アンテナ校正およびテストサイトの評価に用いる「計算可能なダイポールアンテナ」(月刊EMC)

2018.2.14 更新
アンテナ校正およびテストサイトの評価に用いる「計算可能なダイポールアンテナ」(月刊EMC)

【計算可能なダイポールアンテナ(CDA)】

 EMC の分野では、電子機器から放射される妨害波の電界強度に関心があります。これを求めるためにアンテナ係数が用いられていますが、アンテナ係数(AF)はアンテナ動作利得と等価で、両者は簡単な式によって結びつけられています。アンテナ利得は、一般に実測による 3 アンテナ法によって決定できます。

 一方、この 3 アンテナ法とは別に、アンテナの寸法や電気的特性からアンテナ利得あるいはアンテナ係数を理論的に推定することもできます。特に、単導線からなるダイポールアンテナのアンテナ係数は、極めて正確に求めることができます。この方法には解析的な方法と数値計算による方法があり、数式は大きく異なりますが、両方法の推定値は共振長ダイポールアンテナのアンテナ係数について 0.03 dB 以内で一致します。

 したがって、この推定法は、アンテナ係数のトレーサビリティ確保にとって非常に信頼できる方法です。このように理論的にアンテナ係数を正確に決定したアンテナが「計算可能なダイポールアンテナ (calculable dipole antenna: CDA)」です。

 この推定法と同じ不確かさを実測に基づく 3 アンテナ法によって得るには、多数回の測定が必要になるので所要時間が極めて長くなります。(ただし、この推定法を確立するに当たって、予めアンテナ形式毎に多数の実測値と計算値とを比較して、不確かさを確定する必要があります。)電界強度はアンテナ係数 AF とアンテナ出力端電圧の正確な測定値 V から E = AF x V によって計算されるので、電界強度のトレーサビリティも CDA によって確保できることになります。

 用語「トレーサビリティ (traceability)」は、対象とする物理量が「国家計量標準機関によって最も正確に実現される値」と関係付けられていることを意味しており、この関係の程度は測定の不確かさ(uncertainty of measurement)によって評価されます。日本の産業技術総合研究所や英国の物理研究所(NPL)などの国家計量標準機関(NMI)は、対象とする物理量について最小限の不確かさを達成することを仕事としており、これに繋がる下位の校正機関は少し大きめの不確かさで校正サービスを行うことになります。ただし、校正機関がCDAを計算可能な参照ダイポールアンテナ(calculable reference dipole : CRD)としてアンテナ校正に用いれば、国家標準機関と同程度の不確かさでアンテナ校正を行うことができます。

続きは『月刊EMC No.305』にて

【月刊EMC No.305 目次情報】

<特集>
◇2013年版 国内主要EMC サイト一覧
 新製品開発/市場投入へのコモン・センス
▼東北地方
 テュフズードザクタ(株)/宮城県産業技術総合センター
▼関東地方
 (株)アールエフ・テクノロジー/アンリツ計測器カストマサービス(株)/(株)イーエムシー鹿島/
 (株)イー・エム・シー・ジャパン/(株)イシカワ/インターテック ジャパン(株)/(株)エスアンドエー/
 NTTアドバンステクノロジ(株)/沖エンジニアリング(株)/サクサビジネスシステム(株)/テュフズードザクタ(株)/
 GEヘルスケア・ジャパン(株)/(株)JEL/(株)図研/TDK(株)/テュフズードオータマ(株)/
 テュフラインランドジャパン(株)/(一財)テレコムエンジニアリングセンター/(一財)電気安全環境研究所/
 (株)トーキンEMCエンジニアリング/(一財)日本品質保証機構/(株)ノイズ研究所/
 (株)日立情報通信エンジニアリング/(株)富士通ゼネラルイーエムシー研究所/富士フイルムテクノプロダクツ(株)
▼中部地方
 (株)アールエフ・テクノロジー/インターテック ジャパン(株)/北川工業(株)/
 (株)コスモス・コーポレイション/SELA(株)/双信電機(株)/テュフズードオータマ(株)/
 (株)デンソーEMCエンジニアリングサービス/(一財)日本品質保証機構/富士通テン(株)
▼近畿地方
 (一社)KEC関西電子工業振興センター/(一財)日本品質保証機構/(株)トーキンEMCエンジニアリング/
 フルノ・ラボテック・インターナショナル(株)
▼中国地方
 (株)広島テクノプラザ/三菱電機エンジニアリング(株)
▼四国地方
 (公財)かがわ産業支援財団(ネクスト香川)
▼九州地方
 (一財)直鞍情報・産業振興協会(ADOX福岡)

<Technology>
・アンテナ校正及びテストサイト評価に用いる「計算可能なダイポールアンテナ」
 ((イギリス国立物理学研究所) MartinAlexander,David Cheadle氏/訳:(京都大学) 杉浦行氏)

<規格・規制情報>
・生活支援ロボットの安全とイミュニティ評価
 ((地独)東京都立産業技術研究センター 村上真之、(独)労働安全衛生総合研究所 池田博康)

<実践講座>
・サージ対策入門!電子機器のサージ対策と効果⑦
 通信線へのサージ対策
 (三菱マテリアル㈱ 田中芳幸)
・30MHz 以下におけるEMI 測定用アンテナの校正②
 校正事業者などにおけるループアンテナの校正手法とトレーサビリティー
 ((独)産業技術総合研究所 石居正典)

<インフォメーション>
・産総研と公設サイトによる放射EMI比較測定の取り組み
 ((独)産業技術総合研究所 黒川悟・飴谷充隆)
・消費者庁 竹芝エレベータ事故調査報告を公表

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