【様々な電極材料の電位窓】
(0.5M H2SO4中、200mV/sで測定した)
ホウ素を高濃度にドープしたボロンドープダイヤモンド(BDD)は導電性を示すため、電気化学電極材料として利用することができる。水溶液中での電気化学測定において、このダイヤモンド電極を作用極として用いると、バックグラウンド電流が小さく、水の電気分解が起きない電位範囲(電位窓)が広いため、広範な電位領域で高感度な電気化学分析を行うことができる。また、ダイヤモンドは一般に物理的・化学的に極めて安定であるため、生体中を含むさまざまな環境下で安定した測定を行うことができると考えられる。
ダイヤモンド電極は、通常、化学気相成長(CVD)法により導電性基板上に密な多結晶 BDD 薄膜を成長させることで得られる。CVDプロセスによりダイヤモンド成長を行うには、基板温度を 800℃以上に保つ必要がある。そのため、基板となる材料には、高温条件でも融解せず、かつダイヤモンドとの熱膨張係数のミスマッチが小さいことが要件となる。
これらの制約のため、現在のところ、ダイヤモンド電極の基板として、導電性シリコンやニオブなどのごく限られた材料しか使用されていない。また、このような条件での CVD による成長では、任意の形状のパターニングが容易ではない。そこで、我々は、導電性ダイヤモンド粉末を作製し、これを含有するインクをスクリーン印刷法により基板上に印刷したダイヤモンド印刷電極を作製した。
ダイヤモンド印刷電極は、プラスチックやセラミックスなどを基板に用いることができるため、安価で軽量な電極として提供することができる。このような印刷電極は、例えば、医療用の使い捨てセンサーチップとして応用することができる。また、印刷電極という形態でも、低バックグラウンド電流というダイヤモンド電極の特徴が維持されているため、従来材料であるカーボン印刷電極よりも、高感度な電気化学分析が可能になる。
本稿では、ダイヤモンド印刷電極の作製法およびその電気化学特性について解説をする。また、応用例としてグルコースセンサーの作製についても紹介する。
続きは『月刊EMC No.318』にて
<特集>
◇ICチップレベルの低ノイズ化
・高周波信号処置IC チップレベルのデジタルノイズ低減化技術
(東北大学 田中聡、山口正洋)
・高分解能RF 電磁界プローブに関する研究
(東北大学 遠藤恭、室賀翔、荒井薫、重田洋二郎、山口正洋)
・オンチップノイズの発生と干渉の評価
(神戸大学 永田真)
・ミックスト・シグナルIC 実装ボードにおけるノイズ伝搬の評価と対策
(日本電気(株) 岩波瑞樹、塚本健太)
・LTE級受信実回路を搭載したRFIC TEGチップ上への磁性膜の集積化
(東北大学 遠藤恭、伊藤哲夫、山口正洋)
<Technology>
・FM-CW レーダ技術の応用と電波防護指針について
(諏訪東京理科大学工学部コンピュータメディア工学科 松江英明、山口一弘、小林朋弘/
(株)CQ-S ネット 齋藤光正、天野敏夫、我孫子拓治)
・ノイズ1/3 でセンサーの誤差を抑制!スクリーン印刷ダイヤモンド電極
(東京理科大学 近藤剛史)
<規格・規制情報>
・アーク溶接のEMC 規格 概要解説
(埼玉大学 山根敏)
・鉄道環境における電子および電気機器による磁場レベルの体暴露に関する測定手続き
((独)交通安全環境研究所 水間毅、長谷川智紀)
<実践講座>
・新・回路レベルのEMC 設計⑧
ツールを用いた設計現場でのEMC ・PI ・SI 設計
((株)NEC情報システムズ 矢口貴宏)
・実践/熱シミュレーションと設計法 第二部⑤
PCMを用いた冷却モジュール2
(富山県立大学 畠山友行)
・電気機器の静電気対策⑤
半導体デバイスの静電気放電対策
(春日電機(株) 鈴木輝夫)
<インフォメーション>
・CISPR フランクフルト会議対処方針案 重点項目はワイヤレス電力伝送
・ワイヤレス電力伝送作業班 答申に向けて検討延長戦
・EMC 試験サイト求められる技術とは?
・次世代電動車いす脳波コントルールは安全か?
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