電力流通ネットワークでは、各需要家に品質の高い電気を安全に送り届けることができるように、落雷などによる事故時を含め、時々刻々変わる系統状況に対応した的確な監視制御を行っている。これらにより、わが国の電力系統は、これまで世界一の供給信頼度を保ってきた。

 このように高い供給信頼度を確保しているわが国の電力系統だが、PVを中心とした分散形電源が大量に導入された場合には、需要家側からの逆潮流や分散形電源の出力変動により、以下のように、系統の電力品質に影響を与える可能性がある。

続きは『月刊EMC No.299』にて

【月刊EMC No.299 目次情報】

<特集>
◇国内主要メーカー&取り扱い企業群47社 2013年版EMC 関連製品一覧
▼EMC 部品・製品編
 ACライン用/EMI対策コネクタ/ESD対策部品・製品
▼スマートグリッド編
 サージアブソーバ/避雷器/各種トランス/自動定電圧装置/無停電電源装置
▼シールド・吸収材編
 電磁波シールド材/磁気シールド/シールドルーム/電磁波吸収体
▼EMC 試験装置・設備編
 測定器/測定システム/EMI【エミッション】/EMS【イミュニティ】/EMC
 /アンテナ/アンテナ昇降機/電波暗室/計測/シールドボックス/TEMセル/ターンテーブル
▼設計ツール編
 シミュレーションソフトウェア/ソリューション

 

<Technology>
・スマートグリッドにおける電力品質
 ((一財)電力中央研究所 林広武)

<実践講座>
・サージ対策入門!電子機器のサージ対策と効果①
 「なぜ対策が必要?」「どんな対策部品があるの?」
 (三菱マテリアル㈱ 田中芳幸)
・熱流体シミュレーションを用いた電子機器の熱解析のための電子部品モデル化
 ~その3:アルミ電解コンデンサのモデル化~
 (コーセル㈱ 小泉雄大)

<インフォメーション>
・パワーエレクトロニクス(パワエレ)機器におけるEMCトラブル
・鉄道EMCから見る中国の技術的変化
・トヨタ 米国生産のヴォルツにEMCリコール
・電安法が変わる!
・事故の要因は技術問題かモラル問題か
・ユーザーの安全と企業責任の線引きは何処だ!

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